<参院選 その声届くか>交通弱者/高齢者の足確保が急務

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JR仙石線の旧線路跡(中央)に沿って住宅が並ぶ東名地区。震災後、鉄路は高台に移転した

 宮城県石巻市内で17日夕、安倍晋三首相が街頭に立った。約1000人の聴衆を前に繰り出した復興の訴えは、当時の民主党政権批判にすり替わっていた。

<震災で生活一変>

 東日本大震災で地域の生活環境は一変した。

 東松島市新東名のパート従業員蝦名(えびな)いね子さん(72)は週3、4回、JR仙石線東名駅を利用し、松島町の職場へ通う。駅は約20メートルの高台にあり、長い上り坂と階段が体にこたえる。

 「足腰が弱い高齢者は上れないだろう。冬は雪が降ると滑る」。蝦名さんは不便さを語る。

 東名地区は津波で全域が浸水し、震災前にあった約600世帯は半減した。仙石線は陸前大塚-陸前小野駅間が500~600メートル内陸に移設された。

 区間内の東名、野蒜両駅は丘陵地を切り開いた防災集団移転団地「野蒜ケ丘団地」に移り、商店や郵便局、病院も高台に建設された。蝦名さんのように移転元地で暮らし、車がない高齢者は不便を強いられる。

 住民は約5年前、東名駅がある高台と移転元地をつなぐエレベーターかエスカレーターの設置を市に要望したが、かなわなかった。

 市は平日に運行する有料の乗り合いタクシー事業を秋から土曜日にも試験的に拡大する。利用者数などを見た上で路線バスの運行も検討するという。

 要望当時、新東名区長だった平田ひとみさん(60)は「高台は復興したかもしれないが、移転元地は復旧していない。高齢者も多く、安心して住める町にしてほしい」と願う。

<車は必要不可欠>

 過疎化と高齢化が進む栗原市鶯沢。95歳になる高橋喜四郎さんにとって、マイカーは暮らしの足として欠かせない。

 築館中の校長、細倉鉱山閉山時の町助役を務めた。鶯沢総合支所がある地区中心部から2キロほど離れた自宅に妻令子さん(90)と2人で暮らす。

 週2回、日用品の買い出しのため6キロ先のスーパーに車で出掛ける。病院に通う妻の送迎にも使う。

 県警によると、栗原市の90歳以上の運転免許保有者は121人(18年末現在)。運転免許の全保有者が4倍の仙台市青葉区とほぼ同数だ。

 高齢ドライバーによる事故の報道に接する度に思う。「好きで運転しているわけではないんだが…」

 来年早々、運転免許証の更新を迎えるが降雪期前の自主返納を考えている。返納後は、市が今年4月に導入した乗り合いデマンド交通を利用するつもりだ。

 「いろんな人に手伝ってもらえれば、まあ、何とかなるだろう」。登米市から時々様子を見に来てくれる孫家族の存在も大きい。

 免許返納は決めたが、交通弱者と呼ばれることに違和感がある。地域や個人によって置かれた状況は異なるからだ。

 「心配すべきは、過疎化で急速に衰えている人のつながり。人をつなげるには人がいる」 (石巻総局・氏家清志、若柳支局・古関一雄)