山本太郎氏 異彩を放った「れいわ」現象 

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左は街頭演説で支持を訴える政治団体「れいわ新選組」代表の山本太郎氏=2019年7月20日夜、東京・新宿 右は参院選が公示され、第一声を上げる山本氏=2019年7月4日、東京・新宿

【比例で出馬表明した際の山本太郎氏と船後靖彦氏】

参院選比例区での出馬を表明する山本太郎氏(右)とALS患者の船後靖彦氏(左)=2019年7月3日

 政治団体れいわ新選組」は比例代表で2議席確保。当選者は、特定枠1位のALS患者の船後靖彦(ふなご・やすひこ)氏と、2位で重度障害者の木村英子氏。政党要件を持たない諸派が比例議席を得るのは2001年の非拘束名簿式導入以来、初めて。落選した代表の山本太郎氏は次期衆院選に向け「野党と手を組まなければ政権交代できない。力を合わせる必要がある」と語った。自身は次の衆院選や参院選に立候補する考えを示した。

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 やはり異彩を放った。今回の参院選で山本太郎さん率いる政治団体「れいわ新選組」は「陰の主役」とも言われた。ネットで呼びかけた寄付金がわずかな間に「4億円」となり、駅前を人で埋め尽くすほどの街頭演説の様子はSNSで拡散、れいわ関連の言葉は何度もツイッターでトレンド入りした。既存政党ではとても満たされない有権者の〝もやもや感〟、格差社会の怒りをまとめて受け止めようとした。「この国は変えられる。あなたがそれを望めば」「世界を変えるのは、いつの時代も空気を読まないバカである」。語りかけるような山本さんの口調は一定の共感を呼んだ。永田町の論理に風穴をあけたのか、「大衆迎合」のパフォーマーなのか。真価が問われる結果となりそうだ。(共同通信=柴田友明)

 ▽「一人でない」

 7月20日、新宿駅西口。何千人もの前で最後の演説を終えた山本さんは取材に答えた。「この熱を感じたいという人が大勢いた。(それぞれが)一人ではないということを確認できる場にもなっていた。普段、孤独の中にいる人は多いと思う。人と付き合うにもやっぱりお金いるんですよ。関係を保つには。そこも密にもてない経済状況の中でいる人たちにおそらく多く支援していただいていると思う。会ったことはないけれど、同じ思いを持った人たちが集まれる場所としてこの選挙の演説の場につながっていったのではないか」。当事者の視点。冷静で実感のこもった言葉のように筆者は感じた。

 ▽背水の陣

 これまでの流れを振り返りたい。山本太郎氏は自由党共同代表だったが、同党が国民民主党と合併した際に加わらなかった。4月に政治団体「れいわ新選組」を立ち上げ、候補者10人擁立すると宣言した。2013年の東京選挙区で自民2番手の候補を上回る約67万票を獲得した山本氏。「選挙区から出るのか、比例から出るのか」と他陣営をやきもきさせた。公示前日の7月3日に比例区からの出馬を表明。しかも、個人の得票に関係なく優先的に当選する「特定枠」を活用してALS患者の船後靖彦氏を1位、重度障害者の木村英子氏を2位として擁立することを明らかにした。比例で少なくとも3人以上当選しなければ自身は落選となる「背水の陣」を展開した。

 公明党代表の山口那津男氏が出馬する東京選挙区に沖縄創価学会壮年部の野原善正氏を擁立、「大衆と共に語り、戦い、死んでいくという立党精神を忘れた」として与党・公明党の「立ち位置」を問うた。拉致被害者家族の蓮池透氏、東大教授の安冨歩氏、元コンビニ加盟店オーナーの三井義文氏、環境保護団体職員の辻村千尋氏、IT会社社長の大西恒樹氏、シングルマザーで社会教育指導員の渡辺照子氏が貧困、差別、原発・環境問題から安全保障、経済政策までそれぞれのテーマを自らの言葉で語った。

 この選挙がなければ、一つの政治団体としておそらく結集しなかったメンバーであったろう。「私たちは緩いつながり、その一本でつながっている」と蓮池さんが街頭で、れいわ新選組の候補者たちの連携について語った際に、山本氏が「そうだ!」と大声で叫んだのは印象的だった。

【6年前の初登院】

初登院し、記者に囲まれる山本太郎氏=2013年8月2日午前、国会

 ▽山本氏の原点

 山本太郎という俳優を知ったのは深作欣二監督の映画「バトル・ロワイアル」(2000年)だった。中学生のクラスメイト同士が生き残るために互いに殺し合うというストーリーは当時かなり反響を呼んだ。国家が破綻を防ぐためにそう仕向けるという奇想天外な設定だった。教師役のビートたけし氏の怪演、主役らを守ってレジスタンスに徹する生徒役・山本氏の「国」との戦いぶりは記憶に残っている。

 NHK大河ドラマ「新選組!」(2004年)では新選組隊士、原田左之助として出演。近藤勇(香取慎吾氏)、土方歳三(山本耕史氏)、沖田総司(藤原竜也)、斎藤一(オダギリジョー氏)、山南敬介(堺雅人氏)、藤堂平助(六代目中村勘九郎氏=今年の大河ドラマ・いだてんの主役)とともに主メンバーとして熱演したことも覚えている。

【2004年のNHK大河ドラマ新選組!】

2004年NHK大河ドラマ「新選組!」の出演者たち=2003年撮影、京都市左京区の金戒光明寺

【2000年の映画バトル・ロワイアル】

左から2人目が山本太郎氏、2000年の映画「バトル・ロワイアル」の監督、原作者と主な出演者での撮影。右端はビートたけし氏、中央は深作欣二監督=東京都練馬区の東映東京撮影所

 2011年の福島第1原発事故をきっかけに反原発活動に参加。俳優タレント業から自身の舞台は政治へと移った。13年7月の参院選当選、小沢一郎氏と一時手を結び、「生活の党と山本太郎となかまたち」「自由党」の共同代表に。相当に勉強して国会で安倍首相や閣僚たちに質問をぶつけてきた。安全保障関連法の成立にノーを唱え、「一人牛歩」戦術や「お焼香パフォーマンス」を繰り広げた。テレビのシーンを覚えている人もいるだろう。変わった政党名の役者出身議員のスタンドプレーと当初はみられたが、身体を張った「発信力」を好意的に受け止める人も少なからずいた。市民運動家、弁護士、学者、文化人たちとの交友の中でこの6年間、自身の政策を育んできた。

 著書「山本太郎 闘いの原点 ひとり舞台」(ちくま文庫)では「おいたち」を語っている。

 「うちは物心ついたときから父はなく母親だけで育てられたんですね。この母親という人が、とにかくパワフルで正義感が強く『すべての弱い立場の人には手を差し伸べる』って考え方の人で。子どもの頃から、もうそればっかりうるさく言われて育ったんですよ」「彼女は、貧しいフィリピンの子供の里親になるボランティア団体にも入っていて。自分でも何人かの子供の里親になり、面倒を見ていましたね。それで僕もちっちゃな頃から、その子らに会いにフィリピンに行ったりしてました」

 ▽「消費税廃止」の背景

 「消費税廃止」。山本氏らが今回重点的に掲げている公約だ。代わりに法人税や所得税の累進制でまかなえるという論理だ。耳には聞こえがいいが、本当に可能だろうかという気もしてくる。

 著書「僕にもできた!国会議員」(筑摩書房)には「それまで、経済についての知識はほとんどありませんでした。『財源どうするんだ?』に対しては、儲かってるところから取るしかないだろうっていう本当にざっくりした考えだった」と語っている。3年前に立命館大教授の著書を読んだ時に「衝撃を受け」「デフレ不況の時にしかできない経済政策もある」と知り、この教授らと勉強会を通じてアベノミクスを超える経済政策を模索してきたという。

 唱えてきたことへの「具現化」をどうするか。発信力と現実の狭間の中で、今後の選挙でも山本氏への注目度は高いと言える。