F1技術解説 レッドブル・ホンダ躍進の秘密(その2):フェルスタッペンを優勝へと導いた新型フロントウイング

 レッドブルは第9戦オーストリアGPで一気に戦闘力を上げ、それが同GPでの今季初優勝に結びついた。前線フランスGPでのアップデートだけでは十分でなく、オーストリアでの矢継ぎ早の新パーツ投入が功を奏したのだった。では具体的に彼らは、RB15にどんな改良を加えたのか。フランス、オーストリアのアップデートを、それぞれ解説してみよう。その1はこちらから。

4)ディフューザー

レッドブル・ホンダのディフーザー(上が新型、下が旧型)

 レッドブルはフランスGPで、ディフューザーにも改良を加えた。カナダGPで投入したものが、思ったような実走効果を得られなかったためのようだ。深い切れ込みは以前とおなじだが、先端部は3枚から4枚に。一方で、手前のデフレクターは廃止された。

5)フロントウイング

オーストリアから投入された新型フロントウイング(『NOUVEAU』が新型、『ANCIEN』が旧型)

 レッドブルの地元オーストリアGPに投入したのが、新形状のフロントウイングだった。改良部分は、外から見る限りはそれほど大きなものではない。

 新型フロントウイングでは翼端板の上縁が後方に向かって微妙な曲線を描きながら、わずかに低くなっている(青い矢印を参照)。その結果、翼端板上縁と最上部のフラップとは、ほぼおなじ高さになった。このフロントウイングの改良によって、フランスGPまでのアップデートと大きな相乗効果が生まれたようだ。

 マックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリーのいずれも、「フロントがしっかり食いつくようになっただけでなく、リアの挙動も格段に安定した」と称賛。メルセデスやフェラーリに対して不利だと思われていた、シルバーストンでのイギリスGPでも予選、レースともに上位争いに絡む速さを発揮した。

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