民意の行方・下 <共闘> 反自民の受け皿になれず

投開票から一夜明けた22日朝、道行く有権者に握手で感謝を伝える白川氏=長崎市内

 「政治に興味がない人の関心を高めることができなかった」-。参院選長崎選挙区で落選した国民民主新人の白川鮎美氏(39)は、報道陣の問い掛けに、こう敗因を分析した。
 国民、立憲民主、共産、社民の県内4野党の共同候補として戦い、自民現職の古賀友一郎氏(51)に約3万4千票差まで迫った白川氏。関係者の中には善戦ととらえる向きもあるが、結果的に自民1強体制に疑問を感じる有権者が一定数いながら、野党は受け皿になることはできなかった。
 浮動票の取り込みを狙ったPR戦略は決め手を欠いた。「女性の活躍」を訴え女性票も期待されたが、党の調査では女性の支持率は低く出た。「目算が外れた。どう売り出すべきか」。関係者は頭を抱えたが有効策は見つからなかった。
 知名度不足、政党支持率の低迷-。白川氏の敗因はそれだけではない。一つは、春に統一地方選があったことに加え、中央レベルでの野党各党の思惑もあり、共闘態勢の構築に時間を要したことだ。白川氏の候補者内定は昨年2月だったが、県内4野党による一本化は今年5月末までずれ込んだ。共通政策の合意は公示のわずか約1カ月前。巨大与党と戦うには準備も時間も足りなかった。ある関係者は「時間がない中で目先の票固めに追われ、戦略に俯瞰(ふかん)図がなかった」と分析する。
 もう一つは、共闘の“副作用”。投票日の長崎新聞社の出口調査によると、白川氏は国民、立民、社民の各支持層のそれぞれ9割超、共産支持層の8割超を固めた。野党共闘は「前回参院選以上に前進した」との評価の半面、個々の政策を巡る各党のスタンスの相違から選挙戦で踏み込んだ発言は難しく、白川氏の主張がぼやけた面は否めない。結果、論戦は深まらず、支持は広がりに欠いた。
 今回の参院選。終わってみれば野党は国民と共産が議席を減らした。法律上の政党要件を維持するかが注目された社民は辛うじて条件をクリアしたものの、党の退潮傾向に歯止めはかからない。議席を伸ばした立民も地方での足場固めが急務だ。「与党に立ち向かうには野党が今以上に一枚岩になる必要がある」。そうした声の一方で、野党関係者からは「まずは自分たちの党の政策を明確に打ち出し、自分たちの支持を固め、広げなければ」との危機感も聞こえる。
 落選から一夜明けた22日朝、白川氏は長崎市内の幹線道路沿いに立ち、行き交う通勤客や車に手を振っていた。「3年後の選挙でリベンジする」。21日の敗戦の弁で、突然、次の選挙への意欲を語り出した白川氏。3年後の参院選、そして年内の解散の可能性も指摘される衆院選に、野党はどう臨むのか。今回の共闘は限界だったのか、それとも次へのステップアップだったのか-。その答えはまだ見えない。

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