エンタメは生存に必須ではない。それでも人生に感動を届ける男たちがいた『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』

岡田 篤宜

©株式会社メディアドゥ

あなたにとって“エンターテインメント”は生きていくのに必要ですか?

こんな問いを、僕はしばしば耳にします。

衣食住が絡む産業に比べて、たとえなくても生死に問題ないし、トヨタみたいな大企業がいくつもある業種なんかと比べて市場規模も圧倒的に小さい。

そんな、生きていくために必須とされないものを作り続けて、本当に意味が、価値があるのだろうか?

エンタメ業界で一生懸命働いている人ならば、そんな疑問を抱いたこともあるのではないでしょうか?

僕は、とある大手出版社でマンガ編集をしている人と話していました。

ヒット作も持ってるし、キャリアも着々と積んでいる中堅編集者の方が、お酒を飲みながらため息混じりにこう言うのです。

おれらの仕事は生きるのには必要ない仕事だ、と。

はじめて聞いたとき、僕はショックでした。

僕自身はマンガやアニメ、ゲームから本当に多くの勇気をもらってきたし、今となっては自分という人間を構成するのに欠かせないピースとなっています。

まるで、それを否定されたような気持ちになったからです。

でも、考えてみると確かにそうなのです。

僕らはエンタメがなくたって、生きてはいけるのです。

毎日のご飯と、着る服と、落ち着いて寝られる家があれば、たいていのことはなんとかなってしまいます。

エンタメがなくても人間は生きていける――それは残念ながらも、事実なのです。

ゲームのない人生に耐えられるか?

生きるために必須とされてないゲーム業界であっても、文字通り命を削って作り続けている人たちがいます。

なぜ、そんなことをするのか。

どうしてそこまでがんばれるのか。

このマンガを読めば、そのヒントにたどり着けるような気がしています。

今回のレビューは、ゲーム業界でFFやMOTHER、ぷよぷよ、など今なお愛され続ける作品を生み出した男たちの知られざる苦悩と開発秘話を描いた『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』です。

1980~90年代、ゲーム業界は「青春期」だった。そんな時代に大奮闘したゲームクリエイターたちの熱くて、若くて、行き過ぎた思い出を尋ねたい──国民的ヒット作を生み出した数々の有名ゲームクリエイターに取材。『うつヌケ』『ペンと箸』に続く、「白」田中圭一が開発秘話に迫ったレポート漫画!

©Keiichi Tanaka 2019

まだ見ぬ感動を届けたかった男たち

その昔、ゲームといえばゲームセンターに行って遊ぶものでした。

インベーダーゲームが日本で爆発的な人気を得たことを機に、多くの人たちがゲームの持つ可能性に気づきました。

時を経るにつれて、多くのゲームが開発されるようになり、いわゆるアーケードゲームが並ぶ「ゲームセンター」が誕生します。

当時の子どもたちは連日のごとくゲームセンターに通い、時間がたつのも忘れてゲームに熱中していたそうです。

『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』では、まさに、そういう子ども時代を過ごしてきた人たちが登場します。

自分が受けた感動を再現したくて、まだ世にない物語や感動を生み出したくて、ゲーム作りに没頭したことが各エピソードからうかがえます。

©Keiichi Tanaka 2019

登場する人たちは40代後半~60代くらい。当然、彼らがゲーム作りを始めた頃は、今よりも環境が整っていなくて苦労だらけの時代でした。

©Keiichi Tanaka 2019

それでも協力して、不便や苦難を乗り越えて制作していく過程には、ゲームを作ったことのない私でも、十分すぎるほど共感できる感動がありました。

確かにゲームは、生きるうえで必要ないかもしれない……。

だけどこのマンガを読んで確かにこう感じました。

「彼らが歩んできた人生には間違いなくゲームは必要で、大切で、かげがえのないものだったんだ」と。

彼らのその気持ちと飽くなき情熱があったからこそ、現在、僕や世界中のファンが楽しめているのです。

ゲームから感動を受けた人たちが、制作の過程で多くのコミュニケーションを取り、お互いに影響を与え合って、ひとつひとつのゲームを完成させては世に送り出す……。

そこには計り知れない熱量と汗の物語がありました。

ゲームが好きで、今なおゲームから感動や生きる力をもらっているあなたに、ぜひこの作品を読んで知ってほしいです。

あなたを感動させ、楽しませてくれているものは、本当は何か?

本作を読めば、その答えに行き着くでしょう。

若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春

著者:田中 圭一

出版社:KADOKAWA

販売日:2019-03-28