50年経っても現役。宇宙飛行士が設置した月面の実験装置は今も使われ続けている

こちらの写真に写っているのは、実験装置を運ぶバズ・オルドリン宇宙飛行士の後ろ姿。撮影したのはニール・アームストロング船長です。

NASAのジェット推進研究所(JPL)は7月24日、アポロ計画で月面に設置された実験装置が今も使われ続けていることを、実験を通して判明した事実とともに紹介しました。

写真でオルドリン氏が右手に持っているのは、レーザー光の反射装置(LR3:Laser Ranging Retro Reflector)です。同様の反射装置はアポロ11号の他にも14号15号で月に運ばれました。装置は電力などのエネルギーを必要としない単純な仕組みなので寿命が長く、アポロ11号の着陸から50年目となる現在でも反射実験に使用されています。

地球から発射したレーザーが月面の装置に反射されて戻ってくるまでの時間を測定すると、地球と月(正確にはレーザーの発射装置と反射装置)の距離を数mmの精度で求めることができます。長年に渡る測定の結果、月は毎年3.8cmずつ地球から遠ざかっていることが判明。反射してきたレーザーの解析結果は、月の内部に融けたコアが存在することも示しています。

また、月や太陽の重力がもたらす潮汐力によって地球では潮の満ち引きが生じますが、月は地球の重力がもたらす潮汐力によって変形しており、反射装置がある場所は毎月15cmずつ上下していることもわかっています。

さらに、反射装置はアインシュタインの重力理論を裏付けるためにも使われています。

アインシュタインの理論では「重力の強さは天体の組成(天体を形成する物質の種類)に依存しない」と仮定しています。もしもこの仮定が誤りであれば、地球と月に働く太陽の重力にも違いが生じ、月の軌道に影響を与えるはずですが、レーザーのデータからは理論の誤りを示す結果は得られていません

つまり、アインシュタインの考えた通り、重力の強さは天体の組成に左右されることはないということが、レーザーの反射実験によって証明できるのです。

なお、NASAでは新世代のレーザー反射装置の開発が進められています。新しい反射装置も50年前に設置されたものと同様に、月の研究やさまざまな理論の裏付けに用いられることになるでしょう。

Image Credit: NASA
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7463
文/松村武宏

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