吉本興業 岡本昭彦社長の5時間を超す記者会見で真の出口は見えたのか

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前代未聞の5時間20分にわたる記者会見となった。記者からの挙手がなくなるまで、会見を辞めない。そこには、吉本興業の決死の覚悟があった――。

雨上がり決死隊・宮迫博之とロンドンブーツ1号2号・田村亮による涙の記者会見から2日後、都内で、岡本昭彦社長がようやく口を開いた。冒頭では、所属タレントに辛い思いをさせて、記者会見まで開かせてしまったことを、沈痛な面持ちで詫びて、深礼。すでにマネージメント契約の解消を発表していた宮迫に、処分撤回を提案した。謹慎中の亮にかんしても、「いつの日か戻ってくる日があるのなら、全力でサポートしたい」と続けた。

この時点で、宮迫&亮にその旨は伝わっていない。2人はおそらく、この会見が生放送されている地上波の情報番組、あるいはノーカットで配信されているネット番組で知ることになっただろう。

亮は、みずからが開いた20日の会見で、自身も宮迫同様、契約解消となっている前提で話を進めていたが、吉本はそれを認めていなかった。吉本から切られたのは、事件主犯格の元カラテカ・入江慎也さんと宮迫だけ。亮はほかの芸人11名と同じく、謹慎中の身である。

岡本社長は、自身と大崎洋会長へのペナルティーとして、50%の減俸を1年間続けることを明かした。辞任にかんしては、「自分自身が変わっていくことでご評価いただけたら」と否定。まだ芸人へのヒアリング、事実調査、被害者家族への詫び、納税ほか、遂行しきれていないことが山積なのも、辞任できない理由だ。

20日の会見では、宮迫の真摯な言葉、亮の悲痛な心の叫びがあまりにも痛々しかったため、仲間芸人のみならず、世間のほとんどが味方した。岡本社長は、一夜にして極悪非道なパワハラ社長のイメージが付いてしまった。会見では、「もし彼らの気持ちが受け入れてもらえるものであれば……」と言葉を詰まらせると、「すいません」とあふれる涙をハンカチでぬぐった。目を真っ赤に腫らせると、「同じテーブルで向かいあって、彼らの思いに耳を傾け、最善の解決策を1から考えてまいりたいと思います」と、手で涙を拭いた。

今回の件では、すでに多くの吉本芸人が番組やラジオ、ツイッター、配信番組で声をあげている。岡本社長は、「明石家さんまさんに、『芸人のことを考えてやってほしい。もちろん会社の立場もあるだろうけど、もし(宮迫の契約解消を)解除するんだったら、俺が手伝ってやってもいい』と言われた」ことを明かした。

さらに、20代の頃にマネージャーを務めていたダウンタウンの松本人志からは、「『ちょっと間違いを犯した子たちをサポートできるような環境を作って。それは俺も手伝う』ということを、おっしゃっていただきました」と、涙をこらえながら、声を振り絞った。

吉本興業としては今後、(1)コンプライアンスの徹底(2)芸人タレントファーストで物事を考える、の2つを徹底していく。裏を返せば、“岡本政権”ではこの2つが成し得ていなかったということだ。それを証拠に、宮迫&亮の会見で浮き彫りになったのは、岡本社長の過ぎる独裁性、横暴な言動、恫喝と思える高圧さだった。

宮迫は会見で、関係者が去った部屋で岡本社長から開口一番、「おまえら、(録音)テープ回してないやろな」と言われたと証言した。これについては、「そのミーティングがなかなか進んでいなかったので、しゃべりづらいのか、環境が違うのか、冗談で『テープ、撮ってんちゃうの~』と言ったら、受け入れられず」と弁明。彼の中では“冗談”だったようだ。

双方の温度差は、それだけではない。

宮迫が訴えた「おまえら全員クビにするぞ!」発言にかんしては、こうだ。「ミーティングで、亮くんは『会見とか金額を言いたい』、宮迫は『それはちょっと』とか話をしていて、反社会的勢力からお金を取られた被害者がおられるということが、そのやりとりを見ていると感じられなかったので、身内というか家族というか、『ええ加減にせえ! 個人がバラバラで言うのやったら、勝手にせえ。それなら全員クビや』と言った」と認めたものの、それはあくまでも身内感覚。発した側、受けた側に大きな隔たりがある。

しかし、岡本社長のなかでは、「圧力をかけたつもりはない」。「父親が息子に『おまえ、勘当や』、『ええかげんにせい』という感じ。相手に伝わっていないということは、僕が思う距離感と彼らの思う距離感にギャップがあった」と猛省した。

会見には、日本テレビの大みそか恒例の“笑ってはいけない”シリーズでおなじみの取締役副社長の藤原寛さん、マネジメント本部東京マネジメントセンター長の中村聡太さん、株式会社よしもとアドミニストレーション広報室長の笠井陽介さん、吉本興業ホールディングス株式会社執行役員法務本部長の小林良太さんも出席。質問に該当する担当者がその都度マイクを握り、答える方式だった。

写真週刊誌『FRIDAY』が報じた、宮迫ら11人の吉本芸人が、高齢者を騙した反社会的組織の凶悪詐欺集団が主催するパーティーに出席して、ギャラを受け取っていた事件。二転三転して、ついに会社トップがすべてを公にしたことで、事態は収束方向に向かうものと思われる。一連によって、吉本芸人による鉄壁の絆が表出した。しかし、経営首脳陣との溝が浮き彫りになった。真の出口はまだ見えない。それが実情だ。

(写真・文責/伊藤雅奈子)