「滝のような雨」 住宅浸水や崖崩れ相次ぐ 五島・対馬

裏山から流れ出た水で浸水した住宅=20日午後2時50分、対馬市厳原町桟原

 大型の台風5号が本県に最接近した20日、五島と対馬両市で1時間に100ミリを超える記録的な大雨となった。気象庁によると、長崎沖では積乱雲が次々と発生し、帯状に連なって雨を降らせ続ける「線状降水帯」が形成された。一時最大で4市2町の計466人が自主避難。「滝のような雨で怖かった」。地域住民は不安な時間を過ごした。
 「みるみるうちに水位が上がり、1時間ほどで膝上を超えてきた」。大雨特別警報が出た対馬市の厳原町桟原地区では、裏山から流れ出た水で住宅が浸水。午前7時すぎに現場に駆けつけた柴田孝文区長(71)は「消防団がポンプで排水しても、住民が土のうを積んでも追いつかなかった」と話した。

 19日夜から大雨となった五島市は20日午前、市内全域に避難指示を出した。市三尾野町の市民体育館に娘や孫らと計4人で避難した大円寺町の女性(79)は「家の裏山の石垣から水がどんどん噴き出した。50年以上、五島に住んでこんなに激しく長く続く雨は初めて」と疲れた表情。
 市などによると、岐宿町楠原で民家裏の斜面が崩れ、敷地内に流れ込んだ土砂などで小屋が倒壊。民家に住む大窄誠一さん(62)は「(自宅にいた)娘は雷のようなドーンという音がしたと話していた。誰にもけががなくてよかった」と話した。岐宿町川原では国道384号沿いの山斜面が高さ約20メートル、幅約40メートルにわたって崩れ、午後から通行止めになった。
 新上五島町では、自宅の雨漏りの修理中に転落した奈良尾地区の80代女性が腰の骨を折り、有川地区の60代女性が腰を打撲するなどした。避難者は最大で町内の157世帯、298人に上った。有川総合文化センターに妻と身を寄せていた原和正さん(88)は「避難するような雨は生まれて初めて」と緊張した様子だった。
 県災害警戒本部によると午後8時半時点で、県内各地では住宅浸水が10棟、道路冠水などが8カ所、崖崩れは38カ所で発生した。
 県警によると同日、長崎市金堀町でも崖が幅約4メートル、高さ約3メートルにわたって崩落し、隣接するアパート敷地内に土砂が流れ込んだ。けが人はいないという。
 交通機関も乱れた。海の便は、九州商船のフェリーと高速船が終日欠航するなどした。空の便ではオリエンタルエアブリッジ(ORC)は、長崎空港と対馬、壱岐、五島などを結ぶ22便が欠航し、予約客575人に影響が出た。

山の斜面が崩れ、土砂が民家の敷地内に流れ込んだ現場=20日午後2時49分、五島市岐宿町楠原

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