岸恵子が「絶対にやりたい」と戦争ドラマで12年ぶり主演。自身の空襲体験も明かす

NHK総合で8月8日放送の特集ドラマ「マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~」(午後10:00)の試写会が行われ、主演の岸惠子、共演の清原果耶、渡辺美佐子、山口まゆ、伊東四朗が出席した。太平洋戦争の中でも最も凄惨(せいさん)を極めたフィリピン攻防戦の渦中にいた2人の日本人女性を描くもの。今作が12年ぶりの主演作で、ヒロイン・奥田凛子の平成パートを演じた岸は「10年もカメラの前に立っていませんが、シナリオを読んで、これは絶対にやりたいと思いました」と決意の出演だったことを訴えた。

ドラマは、太平洋戦争末期の昭和19年(1944年)に商社のタイピストとしてマニラに赴任した凛子(昭和パートは清原)と日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた通訳の日下部綾(山口、渡辺)が凄惨な戦火を生き抜き、帰国後は2人で写真館を営み、綾が亡くなって凛子ひとりになった平成元年までを描く物語。

久々のドラマ出演となった岸は「現場では撮影方法のあまりの変化にびっくりしてしまいました。私はフィルム時代の女優なので、同じシーンを何回も撮り直すことに驚きました」と戸惑いながらの撮影だったことを明かしつつ、「でも本当に心に染みる作品になりました。私たちの現代パートだけでなく、戦場の中の若い2人もすごくよかった。すごくいいドラマだと思う」と手応えをにじませた。

また、戦時中に空襲を体験した岸は「戦場体験はありませんが、空襲の中を逃げ惑いました。死体に乗っかられて身動きが取れないでいると、兵隊さんがどかしてくれながら『子どもは防空壕に入れ』と言われた。しかし、防空壕の中を見ると爆風の土砂に埋もれてみんな亡くなっていました。地獄でした」と悲惨な光景を目の当たりにしたことを告白。

凛子の写真館に写真材料を卸す田宮蓮司役の伊東も「小学校に入ったばかりの時に東京大空襲に遭いました。家族全員で押し入れの下に掘った防空壕の中に隠れました。爆弾が落ちてくる時の音は今でもまだ覚えている」と鮮明に記憶に残る体験を明かすと、綾の平成パートを演じた渡辺は「終戦記念日近くには、年にわずかでもNHKが戦争ドラマを作ってくださっている。どうか来年も頑張ってほしい」と戦争の悲劇を訴える作品の意義を語っていた。

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