ERC第5戦:2度のタイトル獲得経験者、イタリアの大ベテラン・バッソが6年ぶり勝利

 WRC世界ラリー選手権への登竜門であると同時に、欧州格式選手権として高いコンペティションレベルを維持するERCヨーロッパ・ラリー選手権の2019年第5戦ラリー・ディ・ローマ・キャピタルが7月19~21日に開催され、ERCで2度のタイトル獲得経験を持つ地元の実力者、ジャンドメニコ・バッソ(シュコダ・ファビアR5)が6年ぶりのERC勝利を飾った。

 首都ローマを舞台に争われるラリー・デ・ローマ・キャピタルも、2017年にERCカレンダー入りして以来、今回が3度目の開催に。イタリア選手権併催の同イベントでは、土曜からのターマック・ステージを舞台とした勝負を前に、金曜午後に市街中心部の歴史的建造物群を巡る恒例のパレードツアーが催され、R5カーがヴェネツィア広場やコロッセオなどをバックに翌日からのバトルを何千人もの大観衆にアピールした。

 迎えた土曜最初の競技区間となる19.46kmのSS1では、まずERC組のニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアR5)がトップタイムをマークして早々にラリーリーダーにおどり出る。

 しかし昨季のERC1王者獲得プライズの一環として、スポーツ・レーシング・テクノロジーズのファビアR5をドライブしたロシア人の若手有望株は、続くSS2のフィニッシュ目前にして、複数のコーナーでブレーキロックアップからワイドランを喫し、最終的に立木にクラッシュ。クルーは無事ながら、ダメージがロールケージにまで及んでいたため、日曜再出走も断念する事態となった。

 代わってこのステージから首位に立ったのがイタリア選手権ドライバーのアンドレア・クルニョラ(シュコダ・ファビアR5)で、SS2、SS3と連続ベストをマーク。しかしSS4で無念のパンクを喫しこのステージ最速を同国の大ベテラン・バッソに譲ると、2006年と2009年のERC王者がその実力を遺憾なく発揮し、レグ1の6ステージを終えて首位でサービスへと戻って来た。

「すべてが順調にいったね。マシンの感触には満足しているし、とてもハッピーな初日になったよ。今晩のサービスでさらに万全のメンテをして、明日に備えるだけだ」と、ローランSRLのシュコダに乗るバッソ。

 この初日を順調に過ごしたバッソ以外、ライバルたちは軒並みトラブルに見舞われる1日となり、バッソのイタリア選手権での競合であり2008年の同選手権、そして同年と2010、2011のERCチャンピオンでもあるルカ・ロセッティ(シトロエンC3 R5/FPF Sport SRL)は、右コーナーイン側の縁石をカットしリム破損によりクラッシュ。総合3位から脱落する波乱に見舞われた。

市街中心部の歴史的建造物群を前に、警察先導で15組に分かれて行われた金曜のパレードラン
SS1最速のニコライ・グリアシンは、続くステージで立木にクラッシュ。プライズでの機会を活かせず終わる
トップタイムはSS4での一度きりながら、安定した走りで首位を堅持したジャンドメニコ・バッソ
今季はシトロエンC3 R5をドライブするエマ・ファルコンは、クラッチトラブルを抱えながらも12位完走

 ERC組でも現王者の“ロシアン・ロケット”ことアレクセイ・ルキヤナク(シトロエンC3 R5/セインテロック・ジュニア・チーム)は、初日総合2位を死守するも「かなり悪い」午前の走りを経て、SS5でパンク、SS6ではブレーキのオーバーヒートに見舞われる困難な1日となった。

 その背後、総合3位の位置にはロセッティの離脱以降、一時はERC選手権首位のウカシュ・ハバイ(シュコダ・ファビアR5/スポーツ・レーシング・テクノロジーズ)がつけるも、彼もクラッシュで戦列を離れると、このイベントから新型フォード・フィエスタR5を持ち込んだオレンジ1 Mスポーツ・ラリー・チームのシモン・カンペデッリが、SS2でのパンクで40秒を失いながらも、総合9番手から3位にまでカムバック。新型モデルながら、レグ2の巻き返しでデビューウインに望みをつなぐ力走を見せた。

 そのカンペデッリがSS7で新型フィエスタ初のERCステージウインを記録して始まったレグ2は、同じくイタリア人のクルニョラが、SS8以降SS16まで驚異の9ステージ連続トップタイムをマーク。前日のパンクから怒涛の巻き返しを図ると、SS13のステージ中盤ではバッソがジャンクションをオーバーシュートし24秒のタイムロス。

 これで2番手ルカヤナクに大きくギャップを詰められるも、約3秒のタイム差を維持してバッソが首位フィニッシュ。約6年ぶりのERC勝利とイタリア選手権でのタイトル争いを優位にする総合優勝を獲得。さらにラリー後には、2位のルカヤナクに1分のタイムペナルティが加算され、無情にも総合4位まで後退してしまうことに。

 代わってカンペデッリが新型フィエスタのデビュー戦で殊勲の2位表彰台。3位にも怒涛のラッシュで全16SS中13ステージでトップタイムを奪ったクルニョラが10番手から奇跡のカムバックを果たし、イタリア人ドライバーがトップ3を独占する結果となった。

 一方、このローマ・ラウンドでERC3戦目を迎えたSTARDの新井大輝(シトロエンC3 R5)は、レグ1を11番手で終えると、翌レグ2もERCレディス・トロフィー勝者のエマ・ファルコン(シトロエンC3 R5)やACCRチェコ・ラリー・チームのヴォイティエフ・スタイ(シュコダ・ファビアR5)らとのバトルを繰り広げ、一時はポジションを上げる走りを披露するが、惜しくもトップ10圏外の総合11位でラリーを終えている。

 続く2019年ERC第6戦は、8月16~18日開催のバウム・チェコ・ラリー・ズリン。チェコの首都プラハから南に300km離れたモラビア南部の大学都市を拠点に、天候により難易度が大きく変化する荒れた高速ターマックでの勝負が繰り広げられる。

ERC、イタリア選手権ともに初登場となった新型フォード・フィエスタR5は、シモン・カンペデッリが2位
イタリア選手権ドライバーのアンドレア・クルニョラが全16SS中13ステージでベストを奪う驚異の走りで3位
「警官の先導と信号機が全部制御された金曜のパレードは圧巻だった」という新井大輝は、11位フィニッシュ
ERC王者のタイムペナルティにより、表彰台はイタリア選手権メンバーが占めることになった

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