ホンダF1山本MDインタビュー:フェラーリを上回る速さを示したイギリスGP。「パワーサーキットでここまで戦えたのは非常にポジティブ」

 F1第9戦オーストリアGPでの初優勝の興奮さめやらぬ翌週の第10戦イギリスGPで、レッドブルとホンダのスタッフは親睦をかねた耐久カート大会を開催。マックス・フェルスタッペン、ピエール・ガスリーの両ドライバーがサプライズで飛び入り参加するなどして、大盛り上がりだった。

 ホンダの山本雅史マネージングディレクターも予定を1日繰り上げてイギリスに飛び、クリスチャン・ホーナー代表と組んで総合6位に入る活躍を見せた。そして本番のF1でも、惜しくも表彰台には上がれなかったものの、「十分にポジティブなレースだった」と満足そうだった。

――ホーナー代表は、「欲求不満のレースだった」と言っていました。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):(セバスチャン)ベッテルにぶつけられてレースを失った、クリスチャンの悔しさはわかります。3位は確実だったし、(バルテリ)ボッタスの速さ次第では2位も狙えた状況でしたから。

 ただ個人的には、パワーユニット(PU/エンジン)の戦闘力が上向いている。それがコース上の速さとなって現れていることが、非常にうれしかったですね。苦戦を覚悟したシルバーストンでここまで戦えたことは、ホンダにとって大きな自信になりました。

 チームにとっても、ポジティブなレースだったんじゃないでしょうか。アレックス・アルボンに少しパワーユニット上の懸念が出て、4台入賞を逃した。そのことの方が、僕たちには残念でした。入賞は十分狙えていましたからね。アルボンとフランツ(トスト代表)には、申し訳ないことをしました。

――シルバーストンはかなりのパワーサーキットですから、そこでこれだけ戦えたのは大きいということでしょうか。
山本MD:そう思いますよ。ここに来る時には、暑くならないと勝負にならないかもと思っていました。それがこの週末はずっと涼しくて、これではメルセデスの強さが光るレースになるだろうと。実際、その通りになりました。

 しかしそんな中で私たちに日が差したのは、フェラーリと十分以上に戦えるとここで実証された。パワーサーキットでここまで戦えたというのは、田辺(豊治F1テクニカルディレクター)にしても今回現場に来た浅木(泰昭執行役員)にしても、開発側にとって非常にポジティブな絵が見られたレースでした。次のドイツに向けても、さらに前に行けるんじゃないでしょうか。そう、僕は見ています。

■レッドブル・ホンダはパワーサーキットでも十分に戦える

2019年F1第10戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は5位入賞

――次に勝てるのはハンガリーやシンガポールなど、パワーがタイムに影響しにくいサーキットと見ていたけれど、必ずしもそこに限らないかもしれない?
山本MD:そうですね。もちろんレッドブル車体の優位性など、その辺も加味して考えるべきですけど、スパ・フランコルシャンやモンツァは毎年厳しいじゃないですか。でもレースをしてみると、去年のトロロッソにしても意外にいい勝負ができていました。

 今回のシルバーストンで、パワーサーキットでも十分戦えることが確信に変わりつつあるかもしれません。サーキットを選ばず、レッドブル・ホンダ、トロロッソ・ホンダがそれぞれ、いいチーム体制を作れているという手応えを感じています。なのでコンスタントに上位入賞を目指して、やっていきたいですね。

――今回はガスリーも、いい走りを見せてくれました。
山本MD:レッドブルが予選でメルセデスに非常に接近した速さを見せ、その中でガスリーも安定して速かった。さらにレースになっても、その速さが衰えなかった。これは大きいし、これから面白くなると思います。

――1ストップ戦略だったこともあって、最後は少し苦しい展開になりました。
山本MD:でもマックスといいパートナーになりうると、改めて思いました。あのふたりは仲良くやっていますし、今後が本当に楽しみです。ガスリーらしい走りが見られたことは、ホンダにとってもうれしい話でしたね。

――次世代のF1ドライバーということで、フェルスタッペンとシャルル・ルクレールがオーストリアに続いて、イギリスでもガチンコ勝負を繰り広げました。
山本MD:今回は多いに楽しんだし、今後のふたりのバトルも非常に楽しみですね。僕がF1に関わり始めて今年で4年目ですけど、確実に面白くなっていますよね。レギュレーションが成熟してきたこともあるし、私たちが頑張ってきたこともある。面白い戦いの仲間に、ホンダも少し入れたかなと。それは、うれしいことですね。

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