社説:【参院選】夫婦別姓 家族の多様性も争点だ

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 昨年6月、当時の野党6党派が選択的夫婦別姓を実現する民法改正法案を提出したが、与党は審議に応じなかった。

 議論しないのは、安倍晋三首相の支持層に多い「別姓は家族を破壊する」という考えに配慮しているためだ。

 だが国会は、裁判所から夫婦の姓のあり方について議論するよう、重ねて促されている。

 各党は参院選の公約で夫婦別姓についての考えを示しているが、選挙戦で実際に議論になっているとは言い難い。選挙は最終盤だが、この問題にどう取り組むかを明確にして議論してほしい。

 夫婦別姓を認めない民法の規定が合憲か違憲かを争う訴訟で、最高裁大法廷は2015年に合憲判断を出した。

 一方で同判決は、選択的夫婦別姓について「国会で論じられるべき」との意見を付けた。女性3人を含む5人の裁判官は違憲と述べた。

 今年4月には、日本人同士の結婚で夫婦別姓を選べないのは違憲ではないか、と問うた裁判の判決があった。

 東京地裁は合憲判断を示したが、「現行法制度で別姓が認められないことによる不利益は立法裁量にゆだねられた問題」と指摘した。これ以上の放置は許されまい。

 参院選では、選択的夫婦別姓の導入を目指す党と、旧姓など通称使用の拡大で対応する党に分かれている。

 立憲民主と国民、共産、社民は選択的夫婦別姓に賛成し、公明は「導入に向け議論を進める」とする。一方、自民や維新は夫婦別姓に言及せず、旧姓使用の拡大を打ち出している。

 通称使用として別姓を認めるが、夫婦同一姓という根幹は変えたくない-。自民や維新には、明治以来の家族制度や家族観へのこだわりがうかがえる。

 結婚して姓を変えるのは9割が女性である。通称使用は女性にだけ二つの姓を使う負担を強いる、という指摘がある。

 法務省によれば夫婦同姓が義務の国は日本以外にない。別姓が「家族を壊す」とは必ずしも言えないはずだ。

 国民の意識も変化している。内閣府の昨年2月の世論調査では、夫婦別姓導入に向けた民法改正に賛成が42%、反対は29%だった。

 各党のスタンスは「多様性」や「個」のあり方についての考え方の違いをよく表しているのではないか。