月収15万円でも迷わず結婚 「実験」として始めた夫婦生活

前回は、『「しょぼ婚」のすすめ』(KKベストセラーズ)を上梓した経営コンサルタントのえらいてんちょう(えらてん)氏に、お金がなくても結婚ができる「しょぼ婚」について話を聞きました。

今回は、出会って2日でプロポーズ、2週間で入籍した、えらてん氏自身の結婚観を聞いてみました。


結婚を妨げる「精神的ハードル」

――そもそも、なぜ結婚を勧めているのでしょうか?

えらいてんちょうさん(以下同):お金がないから結婚できない、そういったことが言われていると思うんですけど、率直な疑問として、戦争中でも、内戦の環境下でも子供はどんどん生まれています。そういう前提に立つと、少子高齢化というのは、一般的に言われているように、「お金がない」「保育園などの設備がない」などの理由ではないところで進行していると思いました。それは、「精神的なハードル」というよくわからないもの。全体的な不安、先細っていることに対する不安です。

でも、結婚も子供を産んで育てていくのも、もっと簡単なことのはずです。なぜならば、先祖が50代、100代とか、婚姻ないしそれに似たようなものをすることによって子孫が生まれ、その結果、私が生まれているわけです。ならば私だけできないことはないだろう、と。そう考えると、そんなに難しいことではないと思うんです。

この考えは内田樹先生(思想家、神戸女学院大学名誉教授)に影響を受けていますが、大人が幼少の未熟な成員を教えるという機能(教育)と子供を産んで育てるという機能(子育て)は歴史上ずっと続いているものだから、基本的には誰でもできる。だから、もっと簡単なもののはずだ、と。それができなければ人間は絶滅してしまいますから。

――教育と子育ては誰でもできるから、もっと簡単に捉えましょう、と。

おせっかいな人はいるもので、起業でも結婚・子育てでも「大金がかかるから覚悟しろおじさん(おばさんでも可)」が登場します。そういう人は、「子育てには総額2,000万円が必要だ、覚悟しろ」といいます。それについては前回話したとおりで、「2,000万円分の何か」があればいいんです。

そもそも、どこまで親が子の面倒を見るのか、というのも社会的通念でしかありません。私は大学の学費は自分で出さざるを得ませんでした。でも、18歳にもなれば、お金はいくらかは稼ぐことができます。

――結婚には全く迷いはありませんでしたか?

僕も妻も出会った時に結婚したくて、「実験してみたい」と思っていました。当時、妻は仕事がとてもしんどかった。だから結婚しようか、となりました。

――出会って2日でプロポーズ、2週間で入籍とのことですが、出会いのきっかけは?

経営していたバーで婚活パーティを主催していたので、そこで出会いました。

――当時の経済状況はいかがでしたか?

月収は15万円くらい。当時は、リサイクルショップとバーの経営、学習塾、語学教室の経営をしていました。決して儲かってはいませんでしたが、儲ける気もありませんでした。これは、前著(『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス))で提唱した「生活の資本化」という考え方によります。

リサイクルショップをやっていると、家具や家電はいくらでも持って来られるのでバーに使ったり、家に持ち帰っていたので家電や家具にかかるお金はゼロ。また、バーの残り物を食べていたので、食費もそんなにお金はかからない。そんな生活を続けていたので、1人が2人になってもあまり支出は変わりませんでした。

「共働き」限定はもったいない

――奥様のお仕事は?

結婚を機に辞めたので、専業主婦です。つくづく、「共働き」の相手しか選ばないというのはもったいないなと思うんです。それは、お互いに独立して生きていける人たちがくっつきました、ということでしょう。自分がいなくても成立するくらいしっかりした人と結婚することになります。

でも、せっかく二人で生きていくなら、どうせなら一人じゃ生きていけない人と結婚したほうが「得」だと思うんです。お互いに独立した人と結婚するのは、私にとってはあまり面白くないな、と。

私の妻の場合は、仕事がとてもつらくて、でも「辞めたら死ぬ」と思っていたんですけど、僕はその状況をどうにかできる立場にいました。そういった人を自分が頑張ることで生きる、と変えることは価値があると思うんです。そういう考えをしているので、専業主婦だからいや、というのはもったいないと思います。

――家庭を養っていくことに対して不安があるのだと思います。

そもそも収入がある時期なんて、人生でいえば一部の期間です。もちろん子供の時期は年収ゼロ。多くの人は老後もゼロになる。少し前に話題になりましたが、「税金泥棒」じゃない期間のほうが特殊ですよ。

自分がたまたま健康で、たまたま社会の恩恵を受けて稼げているお金を、「結婚して半分になるのはいやだ」と言って、食べられない人を助けない、子供もつくらない……とみんなが考えると、社会は持続しないですからね。

――社会のことよりも、自分のことで精いっぱいなのではないでしょうか。

自分の存在をどれだけ重く考えているのか、ということになるでしょうか。私は自分のことを、脈々と続く大きな流れの中の“小さな存在”としか考えていません。長い歴史や文化、風土の中で生きています。ちやほやされるとか、美味しいものを食べるとかはそこまで大事ではないと思っています。

はっきり言えるのは、私にとっては自分の命よりも息子や娘の命のほうが大事ということ。こう思えるのも幸せだと思っています。

――最後に、結婚を考えている人にアドバイスをお願いします。

なかなか決めるのが難しいという声を聞きますが、熟慮を重ねて結婚するということじたいが無理なこと。最終的に見極めてから結婚するなんてできません。むしろ、結婚してから自分が望むように誘導していくことが求められます。お互いに自分にとって譲れないものがあると思うんですけど、先に約束するなんて無理なんですよ。

「年収〇〇〇万円」というのも、何かあれば一瞬で消し飛びます。数字と結婚するわけではありませんから。

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<著者>
えらいてんちょう
1990年12月30日生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
バーや塾の起業の経験から経営コンサルタント、YouTuber、著作家、投資家として活動中。2015年10月にリサイクルショップを開店し、その後、知人が廃業させる予定だった学習塾を受け継ぎ軌道に乗せる。2017年には地元・池袋でイベントバー「エデン」を開店させ、事業を拡大。その「エデン」が若者の間で人気を呼び、日本全国で10店、海外に2店(バンコクと中東)のフランチャイズ支店を展開。各地で話題となっている。昨年12月には初著書『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)を発売し、ベストセラーに。朝日新聞ほか多くのニュースメディアで取り上げられたことで幅広く支持されている。本書のほか『ビジネスで勝つネットゲリラ戦術詳説』『静止力 地元の名士になりなさい』と合わせて3冊を同時刊行YouTube「えらてんチャンネル」のチャンネル登録者数は約14万人(2019年6月現在)。

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