エルニーニョ終息、“ガチ夏”到来で日本の景気はどうなる?

6月10日発表の気象庁「エルニーニョ監視速報」によると、「今後夏はエルニーニョ現象が続く可能性が高い(70%)」ということでした。「エルニーニョ現象」が発生している夏は、冷夏になりやすい傾向があります。猛暑が続いた昨年とは打って変って、7月上中旬の東京の猛暑日はたった1日でした。

しかし、7月10日発表分では「エルニーニョ現象は終息したとみられる」に判断がにわかに変わりました。7月24日以降、予報によると8月1日まで東京の最高気温は30度を超え、真夏日が続くもようです。

遅ればせながら、今夏は冷夏になる可能性はなくなったのではないでしょうか。夏らしい夏が到来するとなると、日本の景気にどのような影響を及ぼしそうなのか、考えてみたいと思います。


エルニーニョ現象発生は冷夏をもたらす

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。この逆現象(平年より低くなる)を「ラニーニャ現象」と言います。

気象庁では具体的に、エルニーニョ監視海域の海面水基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差の5ヵ月移動平均値が6ヵ月以上続けて0.5度以上になった場合を、エルニーニョ現象と定義しています。最近では、エルニーニョ現象は2018年秋から発生していました。

気象庁が毎月10日に発表している「エルニーニョ監視速報」の6月10日発表分では、「エルニーニョ現象が続いている。今後夏はエルニーニョ現象が続く可能性が高い(70%)。秋にかけては平常の状態になる可能性もあるが(40%)、エルニーニョ現象が続く可能性の方がより高い(60%)」としていました。

つまり、70%の確率でエルニーニョ現象が今夏も続くという予測でした。エルニーニョ現象が発生していると、日本では冷夏・暖冬になりやすいという傾向があります。

冷夏だと夏物商品の売れ行きが悪くなる

経済産業省・商業動態統計の百貨店・スーパー販売額(旧、大型小売店販売額)を全国消費者物価指数でデフレートして、実質百貨店・スーパー販売額を求めて1981年以降2018年までの39年間の7~9月期の前年同期比・平均値を算出すると、+0.6%になります。

全期間平均に比べると、エルニーニョ現象が発生している時期の前年同期比・平均値は+0.3%にとどまります。エルニーニョ現象下では冷夏になりやすいので、ビール、アイスクリームなどの飲食物やエアコンなどの夏物商品の売れ行きが悪くなるからです。

逆に、猛暑になりやすい傾向があるラニーニャ現象が発生している7~9月期の実質百貨店・スーパー販売額の前年同期比・平均値は、+1.6%になります。夏物商品の売れ行きが良くなるからです。

今年は冷夏になり、7~9月期の販売額が芳しくない状況になるのではないかと心配していました。実際、今年の7月上中旬の20日間で30度以上の真夏日になったのは、31.4度になった7月19日の1日だけでした。

関東地方の梅雨の期間も長くなりました。梅雨入りは平年より1日早い6月7日(頃)、梅雨明けは今のところ7月28日からの週になりそうで、平年の7月21日よりも大幅に遅れそうです。

冷夏回避で夏物商品への需要出るか

7月10日に気象庁から発表されたエルニーニョ監視速報によると、「エルニーニョ現象が終息したとみられる。一方、インド洋熱帯域は海面水温の高い状態が続いている。今後秋にかけてエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態が続く可能性が高い(60%)。インド洋熱帯域の海面水温の高い状態は今後秋にかけて解消していくと予測される」ということです。

インド洋熱帯域の海面水温の高い状態は北日本の天候不順につながりやすい傾向があるので、この点には注意が必要です。とはいえ、エルニーニョ現象の終息により、これからは冷夏になる可能性はかなり小さくなったのではないでしょうか。

遅ればせながら、夏物商品への需要が出てくることが期待されるところです。夏物商品への需要が出れば、個人消費の下支え要因になります。

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