日本で売っていない日産のカッコいいセダン 3選

日産 新型スカイライン ボディカラー:カーマインレッド│グレード:HYBRID GT

「セダン復権ののろし」を上げた新型スカイライン

2019年7月16日、日産ブランドとVモーショングリル、最先端の運転支援技術「プロパイロット2.0」を採用した日産 新型スカイラインが発表された。

今ではミニバンやSUV、軽自動車が新車販売の中心車種になっており、国産メーカーのセダンは全盛期に比べて大幅に販売台数を下げている。そんな中、大幅マイナーチェンジで商品力を向上した新型スカイラインは、「セダン、そしてスカイラインここにあり」という“復権ののろし”を上げた注目のモデルだ。

しかし、トヨタ クラウンなど売れている車種以外で見ると、国産セダンの影が薄いことに変わりはなく、現在日産で販売されているセダンはシルフィ、ティアナ、スカイライン、フーガ、シーマのみで、いずれも苦戦している状況だ。

ところが、海外で販売されている車種に目を向けると、北米市場を中心に「なぜ日本で売らないの?」と思わずにはいられない、“カッコいいセダン”が長年にわたって販売されてきた。そこで今回は、そんな「日本で売ってない日産のカッコいいセダン」から、現行型に絞って3つ選んでみることにした。

スポーティなフォルムが魅力のマキシマは“4ドアスポーツカー”

日産 マキシマ
日産 マキシマ
日産 マキシマ

まずは北米市場で大人気のセダン、「マキシマ」をご紹介しよう。現行型は2015年に登場。インフィニティブランドを除いた北米日産の最上位車種に相応しい性能と装備を持ち、VQ型 3.5リッター V6エンジンは300HPを誇る。

「4ドアのスポーツカー」を銘打ち、その名の通りの流れるようなルーフラインと優れたハンドリングが特徴だ。北米でライバル関係にあるトヨタ カムリが日本でも販売好調と聞くと、日産の「カッコいいセダン」の筆頭、マキシマも日本で販売されたらいいな、と思う。

なお初代マキシマは、1981年登場の北米向け車種「ダットサン810マキシマ」。910型ブルーバードのノーズを伸ばし、L24型 直6を搭載した。1984年に2代目に。日本でも「ブルーバード・マキシマ」として発売を開始している。FFの採用、V6エンジン搭載がトピックだった。

1988年にはブルーバード派生版から脱却し、3ナンバーの専用ボディで出現。当時日本で活躍していたアメリカ人タレント、ケント・デリカット氏、ケント・ギルバート氏、チャック・ウィルソン氏、デーブ・スペクター氏をCMに採用して話題を呼んだ。

1994年からは日本のセフィーロ(2代目)と北米のマキシマ(3代目)が兄弟車に。その関係が3代続いた後、6代目以降現行型の8代目までは、マキシマはティアナとプラットフォームを共有する間柄になっている。

日本で放置気味のシルフィの新型は、中国では俄然スポーティに

日産 新型「シルフィ」を世界初公開 上海モーターショー2019
日産 新型「シルフィ」を世界初公開 上海モーターショー2019
日産 新型セダンのラインアップをグローバルに充実 日産シルフィ(中国市場)内装

続いては新型シルフィである。

2019年4月に中国の上海国際モーターショー2019で発表された

新しい日産のセダンで、シルフィとしては4代目を名乗ることになる。

見所はやはりエクステリア。Vモーショングリルを持つフロントマスクや、フローティングルーフ、ブーメラン型リアランプなどは昨今の日産デザインを踏襲する。ロー&ワイドなフォルムはスポーティで、それでいて居住性も良さそう。写真で見る限りでは、インテリアも高い質感が感じられる。

パルサー(の欧州版アルメーラ)をベースに高級感をアップさせ、ブルーバードの名を継いだ「ブルーバードシルフィ」として2000年に登場したのがシルフィの始まりだ。

現行型の3代目シルフィは2012年に登場、海外モデルにはスポーティバージョンが存在したり、マイナーチェンジでVモーショングリルを得たり、電気自動車版をラインナップするなど販売に力が注がれているが、日本国内向けは特別仕様を追加した以外大きな変更もなく、いわば「放置状態」。そもそもが高年齢層向けというコンセプトもあり、佳作ながらどうしても地味なセダンの印象が拭えない。

その現行型シルフィもモデル末期だと考えられ、販売台数は低空飛行を続けていることからも、後継に関するアクションはきっとあるに違いない。

となると、俄然4代目シルフィの日本投入に期待が高まる。その際は、すっかり落ち着いたイメージがついたシルフィではなく、今改めて聞くとむしろ新鮮で若々しい「ブルーバード」という名前を与えてはどうだろう。

なお、中国市場では他に「ラニア」という、直接的にブルーバードの市場を継ぐセダンもある。

サニーがカッコよく進化したヴァーサ

日産 ヴァーサ
日産 ヴァーサ
日産 ヴァーサ

かつて日産を、いや日本を代表するファミリーカーだったサニー。残念ながら2004年にその名前を終わらせ、後をティーダのセダンである「ティーダ・ラティオ」が継いだ。そのティーダ・ラティオも2012年にフルモデルチェンジ。ティーダがノートに統合されたことで、車名が単なる「ラティオ」に、そして2代目ラティオ自体も、マーチベースのセダンとなった。

ティーダ・ラティオ&ラティオは北米で「ヴァーサ(VERSA)」を、中国やインドでは「サニー」を名乗るなど、ワールドワイドに販売が行われていたが、2019年4月には3代目が北米でデビュー。2020年モデルとして販売開始を控えている。

この3代目ラティオ、これまでの「実用性重視」のようなビッグキャビンの堅実なセダンスタイルから一転、上級モデルの「アルティマ」(かつてはブルーバード、現在はティアナの北米版)やマキシマのようなスポーティなフォルムを得ている。「キックアップCピラー」や「フローティングルーフ」はまさにマキシマの意匠を受け継いだもの。搭載するエンジンは最高出力122HPを発生する1.6リッター直4だ。

2代目ラティオの日本での販売は、なんと2016年に終了しているため(ご存知でしたか?)、現在の日産にはサニーセダンに相当する車種がいない。この状況からも、このクラスのセダンは何らかのカタチで投入されるのではないだろうか。そこで3代目ヴァーサを日本で販売する可能性も否定できない。続報を大いに期待したい。その際の名前にも注目だ。

ビッグネームの復活と魅力あるモデルの投入に期待

「セダンが売れない」と言われる日本市場。でもその理由の一端に「もっと魅力的なセダンがあればいいのに」というユーザーの要望もあるはずだ。

かつてセダンが販売のメインだった時代と現在を手放しで比べることはできないが、サニーやブルーバード、5ナンバーサイズ時代のスカイラインなど、「ちょうどいい」モデルが減っていることや、メーカーが「あまりセダンを積極的に売る気がない」のを、ユーザーも敏感に感じ取っていることもあるだろう。

筆者も今、セダンを2台持つセダン好きだが、落ち着いた室内空間、荷室が隔離された設計など、セダンのメリットは実は多い。スカイラインのイメージが今回のマイナーチェンジで大きく回復したように、海外向けモデルにサニーや、ブルーバードのような懐かしの「ビッグネーム」を与えて販売すれば、セダンが欲しいと潜在的に思っているユーザー、潜在的な日産ファンにも響くのではないだろうか。

[筆者:遠藤 イヅル/撮影:MOTA編集部・日産]

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