グローバル人材育成へ 川崎市、高校生向け課程用意

チューブ内を走行するKeio磁気浮上ポッド。高校生が改良に加わる

 若者の夢を後押しし、川崎から世界へ羽ばたく足掛かりにしてもらおうと、川崎市は今秋から、「グローバル人材育成事業」を始める。第1弾のモデル事業として、米スタンフォード大や慶応大と連携した高校生向けの二つのプログラムを用意。今後、他大学や企業からも幅広く提案を募り、さまざまな年代を対象にした多彩な分野のプログラムを整えていく。

 同事業は、2018年4月に創設した「子ども・若者応援基金」を財源に充てる。同基金は(1)機会格差をなくす取り組み(2)子ども・若者の挑戦の後押し-を大きな目的に掲げている。現在の基金残高は1億5千万円ほどという。

 市は(1)として、児童養護施設などの出身者の進学支援を推進。入所中の子どもたち向けには、塾や家庭教師の費用を助成する学習支援制度を創設している。今後もこうした取り組みを継続する一方、(2)の理念を形にするため今回の人材育成事業を考案した。

 市は、シリコンバレーの形成に大きな役割を果たしたスタンフォード大の国際異文化教育プログラムのネット講義に注目。同大も事業の趣旨に理解を示し、川崎市の高校生向けに講師やテーマを選んだオリジナルのカリキュラム「Stanford e-Kawasaki」を組んで提供することを決めた。

 このプログラムには、市立川崎高と市立橘高の生徒各10人程度が参加する予定。生徒は遠隔講座を受講し、「多様性とアイデンティティー」「起業・創業」をテーマに、他の参加者とグループディスカッションなどを行う。

 市と連携・協力の基本協定を締結している慶応大も賛同し、新川崎タウンキャンパスで学生らが取り組んでいる研究開発の一つをプログラムとして提供することを決めた。リニアモーターカーの小型版「磁気浮上ポッド(車両)」を製作する研究で、学生らは3年前から長さ1600メートルのチューブ内の走行速度を競う世界大会に出場。今後の大会に向け、約1.7メートルのポッドの改良に学生たちとともに挑む内容だ。

 対象は市立総合科学高の電子機械科に在籍する生徒で、5~10人程度を予定。9月から製作に加わり、20年3月に走行デモンストレーションを計画している。

 市の担当者は「今後、ほかの大学や企業からも提案を募り、多くの子どもや若者が参加できる事業に広げていきたい」としている。

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