カーボンナノチューブを強くする構造を特定 京都大学らが世界初の直接測定に成功

京都大学、名古屋大学、愛知工業大学らの研究グループが、引っ張りに強いカーボンナノチューブの構造を特定することに成功した。

炭素原子が蜂の巣格子状に結合した物質であるカーボンナノチューブは、極めて軽く丈夫なため、理論上、地球と宇宙をつなぐ宇宙エレベーターの建築材料にもなり得る候補物質として注目を集めている。

しかし、カーボンナノチューブと一口に言っても、直径や炭素の並び方が無数にある上、引っ張りに対する強さ(引張強度)を測定すると、試料ごとに測定値に大きなばらつきが生じることが知られている。一方で、チューブの構造を調べた上で機械特性を測定することは、そのサイズの小ささゆえに大変難しい実験で、一体どのようなチューブが強いのかはわかっていなかった。

こうした中、本研究では、幾何構造(炭素の並び方)をきちんと決めた1本のカーボンナノチューブの引張強度測定実験を次のように設計し、世界で初めて成功させた。まず、アルコール化学気相成長法により基盤に設けた切れ目に橋渡しするように単層カーボンナノチューブを成長させ、広帯域レイリー散乱分光法を用いて幾何構造を決定する。次に、マイクロフォークを使ってチューブを拾い上げ、2つのステージからなる微細デバイスに橋渡しするように設置する。チューブが切れるまで片方のステージを移動させ、移動量とバネ定数からフックの法則により引張強度を決定する。

この実験の結果、直径が小さく、かつ「近アームチェア型」と呼ばれる構造のチューブが最も高い引張強度を持つことがわかった。また、実験結果の解析から、幾何構造と引張強度の相関を見いだし、引張強度を予測する関係式を得ることにも成功した。

これにより、引張強度を予測できるようになったとともに、強い材料を作るための明確な指針が得られ、究極の構造材料の実現に一歩近づいたといえる。

論文情報:【Nature Communications】Strength of carbon nanotubes depends on their chemical structures

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