禁煙化から1年!串カツ田中の両にらみ戦略とは?

大阪名物の串カツを気軽に楽しめると人気を呼ぶ「串カツ田中」。昨年6月、居酒屋ながら全席禁煙に踏み切ったことは大きな話題を呼びました。

禁煙化により、ターゲットをファミリー層へと大きく転換し、およそ1年が経過しました。その効果と今後の戦略を、19日に行われた決算説明会から探ります。


全席禁煙後の売り上げは

串カツ田中ホールディングスの2019年第2四半期の売上高は、46億8,200万円と前年同期比39.8%増となりました。経常利益は3億7,800万円で同39.9%と、いずれも4割近いアップを達成しました。

全席禁煙化以来、既存店の売り上げは乱高下を続けています。前年同期比で売上高の平均は100.5%増と、禁煙化前と同じ水準。客数は104%増と好調なものの、客単価は96.2%と減りました。特に4,5月は売り上げが前年を割り込む状態が続きます。

同社の貫社長

禁煙化後、ファミリー層は7%増え、平日を中心に会社員層が7%減ったといいます。同社の貫啓二社長は「今のお子様が大人になった時、串カツが親しみのあるB級グルメの味になってほしい。長期的な戦略を考えて禁煙化した。短期的にはもっと苦労するだろうと考えていた」と話します。

ロードサイドを攻略

大阪で串カツと言えば、あまり家族で楽しむものではなく、大人が飲み屋でサクッと食べるものというイメージでした。

ところが、同社は東京・世田谷で開業すると、繁華街や駅前ではなく、住宅街への出店することで家賃を押さえ、家族向けやシニア層をも取り込むという戦略で成功しました。子どもも楽しめる串カツ屋、として急速に出店数を伸ばしたのです。禁煙化はいわば当然の流れでした。

そんな同社が今年3月、初めてロードサイド型の新業態として出店したのは、群馬県前橋市の「串カツ田中 前橋三俣店」です。コンセプトは「3世代で楽しめるファミリーレストラン型串カツ酒場」といいます。

店内には、テーブル席だけでなく、小さな子供連れも想定したボックス席や座敷席などを用意。メニューも増やし、串カツだけでなく釜飯などのご飯ものを充実させました。また、店内で待たなくても順番が来たらアラートが鳴るシステムなども初導入しました。

この実験的な新業態は、地方への本格進出の布石だと思われます。貫社長は「今までも既存の形態のままのロードサイド店はあり、禁煙化で売り上げは伸びていた。今後ロードサイド店を全国に広げる時に、小さなお子様も連れてこられて、よりファミリー層に満足してもらえるような店にしたかった」と話します。

現在、同じ業態でもう1店を出店準備中ということです。今後、営業データを詳しく分析し、一定水準で利益が維持できることが分かれば、フランチャイズ(FC)で地方を一気に攻めていくことも視野に入れる戦略です。

サラリーマンを取り戻せ

もう一つは、禁煙化で足が遠のいた会社員を取り戻す戦略です。「言ってもうちは居酒屋なので会社員層がメイン。ここが落ちているのは良くない」(貫社長)と、様々な施策を打ち出しています。

例えば、「超絶ハッピーアワー」。平日午後6時までの注文だと、何杯でもハイボールやレモンサワーが1杯50円になるというキャンペーンです。働き方改革で早い時間に終業する会社員や、シニア層の取り込みを狙い、来客数は着実に改善しているといいます。

ほかにも、「アルコール3大企画」として、サイコロを振るとお酒が安くなるサービスを強化したり、1か月間お酒が割引になるパスを販売したりするなど、様々なキャンペーンを展開しています。貫社長は「前回はファミリー層向けだったが、今回は会社員層、居酒屋利用の層に向けたキャンペーンを行っていく」と力を込めました。

同社の長期目標は1,000店舗の出店。店舗数は直営、FC合わせてこの半年で21店舗増え、239店舗となりました。

貫社長は「目標に向け、ロードサイド店の出店も、都心での施策も両方やっていく。特に地方では現地の会社としっかりタッグを組み、一軒一軒の出店ではなく、もう少し面で動いていきたい」と、多数のFC店を経営する地方のメガフランチャイジーと組み、出店を加速させる方針を明らかにしました。

新規店を見ると、石川県や愛媛県、九州の福岡、佐賀両県など、地方への出店が進んでいることが分かります。同社は6月には東証1部に上場と勢いに乗ります。多様な業態を展開しながら、“大阪の串カツ文化”をうまく全国に広めていければ、1,000店舗も夢ではなさそうです。

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