リッター当たり100馬力越えを競った1980年代
ガソリンエンジン危うし? 世界の自動車メーカーが、こぞってハイブリッド車や電気自動車化に舵を切っていく今、ガソリンエンジンは、日本でも徐々に脇へと追われ始めている。
もちろん、ガソリンエンジンが消えることは当分ないし、自動車の性能ももっとよくなるだろう。でも、その昔のように、みんなが熱く語れるようなエンジンとクルマの関係は、生まれてこないかもしれない。
ではその昔、日本の乗用車が高性能化してパワーウォーズに突入した1980年代の、クルマとエンジンのベスト3カップルを独断と偏見を交えて、個人的な思い入れもたっぷりに挙げてみようと思う。
まずはFJ20ETエンジンを搭載した日産 スカイライン 2000 RSターボC。次に1G-GTEU搭載のトヨタ ソアラ 2.0GT ツインターボ。そして、ZCエンジンを搭載したホンダ シビックSiだ。ベスト3もこの順番としたい。
1位のスカイライン 2000 RSターボCは、84年に六代目R30型の最強モデルとしてラインアップ。FJ20ETは、排気量2リッターの4バルブDOHCにターボ・インタークーラーの装着で最高出力205psを発揮するという、国産初の“リッター100ps”オーバーエンジンだった。
誰からともなく呼ばれ始めたニックネームが「鉄仮面」で、国内ツーリングカーレースでも大活躍している。それでも、スカイラインRSがGT-Rを名乗れなかったのは、『FJ20エンジンが4気筒だったから』というのも有名な都市伝説だ。結局、FJ20ETは86年までの5年間という短命で生産終了。鉄仮面の名前とともに、80年代パワーウォーズの起爆剤として、オールドファンの語り草になっている。
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デートカーのソアラか、ホットハッチのシビックか!?
スカイラインを硬派の極みというなら、2位のソアラはさしずめ最強の軟派。デートカーとしても人気の高かったソアラは、洗練された走りと洒落たルックスで大人気で、販売数なら間違いなくコチラがウイナーだ。
ソアラ2.0GTツインターボは、86年の二代目GZ20型デビュー当初からのラインアップ。1G-GTEUも排気量2Lで、当時最新の6気筒4バルブDOHCをツインターボ・インタークーラー化したもの。国産初のDOHCツインターボエンジンで最高出力は185ps。最終的にはリッター100psオーバーの210psまで高められている。
ソアラは、スカイラインのようにサーキットで暴れ回ることはなかったが、全国のレジャースポットで見かけることがホントに多かった。ルックスもよく、走らせれば馬鹿速いのだから始末が悪い。スカイラインRSとは別の意味で若者の憧れだったのだ。
そして、3位のシビックSiは、クルマとエンジンの絶妙なバランスで、評論家を唸らせたホットハッチだ。
シビックSiが登場したのは84年。前年デビューの三代目シビックの追加車種としてラインアップされている。搭載する排気量1.6LのZCは4バルブDOHCで、最高出力135psは当時のFF車用エンジンのトップ。同時期大人気だったAE86型トレノ/レビンの4A-GEUエンジンと同等の出力だった。走りの性能も高く、ハッチバックが国内ツーリングカーレースに投入され、クラスの常勝マシンになっている。シビックSi以降、ホンダは可変バルブタイミング機構のVTECエンジンを送り出し、DOHCエンジン搭載の国産FFスポーツが次々に登場するのだが、そのお手本になった意味でも、3位は見当外れではないと思う。
80年代の国産車は百花繚乱期。パワーだけなら、ソアラには最高出力240馬力の7M-GTEUを搭載した3.0GTもあった。しかし、エンジンとクルマの強い結びつきを考えたとき、みんなで語れるクルマはそう多くはない。80年代のパワーウォーズは、絶対的パワーよりも“リッター100ps”という高性能さがキーだったのだ。
[筆者:永田 トモオ/写真:日産・トヨタ・ホンダ]