“国寄り”和解を打診か 今後の見通し 漁業者側弁護団

 国営諫早湾干拓事業の開門確定判決を巡る26日の請求異議訴訟上告審弁論は、国と漁業者側の意見陳述にとどまった。今後の見通しが示されない異例の展開となり、関係者にさまざまな見方が広がった。
 最高裁が口頭弁論を開く場合、控訴審判決が見直される可能性が多く、同弁護団は結審後の判決期日指定か和解勧告を想定していた。「双方に何かを打診するのではないか。だが、私たちにとっていい話ではなさそうだ」。漁業者側弁護団の馬奈木昭雄団長は、いぶかしがる。
 打診とは-。「国の『開門せずに100億円の漁業振興基金による和解案』をまた示し、われわれの意向を探るかもしれない。もちろん受けないが、そうなると、最高裁は国の主張に“追随”した判決を出すだろう」。馬奈木団長は、方向性を示さなかった最高裁の意図をこう読み解き、「結論はそう遠くない」と述べた。
 「珍しいかどうかも含めて、よく分からないが、『開門せずに基金で和解を目指す方針』に変わりはない」。農林水産省の担当者は弁論後、和解による解決を強調。開門差し止め派弁護団の山下俊夫弁護団長は「控訴審判決が破棄され、高裁に差し戻されるのではないか。判決文の中で、差し戻し審で和解を試みるべきと提示する可能性がないとはいえない」と指摘した。
 一連の訴訟を研究する横浜国立大大学院の宮澤俊昭教授は「深い意味はないと考えるが、裁判所での解決が難しいことがあらためて表れたともいえる」と話した。

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