杉野遥亮「スカム」インタビュー【前編】 わずか23日間で全9話撮了「もっと俳優という仕事について考えようという気持ちになりました」

杉野遥亮「スカム」インタビュー【前編】 わずか23日間で全9話撮了「もっと俳優という仕事について考えようという気持ちになりました」

現在放送中の連続ドラマ「スカム」(MBS/TBS)。2009年の東京近郊を舞台に、リーマンショックの影響により入社半年で新卒切りに遭い無職になり、さらに父親の大病による高額の治療費の捻出が重なって、職とお金を失った若者が振り込め詐欺に手を染めていく姿が描かれる作品です。

主人公の草野誠実を演じるのは、本作が連ドラ初主演となる杉野遥亮さん。最初は葛藤するものの図らずも詐欺師として躍進し、裏社会でのし上がってしまう誠実。全9話を通して等身大の若者から犯罪者へ身を堕としていく役どころを演じきった杉野さんに、役への印象や撮影時のエピソードなどをお聞きしたインタビューを前編・後編にわたってお届けします。

■連続ドラマ初主演──励みになった、柄本佑さんからの言葉

──本作が連続ドラマ初主演作となりましたが、撮影を終えられて今のお気持ちはいかがですか?

「いい意味で、主演とか座長ということを重く受け止めていませんでした。現場に入る前に、(以前共演した)柄本佑さんから『主演はただ、人より寝る時間が短いだけだから。でもその分いろいろな景色を見ることができるよ』と言っていただけて、そのおかげで変な気負いをすることなく現場に入ることができました」

──実際に主演を務められて、どのような景色が目に映りましたか?

「自分が見ていないシーンなんてほとんどないくらい、いろんなシーンを見させていただきました。『あー、現場で生まれていくってこういう感じなんだな』って感覚で、そのすり合わせも楽しいなって思えました。9話を撮った後に2話を撮って…というふうに順番通りではない撮影スケジュールだったんですけど、その中でも自分の中で細かく計算して頭で考える部分と、感情でこう動きたいなっていう部分の調整も現場で話しながらやったら楽しかったし。最初の方のシーンでは、台本に書いていない余白の部分がそれぞれの演技を受けてどんどん変わっていった印象もあって、そういうのがすごく楽しかったです。充実してたなって思います」

──撮影期間はどれくらいだったのでしょうか。

「撮影自体は23日間でした。短かったですね。クランクインする前は、さすがに『マジ!?』って思いました(笑)。最初に感じていた不安は、そこに対しての不安だったのかもしれないですね。大丈夫かな、生きて帰れるかな、って(笑)。でも始まってみれば全然そんなことなくて、むしろもっとやっていたいって思いました。あと何話も撮れるくらい体力は残っていたし、そう思えたのは現場で関わっている方々が楽しんでいたからかもしれないです」

──誠実を演じるにあたって、参考にしたものはありますか?

「原案の『老人喰い』(鈴木大介/著)を読みました。詐欺のことについて全然知らなかったので“出し子”とか“かけ子”とか詐欺の構造を学んだんですけど、セリフより覚えられないなって(笑)。でも、原案や最初にいただいたプロットを読むうちに誠実の気持ちが分かるようになっていきました」

──誠実に共感する部分はありますか?

「誠実のように窮地に追い込まれた人がどこかに支えを求めたり、感銘を受けたことに寄り添っちゃう気持ちは分かります。最初は罪悪感の比重がすごく高いと思うし、誠実もそうだったと思うんです。その中で、自分の思っていることや感じていること、不安を代弁してくれる言葉や人がそこにあったんです。たぶんそれが一つのきっかけになって、誠実が心を動かされたというのはすごく分かります」

■想定外の状況に巻き込まれても「僕はNOなものはNOってはっきり言います」

──最初は振り込め詐欺に手を染めて“しまった”誠実でしたが、詐欺師としての才覚を発揮し一気に裏社会に身を堕としていきます。杉野さんは、自分が思っていたのと全く違う状況に巻き込まれたり、全く想定していなかった人生を生きることになった誠実をどう捉えていますか?

「そういうことってありますよね。僕自身、大学に入ったきっかけも自分の希望が100%通ったかっていわれると違いますし、やりたいことだってその時は180°違うことだったんです。でも、その中でこの仕事に巡り合えて。ある意味巻き込まれたのかなって思う部分もあるんですけど、でも絶対自分の意志ってどこかしら存在すると思っています。たとえ巻き込まれたとしても僕はNOなものはNOってはっきり言うので、誠実はもしかしたら、NOって言い切れない何かを持っていたのかもしれない。その感覚は分かるなって」

──意図していないところから始まったことが、杉野さんの中でカチッとはまるような経験はこれまでにありますか?

「カチッっていう明確なスイッチはないんですけど、どちらかというといっぱいスイッチがある中で、少しずつスイッチが押されていく感覚はあります。それは一つ作品を終えるごとに吸収できるものもあるし、それでまた次のステップに生かそうっていう向上心につながることもあって。今回は、特にそれが大きかったなって思います。この作品に出合えたことで、もっと俳優という仕事について考えようという気持ちになりました」

──連続ドラマの主演を果たされて、次の目標や達成したいことはありますか?

「いっぱいあります。スタッフさんや出演者の皆さんと『見てくださる方にちゃんと届け!』って思いながら作っている作品に携われたことがすごく楽しかったし、主演だからという理由だけではなく、たくさん現場を見ることができたのも魅力的でした。だから今、ロス状態なので続編をやりたいなって思います。まだまだ伝えられることがあるんじゃないかなって思うので、続編をやりたいです。あとは…自分のおばあちゃんが見てくれるような作品に出たいなって思いもあります」

小林勇貴監督とのエピソードや杉野さんのプライベートに迫った【後編】はこちら!

【プロフィール】


杉野遥亮(すぎの ようすけ)
1995年9月18日生まれ。千葉県出身。おとめ座。O型。2015年、雑誌「FINEBOYS」(日之出出版)の専属モデルオーディションでグランプリを受賞。映画「キセキ -あの日のソビト-」で俳優デビュー。主な出演作は、映画「兄に愛されすぎて困ってます」「覆面系ノイズ」「あのコの、トリコ。」「春待つ僕ら」「L♡DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」、ドラマ「ゼロ 一獲千金ゲーム」(日本テレビ系)、「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)、「新しい王様」(TBSほか)、「ミストレス~女たちの秘密~」(NHK)など。11月29日公開予定の映画「羊とオオカミの恋と殺人」では、福原遥と共にダブル主演を務める。

【番組情報】


「スカム」
MBS 日曜 深夜0:50~1:20
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
※放送時間は変更の場合あり

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当) 撮影/尾崎篤志

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