チャウ・シンチー&ツイ・ハーク 香港映画界の至宝が贈る『西遊記』は悪ふざけギリギリ(アウト)! イケメン・美女が大活躍

『西遊記2~妖怪の逆襲~』

マジメに大ボケ!「西遊記」の世界でチャウ・シンチー節が炸裂

『少林サッカー』(2001年)『カンフーハッスル』(2004年)『少林少女』(2008年)で出演・監督・プロデューサーを務め、その異才を世界中に見せつけたチャウ・シンチー。悪ふざけギリギリ(アウト)な作風は日本でも大人気で、子どもから大人までを等しく呆れさせてくれる香港映画界の至宝だ。

そんな男が2008年の『ミラクル7号』以来ひさしぶりの監督作の題材に選んだのが、これまでアジア各国で何度も映像化されてきた中国の伝奇小説・西遊記。三蔵法師と孫悟空たちが出会うまでの前日譚を描いたSFアクション大作『西遊記~はじまりのはじまり~』(2013年)は、ブッ飛んだ展開を実現するために衒いなくCGを使いまくった、斬新な西遊記に仕上がっている。

本作は、多くの人々に愛される大ネタにもかかわらず、冒頭からいつものチャウ・シンチー節が炸裂。ほのぼのシーンから一瞬で地獄に叩き落す性格の悪さは健在で、常に何らかのフラグがビンビンに立っているという親切設定が嬉しい。しかも、登場人物たちの行動は自業自得・因果応報の連続という、いっさいの感情移入を許さないハードルの低さは安心感すら感じさせる。

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ド派手かつバカバカしいアクションのエフェクトは、もうほとんど漫☆画太郎の世界。子ども号泣必至の恐ろしい妖怪たちをコミカルに描きながら、シチュエーションやサイズ感で恐怖を煽るキャッチーさも流石である。そこにインディ・ジョーンズ的なアトラクション要素も挟み込んでくるものだから、観客は序盤からお腹いっぱい(中盤過ぎからは『ロード・オブ・ザ・リング』になります)。とはいえ、決して主人公だけがヒロイックに活躍するわけではない(※絶妙にクズ)ところなどは、チャウ・シンチーの優れたバランス感覚と言えるだろう。

スー・チーの可愛さと色気が爆発! 他のことはもうどうでもいい!!

イケメン俳優ウェン・ジャンを終始ボサボサ頭のボンクラ三蔵役にあてがっているのも贅沢だが、本作の大きな見所……というか映画としてギリギリ成立させているのが、『トランスポーター』(2002年)でジェイソン・ステイサムと息の合ったアクションを披露していたスー・チーの存在だ。

『西遊記~はじまりのはじまり~』©2013BingoMovie Development Limited

いまやベテラン女優となったスー・チーは撮影時すでにアラフォーだったはずだが、90年代と変わらないおきゃんな魅力を発揮。また、『イップ・マン外伝 マスターZ』(2018年)などで女優としてもブレイクしつつあるクリッシー・チャウが、コミカルな役柄でキュートな魅力を振りまきつつ、元グラビアモデルらしくセクシー(?)ポーズを披露している。

全く可愛げのない外道な孫悟空を演じたホアン・ボーの雑なアドリブにスー・チーがガチ笑いするなど、キャスト・スタッフ共に楽しんで作ってる感が好感度大な『西遊記~はじまりのはじまり~』は公開時、中国で興行成績1位を記録するなど大成功を収めた。そして2017年には、監督やキャストを一新した続編『西遊記2 ~妖怪の逆襲~』が公開。チャウ・シンチーは製作と脚本に回り、代わって監督を務めたのは『男たちの挽歌』(1986年~)シリーズのプロデューサーとして知られるツイ・ハークだ。

バトンを受けたのは巨匠ツイ・ハーク! 続編でも美女優たちが大活躍

ツイ・ハークといえば、監督として『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ(1991年~)『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』(2011年)でジェット・リーと、『ダブルチーム』(1997年)『ノック・オフ』(1998年)でジャン=クロード・ヴァン・ダムとタッグを組んで世界の映画界を席巻(?)した、香港エンタメ界のレジェンド的存在。近年では、ユン・ピョウらと共に『おじいちゃんはデブゴン』(2016年)にカメオ出演する姿に興奮した香港映画ファンも少なくないだろう。

そんな巨匠が手がけた『西遊記2 ~妖怪の逆襲~』は、なんとメインキャストも一新。ホアン・ボーがいい感じで演じたクズい孫悟空をイケメン俳優のケニー・リンに演じさせたのは集客を意識したテコ入れかもしれないが、三蔵法師とのブロマンス的な展開を見据えた部分も大きいだろう。

『西遊記2~妖怪の逆襲~』

そんな続編の見どころは2人の女優、「世界で最も美しい顔100人」に選出されたジェリー・リン(リン・ユン)と、米フォーブスによる「最も影響力のある女性100人」に選出されたヤオ・チェンだろう。2人とも物語のキーとなる重要なキャラクターを演じていて、冴えない坊さんや薄汚い妖怪たちに疲れた目と心を癒してくれる。特にジェリー・リンはどことなくスー・チー似で、前作からの繋がりを意識させてくれる数少ない存在だ。

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おバカな展開と人情ドラマをチャウ・シンチーから引き継ぎ、どんでん返しも盛り込んで一回り壮大な西遊記を作り上げたツイ・ハーク。クライマックスのシーンで『カンフーハッスル』に使用された「東海漁歌(fisherman’s song on eastern sea)」が流れるあたりにも思わずニヤリとさせられる。

とはいえ大真面目に観ても疲れるタイプの作品なので、お菓子でもつまみながらまったり観賞しよう。それにしてもチャウ・シンチー、ほんとに「Gメン’75」が好きなんだなあ……。

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