理不尽がまた

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 建物の中で何かの異変があったとき、救いになるのは窓だろう。小窓に顔が見えたので、外から窓を壊して人を引っ張り出したと、若い男性がテレビのニュースで話していた▲中にいる人を救いようがなかったという話もある。窓から赤い炎が噴き出していたから、と。建物の窓を出た後、外壁のどこかに足を掛けてへばりつく人もいたという▲「爆発的な火災」が起きたとき、約70人が建物にいたらしい。その何人ほどが無事だったろう。アニメ制作会社の京都市伏見区のスタジオで起きた放火火災は死者30人を超える大惨事となった。現場のすさまじく、むごい様子が続々と伝わってくる▲数々のヒット作を手掛けてきた会社という。情熱や創作意欲に満ちていたはずのスタジオに黒い煙が充満した。確保された男(41)はスタジオで「死ね」と叫びながらガソリンのような液体をまき、火をつけたとみられる▲動機はこれから調べられるが、何かの激越な感情に突き動かされたらしい。誰の命がどうなろうと知ったことか、と言わんばかりに無差別的で、身勝手で、残忍な仕業と言うほかない▲その巻き添えにされてよい命がどこにあるだろう。救いの窓のなかった人、今も命の危ない人、危ない目に遭った人の無念を思う。罪なき人々に向けられた理不尽がまた一つ。(徹)