絶対勝てない!?と言われる下馬評を覆したのは?参院選2019の激戦を振り返る

21日に行われた第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)で、事前の予測を覆して当選した候補、横一線の激戦を制した候補、思わぬ苦戦を強いられた候補、逆に安全圏とされながら落選した候補を、選挙ドットコム編集部がピックアップしてみました。やっぱり選挙は何が起こるかわかりませんね…!

下馬評を覆し維新の新人・おときた氏が逆転勝利 東京選挙区

東京選挙区・5位当選のおときた氏、6位当選のたけみ氏、7位落選の山岸氏

前評判を覆した候補の1番は、東京選挙区で「日本維新の会」公認候補の初議席獲得となったおときた駿氏でしょう。2013年に東京都議選に北区から当選して以来、ネットを駆使して積極的な情報発信に努める「ブロガー議員」として有名に。猪瀬直樹氏、舛添要一氏、小池百合子氏ら歴代の都知事とのやり取りなどが注目を集めたおときた氏にとって今回の参院選は、都議を辞して臨んで敗れた今年4月の東京都北区長選挙に続いての挑戦でした。

音喜多氏は選挙前、「自民党」、「公明党」、「立憲民主党」、「共産党」、そしてネットで注目を集めていた「れいわ新選組」に続く7、8番手で、当選圏外とみられていました。しかし、公示直前に「れいわ新選組」の山本太郎代表が、比例区に転出したことで、可能性が広がります。

選挙中は大阪から日本維新の会の松井一郎代表、吉村洋文代表代行らが度々東京入り。35歳の若さを生かし、おときた氏自身も「山手線一周自転車&チャレンジ」と題した試みで雨の中、比例で同党から立候補していたやながせ裕文氏との「おとやな」コンビで山手線内を自転車で回ってみるなど都内を行脚していました。

終盤もマスコミ各社で行われている情勢調査では、常に7番手という報道。

>> 東京選挙区は混戦模様!?誰が抜け出しているの?波乱は起きるの?下位争いが激化?|注目激戦区の選挙情勢調査から #参院選2019

陣営内のムードは、

「特に正確性の高いJX通信でも、終盤の調査で6番手との差が「まあまあある」とのことで、これはもうダメかと陣営全体に(本人にも)諦めモードが一瞬漂っていたものです。」
事前調査報道と結果の乖離。「番狂わせ」はなぜ起こったのか? おときた駿 ブログ

と本人のブログでも吐露しています。

運命の投票日7/21、選挙区の議席が続々と埋まっていく中、東京選挙区はなかなか当確が打たれません。日付が変わって22日深夜、全選挙区当選74人の最後に、おときた駿氏への当確が打たれました。最終的な結果は武見恵三氏を抜いての5位に。

おときた氏と組んで戦った同じく元都議のやながせ氏は、比例での立候補でしたが、こちらは維新の比例議席数が「5」と決まってからの党内での争いです。最終的な当確が出たのは22日の午前9時になってから。今回の改選となった124議席の最後の1席に滑り込みました。

自民が2議席独占狙うも現職の溝手氏がまさかの落選!!広島選挙区を制したのは?

2019年 第25回参議院選挙

自民党が2候補を擁立し、2議席独占を狙う強気な姿勢が話題になっていた広島では、立憲民主党、国民民主党、社民党の推薦を得て無所属で出馬した現職の森本しんじ氏が、トップ当選を果たしました。前回(2013年 第23回参議院選挙)よりも大きく票を伸ばせたのは、野党統一候補となったこと、所属する国民民主党の玉木雄一郎代表が選挙最後の遊説の場に選ぶなど、野党幹部も相次いで広島入り。支持母体の連合広島も組織を固めたことが大きな要因となりました。

対する自民党は、党本部と県連との対立が当初から懸念されての選挙でした。新人の河井あんり氏には、菅義偉官房長官や二階俊博幹事長ら党幹部らが河井氏の応援のためだけに入るなど党本部が力を注ぎます。

一方、落選となったみぞて顕正氏には党県連所属の国会議員や県議らが応援に回りました。ふたをあけてみると野党の現職・森本氏と自民党の新人・河井氏が当選し、溝手氏が落選という思わぬ結果に終わりました。

溝手氏は前回の選挙(2013年 第23回参議院選挙)では

2013年 第23回参議院選挙

521,794票獲得しており、今回はいわゆる保守分裂、溝手氏を推す県連と河井氏を推す党本部との争いによって、獲得した票は約半分に減り落選。様々な遺恨を残す結果となりました。

敗れた溝手、淡々と語った。「2人出すというのは、やっぱりバカげた話だと。今後の自民党としてしっかり考えなければならない話だろう」

この選挙の結果、今後にどういう影響をもたらすのか。県連関係者は、こう語った。
「当初は一枚岩と信じていた県連や支持団体が分断された影響は計り知れん。今後にも禍根を残すじゃろう」

さらに、厳しくこう言及した。
「もっとダメージが大きいのは岸田さんじゃ。県連のリーダーとして派閥の仲間を守ることもできんかったし、党幹部として2議席独占を果たすこともできんかった。ポスト安倍は遠のいたわい」
引用:仁義なき戦い” 敗者は誰か 特集記事 NHK政治マガジン

 混戦・逆転劇は他の選挙区も

注目の選挙区のひとつだった大阪選挙区は、梅村みずほ氏が抜け出し、日本維新の会が2議席を獲得、自民、公明も議席を守りましたが、共産党の現職が議席を失いました。また、2議席目を国民民主党と立憲民主党の旧民進系の野党勢で争うことになった静岡選挙区では国民民主党の現職・榛葉賀津也氏が当選。

一人区では宮城選挙区での石垣のりこ氏(立憲民主党)、岩手選挙区での横沢高徳氏(無所属)、新潟選挙区の打越さく良氏(無所属)、滋賀選挙区の嘉田由紀子氏(無所属)、大分選挙区の安達澄氏(無所属)ら野党統一候補が激戦の末当選し、自民党は多くの現職が議席を失うことになりました。
また事前の予測通り、当選こそしたものの思わぬ展開だったのは兵庫選挙区(3人区)の自民党、加田裕之氏です。選挙前から選挙中を通じ、安定して優勢とされていましたが、ふたを開けてみると、トップは日本維新の会の現職・清水貴之氏でした。加田氏は2位でさえなく、落選となった立憲民主党と競り合っての3位当選。関西の選挙区では今年4月の統一地方選挙から続く日本維新の会の勢いが窺える形になりました。

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