今後手取りが減る可能性も…「住宅購入の適正価格が知りたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、マイホームの購入を検討している共働き主婦。今後収入が減るかもしれない中で、今ある貯蓄や家計状況を考えると、いくらの物件が妥当か知りたいといいます。マネーフォワードから生まれたお金の相談窓口『mirai talk』のFPがお答えします。

夫が定年まであと20年。それまでに住宅ローンを払い終える前提で住宅購入を考えています。ただ、晩婚で貯蓄が少ない上に、今後、働き方改革の影響で夫の残業が減り、最大10万円ほど月収が減るかもしれません。また、第二子を授かりたいことを考えると、私が時短勤務になるため、さらに収入が3万円程度減ることも考えられます。

そんな状況を考慮すると、貯蓄から700万円を頭金にまわし、住宅購入価格は諸経費込みで2500万円(ボーナス払いなし、別途管理費・修繕費として3万円を想定)までが妥当ではと考えています。都内に通勤していますが、上記の金額では通勤時間のかかる郊外に住むしかないでしょうか。老後資金や学費の貯蓄をしながら住宅ローンを払うことになりますが、この住宅購入価格の目安がもう少し上がれば選択肢も広がります。私たち夫婦にとって適正な住宅購入価格を教えていただけないでしょうか。
※両家親は離れた土地に住んでおり、住宅購入の援助は見込めません。

〈相談者プロフィール〉
・女性、36歳、既婚(夫:40歳、会社員)、子供1人(0歳)
・職業:会社員
・居住形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:45万円
(夫:30万円、妻:15万円)
・年間の手取りボーナス額:250万円
・毎月の世帯の支出目安:28.5万円

【現在の資産状況】
・毎月の貯蓄額:16.5万円
・現在の貯蓄総額:1400万円
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:なし

【支出の内訳】
・住居費:11.1万円(賃貸)
・保険:1万円
・教育費:3.5万円(保育園代)
・通信費:1万円
・車両費:1.8万円
・食費:3.1万円
・水道光熱費:1.5万円
・お小遣い:4万円
・その他:1.5万円


FP:ご相談ありがとうございます。miraitalkファイナンシャルプランナーの宮城です。今後減収の見込みがある中で、マイホームを購入したいということですね。現在の貯蓄や今後の支出を見比べて、住宅購入の適正価格はいくら程度なのか考えてみましょう。

減収に耐えられる家計ではあるけど、「楽しみ」も確保して

相談者さんは今後、最大13万円ほどの減収が見込まれるかもしれないということです。「晩婚で貯蓄が少ない」ということですが、現状を見ると、きちんと“貯める家計”を作ることができているように感じます。

今後、第二子を授かりますとさらに日用品や食費などが多くかかるかと思いますが、もし本当に減収したとしても、家計は黒字でいけると思います。13万円の減収に加えて、第二子の誕生によって毎月の貯蓄額が仮に1万円減ったとしても、貯蓄可能額は月2万5000円ほど。これが少なくて心配だと感じるようでしたら、ボーナスから計画的に蓄えに回すようにしていくと良いと思います。

また一方で、少し心配に思うことがあります。それは、現状よく節約されていますが、もし無理をした節約であれば、今後この状況が続かなくなるのではないかということです。

お金を貯めるための節約は大切ですが、生活する上では楽しみもきちんと持っていてほしいと思います。食べるものはある程度しっかり食べ、楽しみにもある程度お金を使う。逆に無駄だと思える部分はしっかり節約するなど、支出にメリハリを持ち、楽しく暮らせるようにお金を使っていただけるとよいだろうと思います。

生活費7.5ヵ月分を確保、教育費は児童手当を活用して

今の貯蓄額は1400万円。がんばっていらっしゃると思います。

貯蓄の必要額は、日々の生活費にバッファを持たせた生活費の1.5ヵ月分と、万が一の生活に備えた貯蓄として最低でも6ヵ月分、合計7.5ヵ月分を最低限用意できれば、増やす貯蓄として運用などにまわしてよいという基本的な考え方があります。相談者様に必要な貯蓄額は約220万円だと思いますので、残りの1180万円はマイホーム資金、教育資金、老後資金と考えてよいと思います。

お子さんについては、児童手当を貯めていくと、生まれた月により少し差は出ますが、約200万円ほど貯めることができます。これに貯蓄を合わせて、大学資金として500万円を準備できると困らなくてよいでしょう。

今後減収すると仮定すると、毎月の貯蓄可能額は約2万円~2.5万円ほど。2万円を単純に貯蓄していくと20年で480万円です。これをもし、3%の利回りで運用できたとすると、655万円程にすることが可能になります。

ご主人や奥様の退職金が見込めるのか、見込めるのなら不足する老後資金はどのくらいの金額になるのかにより、自分で準備すべき老後資金額は異なりますが、もし、お二人合わせて退職金が2500万円程になるのであれば、生活の仕方によっては、今ある貯蓄を老後資金に回さなくとも、今後十分準備できると思えます。

そう考えていくと、住宅購入については頭金をもう2~300万円増やすことも、検討してもよいのではないかと思います。

毎月の賃料と同程度ならOK?理想的な物件価格は…

物件についてですが、現状を維持できることを考えると修繕積立金や管理費などを含めて、毎月の支払いが今と同程度になるものであれば問題ないだろうと考えます。

総額11万円ほどを毎月住居費として支払うとすると、ローン自体の返済が元利均等で毎月8万円、ボーナス払いなしの場合は1720万円ほど借りることができます(金利は、頭金を入れた場合のフラット20を参考にし、1.12%で計算)。同条件で9万円の返済とすると、1930万円程です。これらはご主人が60歳になるまでの20年間借りた場合での試算です。

相談者様の物件購入可能価格の見込みはおおむね間違ってはいないと言えます。頭金を700万円とすると、2400万円~2600万円ほどが妥当です。ただ、前述しましたように、将来への資金繰りを考えた上で頭金を増やすのであれば、2900万円程度まで物件の価格を上げることができると思います。

また新規物件だけにこだわらず、価格を落として中古物件を買った後でリノベーションをするなど、自分たちの住みよい環境を作ることが可能だと思います。中古となれば、購入後の耐久性なども気になり、修繕費なども見込んでおく必要もありますでしょうが、そこは視野を広げ、ご自分たちの希望に合うものを探していただけるとよいと思います。

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