【社会人野球】入社1年目のJFE東日本・今川が躍動「若獅子賞をもらった人はプロに行くと…」

新人賞である若獅子賞を受賞したJFE東日本・今川優馬【写真:荒川祐史】

打率.412と大暴れで都市対抗野球初優勝に貢献、ここまでは苦境の連続も…

 第90回都市対抗野球大会の決勝が25日、東京ドームで行われ、JFE東日本(千葉市)がトヨタ自動車(豊田市)を6-3で破り、初優勝を飾った。入社1年目の今川優馬外野手が4回に勝ち越し打を放つなど活躍し、大会の新人賞に当たる若獅子賞を受賞した。

 2-2の同点で迎えた4回、JFE東日本打線はこの回から登板したトヨタの2番手・村川を攻めた。無死一塁で長谷川の遊ゴロを併殺を焦った二塁手が落球。思わぬ形でチャンスを拡大させ、2番・今川の左前適時打で勝ち越しに成功した。さらに続く3番・峯本の適時打などでこの回一気に4点を奪い、トヨタを突き放した。今川は5試合で打率.381と大暴れでチームの初優勝に貢献し、新人賞である若獅子賞を受賞。表彰式後には「若獅子賞をもらった人はプロに行くと聞いています」と嬉しそうにトロフィーを見つめた。

 応援うちわで黄色く揺れるスタンドに笑顔でピースサインを掲げて見せた。製鉄会社らしく、「ご安全に」という意味を込めた社内ではおなじみのピースサインに、スタンドに詰めかけた社員も同じくピースサインで応えた。今川は「いいところで打ったらやると決めていました。約束を果たせました」と話したが、この華やかな舞台に上がるまでは逆境の連続だった。

 東海大北海道キャンパスに在籍し、プロ入りを目指していた今川だが、4年時に部員の不祥事により野球部は大学から謹慎処分を受け活動を制限された。秋にはプロ志望届を出すも指名漏れ。「行き場がなかった」という今川に声をかけたのが、JFE東日本の落合監督だった。

目標は来年のドラフトでのプロ入り「また全国の舞台で活躍したい」

 入団テストを受けた今川はシート打撃で元DeNAの須田と対戦。3打数2安打と猛アピールし、入社が決まった。「あの日、須田さんから打っていなければ僕はここにはいない」。こうして今川の社会人野球キャリアは始まった。「落合監督には自由にやらせてもらっています。恩返しをしたかった」。入社して1年目で迎えた都市対抗の決勝で、最高の結果を出して期待に応えた。

 20日の明治安田生命戦では4打数無安打に終わり、試合後にウエートルームにこもって素振りを繰り返した。試合中の映像をチェックすると、バッティングフォームの重心がいつもより後ろに残ってしまっていることに気が付いた。「ホームランも出ていなかったし、結果が欲しくて(崩れてしまった)。僕は積極的に、ガンガンいかないと」と思い切りのいいスイングを取り戻した。迎えた22日のパナソニック戦では3安打猛打賞を記録。そして24日の東芝との準決勝では待望の大会1号が飛び出し、この日の決勝戦へ弾みをつけた。

 走攻守全てでレベルアップをはかり、来年のドラフトでのプロ入りが目標だ。2016年の第87回大会では、若獅子賞を受賞した3選手が全員翌年のドラフト会議で指名を受けプロの世界に飛び込んだ例もある。翌年のドラフト解禁イヤーに向けて今川は「少しでもいいアピールができた」と手応えを感じる一方で、「まだまだできた。首位打者も獲りたかったし、もっとバッティングを磨いて、守備走塁も含めて少しずつ成長したい」と向上心は尽きない。「今年の秋も選手権があるので、また全国の舞台で活躍したい」と秋の主役候補に早くも名乗りをあげていた。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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