3-4の最終回、2死無走者。ドラマはここから始まった。諫早農が驚異的な粘りを見せて逆転サヨナラ勝ち。宮原監督は「出来過ぎ。よくやってくれた」と賛辞を惜しまなかった。
試合の流れは悪かった。失策絡みで失点し、打線も五島の2番手を打ちあぐねた。だが、選手たちは諦めなかった。九回2死から主将の奥野が四球で出ると、果敢に二盗を決めた。「自分の判断でいった。どきどきした」（奥野）。これで重圧がかかったのか、連続四球で塁が埋まった。
この局面で打席に立ったのは4番坂本。変化球に食らいつき、左前に飛球が上がった。「落ちてくれ」。その執念が乗り移ったように、白球は左翼手が伸ばしたグラブの先をかすめた。3走奥野に続き、2走頂が生還。互いに譲らなかった熱戦にピリオドを打った。
諫早農のスタンドの横断幕には、こう書いてある。「奇跡を起こせ！諫農旋風」。宮原監督がチームのスローガンに掲げたもので、日々の練習前に唱和してきた。この日のスタメンは全員3年生。集大成となる夏、それをしっかり体現した。
次戦は第1シードの長崎商。厳しい戦いは続くが、チームはトーナメントを勝ち上がるために不可欠な“勢い”を手に入れた。「思い切ってぶつかるだけ」（奥野）、「（2回戦で勝った）瓊浦の選手たちも応援してくれる。ここまで来たら甲子園に」（坂本）。再び奇跡を起こすための準備は整った。
