宮迫さんと亮さんの下克上に世間が涙する中、私がぜんぜん納得出来ない重要なポイント|春山有子

画像は宮迫博之氏ツイッターより

宮迫博之さんの「勝手な解釈で思い込んで」、金銭授受がなかったと嘘をついたことからはじまった一連の吉本興業騒動が、さらなる盛り上がりを見せ話題となっています。

契約解除となった翌日の7月20日、自身らでセッティングした記者会見はまるで、小さき者が巨悪に立ち向かう者そのもので、『サラリーマン金太郎』やTBS日曜夜9時ドラマが好きな視聴者層の胸に、たいそう響いたはずです。SNS上も湿っぽいコメントで溢れかえっています。

「少なくとも宮迫と亮は悲痛な覚悟で会見をしたと思う」
「宮迫さん、亮さんのやつれた姿で真摯に真実を話そうとする姿勢が伝わった会見でした」
「泣きながら一生懸命話してる亮くんの言葉が突き刺さる。稀に見る、心に刺さる、心から応援したくなる記者会見です」

確かに、会見に同席した田村亮さんの涙は、胸を打つものがありました。

その流れで決まったのが、吉本所属の松本人志さんが出演する7月21日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)の緊急生放送。

松本さんの熱き思いや、特に共演者の東野幸治さんの、仲間たちを想っての意外な涙目は印象的でした。この日の視聴率は平均16.7%、瞬間最高視は19.4%を記録し、国民的関心が集まっていることがうかがえます。

ですが……。

「え!?」と思った瞬間、なかったですか? 筆者はありました。進行を務めた佐々木恭子アナが、「番組では吉本興業の岡本社長に取材しました」とVTRへ誘導すると。画面いっぱいに出てきた岡本社長は、抑揚のない声でこう言います。

「このたびは弊社の問題につきまして、大変迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」

そうした謝罪を、そのつど頭を下げながら、詐欺被害者、ファン、関係者、にそれぞれ謝罪し、

「つきましては、明日、私の方から会見を開かせていただいて、ご説明をさせていただければと思います」

と、頭を下げながら締めました。松本さんのお膳立て感がすごすぎて、すぐに『サンデージャポン』(TBS系)にチャンネルを切り替えはのは言うまでもありません。

『サンジャポ』では、デーブ・スペクターさんが田村さんの会見での発言、「僕がすごく不信に思ったのが『在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本が株主やから大丈夫やからと』言われました」に対し、

「あってはいけないんです。10%持ってる局もあるんですよ。あと6%、8%。これこそ独禁法ですよ。だってキャスティングしてるから。トップダウンでキャスティング多いんですよ。だからなあなあ関係になるから株、すぐ手放すべきだと思うんですよ。安全距離を置かないと駄目だと思うんですよ」

と、真っ当に言及。TBS日曜夜9時ドラマ的展開に違和感を覚えていた視聴者は、さぞ安心したことでしょう。

さて、7月22日のワイドショーも同会見一色。特に、吉本所属芸人の加藤浩次さんと近藤春菜さん、山里亮太さんが出演する『スッキリ!』(日本テレビ系)は、大幅に尺を割き取り上げました。なかでも固唾を飲んで見守ったのが、加藤さんの発言。

「(会長の)大崎さんと(社長の)岡本さんを怖がっている。この体制が続くなら俺は辞める。この取締役が変わらないなら辞める。経営陣が変わらないなら俺は辞める」

と、真に迫る様子で吠え、SNS上は、

「加藤さんの意見は泣けた。自分も覚悟を持って発言してる」
「加藤浩次好感度株がストップ高つけてる。そりゃ松本のあれは違和感あったわ」
「加藤浩次が出馬したら絶対投票する」

との賞賛で溢れかえりました。
加藤浩次さんや東野幸治さんなど吉本所属の芸人の株はあがり、視聴者は「巨悪に立ち向かう白熱した人間ドラマ」を生で見せてもらって感動と興奮をもらい、テレビ局は視聴率でウハウハに。そして本来責任を取るべき吉本上層部が、やっと矢面に立ちそうな、いま。

前出の『サンデージャポン』で、爆笑問題の太田光さんのこんなコメントが、なるほどなあと腑に落ちるのです。

「本当に芸人にとって一番つらいのは舞台を奪われるってことなんですよ。客前に立てなくなるっていうのが何よりつらい。会見が彼らにとっては舞台だったと思う。それはお客さんの前で自分たちの言葉で話してっていうのは、みんなお笑い芸人はそれが欲しくて芸人やってるわけで」

「テープ回してないかって言ってたけど、昨日の宮迫と亮のしゃべりっていうのは、見事に再現できちゃうんですよ、芸人って。舞台にさえ立てれば自分は表現できるって思ってるから、テープなんかいらないんですよ。テープ以上のことが再現できちゃうから。だからあれは見事なすべらない話だったと俺は思うし、亮があんなにしゃべれるって知らなかった。ただちょっと気になったのが宮迫がマイクをちょっと回してた」

一方その頃、舞台がテレビにはない、非吉本興業のザブングルにはーー。

「吉本問題で思うのは、きちんとペナルティを受けているザブングルが今の所正直者が馬鹿を見るになってる気がするなぁ」
「ザブングルの事務所がいちばんまともだったのは周知の事実」
「宮迫の会見、そもそも一般的な善悪の話から逸れて、会社と社員の労働環境的な話にすり替わってるし、コメントする芸能人もみんな雇われてる立場で宮迫の肩持つ構図になってるから、えっ? って思う。この件の対応としてはザブングルとナベプロの対応が一番分かりやすくて良かったな」

蚊帳の外すぎて言及は少ないながらも、彼らを意識している視聴者もいました。よかったですね!

刻一刻と戦況がかわるなか、現時点ではこんな報道があるようです。

<宮迫博之、田村亮、吉本興業と急転和解へ…松本人志が仲裁>(「スポーツ報知」7月22日配信)

こんなとき、『サラリーマン金太郎』の金ちゃんなら、どうするのでしょうか。恩義のあるアニキの顔を立てて和解し、社内改革を推し進める中心人物となるのか。

それとも、「アニキ、すんません! アニキには一生恩を返していきます。でも、俺にだって曲げられない信念がある。裸一貫、やらせてくれ!」と唾を飛ばし、次のページをめくると、現場作業員として炎天下のなか汗を拭う金ちゃんのドアップ。からの、「おい、そろそろ戻ってきてくれるか?」と、小綺麗なスーツで現れるアニキ。「いや、俺はこっから自力で這い上がりますから」と爽やかに笑うと、「おーい金太郎! なに油売ってんだよ!」と遠くから聞こえる現場監督の声。金ちゃんは「じゃあ、そういうことですんで。監督、いま行きますから!」と、威勢良く作業に戻るのであった。ーー第一部・完。となるのか。

宮ちゃんたちの動向から、今後も目が離せそうにありません。(文◎春山有子)

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