社説(7/21):参院選自公勝利/おごらず底流の声を聞こう

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 年金不安、消費税といった暮らしのテーマに事欠かなかった参院選で、安倍晋三首相の率いる自民党と公明党の連立与党が、政権党の権力基盤を背景に手堅く勝利した。

 老後資金2000万円問題をはじめ、政府の社会保障政策には信頼を置けないけれど、野党も具体的なビジョンを示し切れなかったとみて、消極的な選択をしたと選挙結果からは読み取れる。

 政治の安定を継続し、強い経済で所得と雇用を増やすと訴えた与党の選挙戦略が奏功したと言える。

 他方で、安倍自民党が信任を得たとみるのは早計だろう。行き場を失った批判票の多くが棄権に回ったのは否定できず、投票率が低調だったことにも表れている。

 おおかた委任を受けたと錯覚し、数におごるような強引な振る舞いをすれば、今度こそ消極的な支持者はきびすを返すと念ずるべきだ。

 野党は立憲民主が伸びたものの、「自民1強」からこぼれ落ちた生活者の民意をすくい取れたとは言い難い。理念に頼るスタイルの見直しを迫られる。弱点の経済政策を練り上げる必要があろう。

 過去の国政選挙で、自民が今回ほど憲法改正を争点としたことはなかった。安倍首相は選挙後の勢力図を踏まえ、野党勢力を巻き込んで多数派形成を急ぐとみられる。

 しかし、前回の参院選で改憲勢力が3分の2を超え、衆院ともに発議に必要な数を得た場面でさえ、この3年間、さっぱり進まなかった。国民の関心が低く、与野党ともに腰の定まらないことがある。 加えて首相の前のめりな姿勢を問う声は大きい。国家の背骨である憲法論議には慎重さが求められる。憲法の前になすべき課題は山ほどある。 選挙の焦点は全国に32ある1人区の行方だった。全体で自民が制したとはいえ、東北では6選挙区のうち岩手、宮城、秋田、山形で野党統一候補が勝利した。

 輸出産業がひしめき、円安の恩恵を受ける関東以西の工業地帯に比べ、東北の有権者は「地方にまで及んでいない」と中央偏重の政策に疑いの目を向けている。株高など与党が言うほどの実感はない。

 農業政策への不信も影を落とす。8月には米国との貿易交渉が再開され、農産物輸入を押し付けてくるとの見方は根強い。前回選挙で示された環太平洋連携協定(TPP)に対する反発が、今も底流で渦巻いているのは確かだ。

 出口調査によると、宮城では「支持なし層」の3分の2が野党候補に投票している。秋田では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」問題が影響した。出直しを求めた意味は重い。

 3年に1度の参院選は「権力をチェックし、戒める機会」とされる。一連の問題発言など緊張感のなさへの怒り、東北からの厳しいシグナルを軽視してはならない。