開門で有明海再生を 漁業者ら確定判決の効力訴え

上告審弁論後の集会で国や裁判所の対応を批判する馬奈木弁護団長(中央)=衆院第1議員会館

 開門を命じた確定判決の効力はあるのかないのか。国営諫早湾干拓事業の開門調査問題は26日、国と開門派漁業者が最高裁を舞台に、近年の司法闘争の根幹部分で主張をぶつけ合った。「確定判決は前提とした将来予測と異なっている」と上告棄却を求める国。「確定判決を守らないことを認めれば誰も裁判所を信用しなくなる」と司法の存在意義に切り込む漁業者。重厚で薄暗い第2小法廷に“諍(いさか)いの海”に翻弄(ほんろう)された陳述人の声が響いた。
 「開門しない限り、有明海が再生しないことははっきり分かっている」
 漁業者代表で法廷に立ったのは佐賀県の漁業者、平方宣清さん(66)。請求異議訴訟は昨年7月、福岡高裁で敗訴。確定判決は事実上無効化された。判決見直しに希望をつなぐ最高裁弁論が指定され、喜んだのもつかの間、最高裁は6月末に別の開門訴訟で漁業者側の上告を棄却し、漁業者側敗訴が確定した。まるでジェットコースターに乗っているような浮き沈みを味わったが、有明海で子や孫たちと共に生きる夢を語り「私は決してあきらめない」と結んだ。
 島原市の原告、篠塚光信さん(60)はその傍聴席でペン先が固まったまま。用意していたメモ帳は閉廷後も真っ白。長くつらい訴訟のこと、日に日に弱る有明海のこと。裁判長から少しでも出口が見える言葉を期待していたが、発せられたのは開廷宣言と陳述人の指名、そして「判決期日は追って指定する」。驚くほどあっさり終わった弁論に「こちらを負けさせる予告みたいな感じもした」とぽつり。傍聴席の最前列に陣取った同市の中田猶喜さん(69)も「がっかり。期待外れもいいところだ」と振り返った。
 閉廷後の開門派原告・弁護団の集会では、裁判長の「期日未指定」に話題が集まった。開門確定判決を勝ち得てからしばらくは開門派ペースで進んできたが、開門差し止めの仮処分決定や判決を機に情勢は混沌(こんとん)。「高裁に差し戻し、和解を促すのだろう」「いや、漁業者の主張をばっさり切り捨てる気じゃないのか」。あちらこちらで憶測が飛んだ。
 馬奈木昭雄弁護団長は司法の一連の動きを「合理的な理性では判断できないことをしている」と批判。今後の展開については「もはや占いの世界だ」と吐き捨てた。

諫干開門問題を巡る請求異議訴訟などの経過

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