全日本フィギュアシニア強化合宿リポート第3弾! 【田中刑事選手、友野一希選手、山本草太選手、島田高志郎選手・囲み詳細】

全日本フィギュアシニア強化合宿リポート第3弾! 【田中刑事選手、友野一希選手、山本草太選手、島田高志郎選手・囲み詳細】

全日本フィギュアシニア強化合宿公開練習の徹底リポート第3弾では、田中刑事選手、友野一希選手、山本草太選手、島田高志郎選手がオフシーズンの取り組みと、新シーズンへの意気込みを語った囲み取材の模様を紹介します。
( 第1弾:宇野昌磨選手・囲み詳細&男子個人氷上練習
( 第2弾:表現トレーニング&全体練習

【田中刑事選手】

── 新プログラムはいかがですか?

田中「まだプログラムを作って1カ月も経っていなくて、作り立てという状態なので、今は少しずつ、部分的に練習している段階です」

── 例年に比べてプログラムの完成が遅れたのはなぜですか?

田中「振り付けの先生とちょっと時間が合わなくて。例年よりは少し遅いですが、シーズンにはたぶん影響はないと思います」

── ジャンプ構成について教えてください。

田中「(昨シーズンと)そんなに大きくは変わりませんが、後半に(4回転)トウループ入れたかったので。どのタイミングで跳ぶのか、後半までの体力の配分などを、昨シーズンよりも考えているかな、と思います」

── その構成をこなすために、どんな心がけで、どんなトレーニングをしようと考えていますか?

田中「昨シーズン、ルールが変わりましたが、4分間の中でどういう組み合わせにするとキツいとか、どこをショートカットして次のジャンプにつなげるかというのが、あまりプログラムの中でできなかった。今シーズンはそれを踏まえて、ここは力強く、メリハリ良くなど、フリーはそこを大事にして作りました」

── ショート、フリーの曲名を教えてください

田中「ショートは『Hip Hip Chin Chin』、フリーは映画『シャーロック・ホームズ』です」

──「Hip Hip Chin Chin」とは、どういう意味ですか?

田中「お尻お尻、アゴアゴ(笑)」

── それぞれのテーマを教えてください。

田中「ショートは、昨シーズンまではどちらかというとネガティブなイメージでした。それは自分の中でこなせたのかな、と思ったので、それと真逆なモノを。昨シーズンとは全く違うものができたかな、と思います。フリーは先ほど言った構成を考え、それをどう実現できるかと(いう視点で)曲で選びました。まだできてないところが自分の中であるので、そこが課題です」

──「シャーロック・ホームズ」は、どんな人物像を描いていますか?

田中「映画の中の人物を表現したいです。事件が解決するまでの過程とか。(ホームズは)すごく頭使う方なので、その中での苦しみがあったのかな、と。そういう部分を表現しないといけないのですが、これはまだまだできていない部分だと思います」

── 新しいシーズンへ向けた決意を教えてください。

田中「上と戦えるように、昨シーズンよりも攻めた構成にしました。強いもの(高難度のプログラム)は用意したけれど、それをこなせないと意味がない。後は自分次第。こなせるか、こなせないか、シーズンに入ってからの勝負だと思います」

── これまでよりは、強い気持ちで新シーズンに向かえているのでしょうか?

田中「いかないと。昨シーズンよりも難しい内容でやっているので、折れたら、もうどんどん折れていく。諸刃の剣に近いのですが、自分の強さを試す構成です。僕も『これをやりたい』と思って作りました。自分で決断したからには、それを崩さず、シーズン最後まで戦っていきたいと思います」

「あとは自分次第。シーズンに入ってからの勝負だと思います」。いつも柔らかな空気をまとっている田中選手ですが、その言葉は力強く、固い決意が感じられました。

【友野一希選手】

── オフシーズンはどのような取り組みをしましたか?

友野「一番はスピンとフリーレッグです。今すぐに改善できるところには取り組んでいて、昨シーズンもったいなかった部分、フリーレッグはしっかり直せてきているのかなと思います。後は主に4回転トウループ(の練習)と体作り。スポンサーのセントラルスポーツさんがジムを経営しているので、トレーナーさんにサポートをしてもらい、トレーニングしています。ジャンプもちょっとずつ楽に跳べるようになってきたり、スケーティングも少しずつ安定してきたり、体の使い方もよくなってきました。昨シーズンよりもスケーティングの見せ方や、一つひとつの動き、指先(の表現)まで細かくできるようになってきて、自分でも成長してきている、と思っています。特にスピンやフリーレッグは、試合でしっかり成長した姿を見せたいです」

── 陸上トレーニングは、パワーアップというよりは体の使い方を意識しての取り組みということですか?

友野「どちらも、です。神経系を刺激するようなトレーニングだったり、けがの予防も兼ねて。まだまだ自分は細いので、けがをしないような体作りとことで、ウエイトトレーニングもかなりやっています」

── 主に下半身を鍛えていますか?

友野「いえ、上半身も。部分的ではなくしっかり全身を使って、ウエイトを使って、その重みを感じて、コントロールしながら体の使い方を矯正していく。着氷の時に(軸が)ぶれたりするので、全身でコントロールできるように。氷上の練習がもちろん一番大事で、陸上のトレーニングはその補助ではありますが、少しずつ体も変わってきたかなと。目に見えて変わって見える、筋肥大させるトレーニングではないですけど、どんどん体も良くなってきているし、体幹トレーニングもやっているので、体をコントロールするという面においては、自分で実感できるくらい成長したと思います」

── スケートのどの部分に一番トレーニングの効果が表れていると思いますか?

友野「着氷や跳ぶ瞬間の安定感だったり、あと(ジャンプを跳ぶ時に体を)締めている時の軸の修正だったり。スケーティングも、フリーレッグもそうなのですが、足を上げるためにはしっかりと筋肉がついていないといけないので。後はバレエのレッスンなど、(フィリップ・)ミルズ先生に教えてもらったトレーニングも重ねて、より楽に難しい態勢・動きができるようになってきたなと思います。まだまだですが、全体的に安定感は出てきたかなと。体のどこの筋肉を使っているか、などを意識しながらトレーニングをやっているので、氷上においても(体の)どこを使って、ということが分かってきました。スケーティングにも、ジャンプにも生かせてきていると思います」

── 陸上トレーニングが必要だと思ったきっかけは何でしょうか?

友野「昨シーズンもやってはいたのですが、専属のトレーナーさんが付いていませんでしたし、毎週できているわけでもなく…。毎週欠かさず、(トレーナーと)マンツーマンでやるのは初めてです。周りの選手を見ても、自分のスケートは安定感がまだまだ足りないと感じていたので。氷上の練習に負担がかからないレベルで、本格的なトレーニングを続けていきたいです」

── 4回転トウループにもその成果が出ているように感じました。

友野「出ているよう…な…気も…します(笑)。氷上の練習もずっと続けているので、いきなり分かるわけではないですけど。前と比べたら楽に回れるようになったかな、と。コンビネーションに持っていく時の安定感というか、無理な着氷でも結構持っていける(セカンドジャンプが跳べる)ようになってきたので。あと姿勢がすごく良くなりました。トレーニングも始めた当初よりもできることが増えて、最初はプランクもプルップルだったんですけど、今は重りを乗せても大丈夫になってきていますし、私生活でただ歩いているだけでも前と比べて体の“芯”が入っているような感覚があります。それを今度はスケートに生かせるようにしたいです」

── 新プログラムについて教えてください。

友野「ショートプログラムはフィリップ・ミルズ先生の振り付けで、『The Hardest Button To Button』です。原曲ではなく、バレエの振付師のウェイン・マクレガーさんのコンテンポラリー作品の中の音楽です。どういうふうに表現したいかというと、コンテンポラリーというのはしっかり音楽を解釈してそれを体で表すということなので、それを意識して。コンテンポラリーはすごく気になっていて、やりたかったジャンルの一つです。ミルズ先生には振り付けだけでなく、フリーレッグの使い方やバレエの所作など、技術的な面でも指導していただきました。フリープログラムはミーシャ・ジーさんの振り付けで『ムーラン・ルージュ』です。4部構成くらいになっていて、強弱がはっきりしていて、アピールポイントがたくさんあるので、今シーズン目標としている“力強い演技をする”というのを、後押ししてくれるような曲になっています。ショートは芸術面でも新しい表現を見せたい、フリーはしっかり力強い演技ができたらいいなと思います」

トレーニングについて詳細に話してくれた友野選手。次々とあふれ出す言葉から、着実な成長を実感している様子がうかがえました。

【山本草太選手】

── オフシーズンの取り組みについて教えてください。

山本「海外(アメリカ・デトロイト)に1週間、振り付けに行きました。それを完成させるように、氷上の練習を増やしてトレーニングしています」

── 新プログラムについて教えてください。

山本「どちらもパスカーレ・カメレンゴさんの振り付けで、ショートは『エデンの東』、フリーは『In This Shirt』という曲です。いつもYouTubeで探すんですけど(笑)。『この曲いいかな~?』と、先生たちに候補を持っていきます。その中の二つです」

── 自分で感じている新プログラムの魅力は?

山本「ショートもフリーもスケーティング、エッジワークで見せられるプログラムかなと。特にフリーは曲調の波が少ない曲なので、難しいとは思いますが、ジャンプやスピン、スケーティングで見せられますし、後半の曲が盛り上がるところでステップがあるので、ステップでも見せられるプログラムを作っていきたいと思います」

── 新プログラムの曲は、どこにひかれたのでしょうか?

山本「ショートの『エデンの東』はすごく壮大な曲調で、そういうスケートがしたいと思っています。フリーはしっかり演じきれれば、とてもステキな大人っぽいプログラムかな、と思ってはいますが、まだまだ単調な感じで終わってしまうので、もっと感情を出して演じたいと思います」

── 自分の中で、スケーティングの進化を感じているということでしょうか?

山本「そうですかね…(笑)。それぐらい頑張らないととは思っています」

── ジャンプの構成について教えてください。

山本「ショートとフリーの両方に(4回転)サルコウを入れるために、今頑張っています」

── 4回転トウループの成功率はいかがでしょうか?

山本「練習ではいいんですけどね…(苦笑)。後は、曲(プログラムの中)に入れなきゃという感じです」

── チャレンジカップ2019では、とても質の高い4回転トウループを跳びました。

山本「そうですね。でもあの時は1本で、最初(のジャンプ)だったので集中できたのですが、今はサルコウとトウループなので、そうなるとミスが出たりします。全てを入れられるように練習しています」

── 4回転サルコウの確率はどのくらいでしょうか?

山本「トウループの方がまだいいですね。奇麗に跳べる時もあるので、あとは確率を上げて、曲に入れられるようにしていきたいなと思っています」

── 大きなけがから復帰した本格的なシーズンになります。コンディションについて、どのようにアプローチしながら新シーズンを迎えようと思っていますか?

山本「練習は前シーズンよりだいぶ増えています。これだけ練習できているので、不安はないです」

── 足首のボルトはまだ入っている状態ですか?

山本「入っています。埋まっているボルトで、頭がないというか、ねじを回す部分がなくて、抜かなくていいボルトなので」

── 寒い時は冷えたりしますか?

山本「ボルトのせいか分からないですけど、熱感が出てきたりすることはあります(苦笑)。練習しすぎると、その(ボルトの)周りが熱くなります。アイシングとかケアはしますけど、だいぶ練習はできているので、大丈夫です」

── ボルトは何cmくらいのものですか?

山本「生で見たことはないですけど…。3本入っています。太さは分からないです」

── それはどんな役割を果たしているのですか?

山本「くるぶしの骨が離れたので、横や斜めに3本入れて、くっつくようにしています」

── 自分の中では故障前の状態にどのくらい戻っていますか?

山本「故障する前より、良くなっています。前は(4回転)サルコウは跳べなかったので。後は試合で入れられるように頑張りたいです」

── 練習量はどのくらい増えましたか?

山本「昨年は1日1時間の時もありましたが、最近は多くて3~4時間…。この合宿もだいぶ滑り込めているので、順調だと思います」

── ’19-’20シーズンの目標を教えてください

山本「昨年の全日本(選手権)がとても悪かったので、今年は全日本で表彰台に乗って、世界選手権に行けるように頑張ります」

表情豊かに、明るい口調で記者からの質問に答えてくれた山本選手。その姿には、練習の充実ぶりと、自身への大きな期待がうかがえました。

【島田高志郎選手】

── ジャンプの構成について教えてください。

島田「トリプルアクセルがかなり安定してきて、プログラムにも2本組み込んでいます。後は4回転トウループ…、4回転サルコウの調子が少し悪くてなかなか決まっていませんが、4回転トウ、4回転サルコウの安定感を目指して、今頑張っているところです」

── 4回転ルッツも両脚で下りたという話を伺いました。

島田「すでに1本、クリーンに下りています。その1本だけなんですけど。その後はまた4回転トウ、4回転サルコウに集中している感じです」

── 4回転ルッツを構成に組み込む予定はありますか?

島田「もちろん将来的に安定すれば、組み込んでいきたいと思いますが…。今はけがをしてもいいという時期に詰めて練習していました」

── 降りたのはいつですか?

島田「スイスでの練習で、です。羽生(結弦)くんのジャンプコーチのジスラン(・ブリアン)コーチに(スイスに)来ていただいていた時に降りました」

── ジスランコーチの教え方はどうでしたか?

島田「教え方ももちろんすごく上手なんですが、最後はメンタルというか…なんかもう、『あなたが次に降りられることを、僕は知っている』って言われて…(笑)。そうしたら、なんか、できる気がする…ってなって、跳べました」

── オフシーズンの取り組みについて、もう少し詳しく教えてください。

島田「世界ジュニア(選手権)が終わってからは、1度オフというか、少し体を休めました。そこから徐々にスタートしていって、日本に来る前の2週間くらいはずっとすごくキツいトレーニングを積んできました。氷上でも曲かけを通すことを意識しましたし、オフアイスでは、昨シーズンの夏に(カナダ・)トロントに行った時にウエイトトレーニングやインターバルトレーニングなどを指導してもらった方がいるのですが、その方たちに来ていただいて、すごく詰めてトレーニングしました」

── ハードなトレーニングを積んだことで何か変化は感じていますか?

島田「(プログラムを通した時に)ヘトヘト感はまだあるんですけど。でもシーズンが始まる前は、シングルジャンプで通しても疲れていたのが、全ジャンプを入れても最後まで滑り切れるようにはなっています。今後、こういったトレーニングをどんどん積んでいくことによって、自分なりに成長できるなと思っています」

── 昨年「体重増やしたい」と言っていましたが、今はどのような状態ですか? 食事面ではいかがでしょうか?

島田「どうやって時間を組み立てて、どうやって料理をすればいいか、ということが自分の中で分かってきたので食生活は不自由ありません。最近よく作っているのは、みそ汁…とにかく野菜をいっぱい入れて(笑)。栄養素はしっかり、時々携帯で検索をかけながら、やったりしています」

── 基礎体重は管理されていますか?

島田「今は56、57kgくらいです。ちょっと増えました。だいたい56kgくらいが自分の中ではいいかな、と思っています」

── 体重の増加によってジャンプの感覚が変わることはありますか?

島田「すごく些細なことですけど、最初は重く感じたり、ちょっと調子があまりよくなかったり、というのはありましたが、持久力の面では助けになっているので。それを意識しつつ、ジャンプの軽さも求めてこれからはやっていきたいな、と」

── まだ重い感じがしますか?

島田「最近は慣れてきた気がするんですけど。もちろんシーズン中に何もけががなかったってわけではなく、いろんなところを負傷しながら、けがとも向き合いながら練習していたのですが、ジャンプに対する恐怖心というのがまだ自分の中に少なからずあるので、それを克服していきたいです」

── 恐怖心は4回転ジャンプに対してですか?

島田「4回転サルコウやトウループで抜けてしまう時があって、それで足首をひねったりというのが2回ほどあったので。何も考えずに自分を信じてやる、というのが今、目標にしているところです」

── 4回転ルッツへの挑戦は、恐怖心の克服のためでしょうか?

島田「ルッツは最初は“お楽しみ”みたいな感じで始めたのですが、それが逆に良かったというか、楽しみながらやることによって、やはり気持ちも高まります。そのおかげで1度跳べて、自信がついたという感じです」

はきはきと記者からの質問に答えてくれた島田選手。やるべきこと、目標がしっかりと定まっている、そんな印象を受けました。

それぞれの目標や夢を胸に、本格始動した選手たち。新シーズンも、彼らの活躍を全力で応援しましょう!

「KISS&CRY」とは?


「KISS&CRY」シリーズは、日本のフィギュアスケーターの皆さんをフィーチャーし、その「戦う」姿、「演じる」姿を合計50ページ超のグラビアでお届けしています。つま先から指先・その表情まで、彼らの魅力を存分に伝えます。また、関連番組テレビオンエアスケジュールも掲載。テレビの前で、そして現地で応援するフィギュアスケートファン必携のビジュアルブックです。
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