社説:ガソリン購入 悲劇繰り返さぬ規制を

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 ガソリンは大量殺傷をもたらす凶器になり得る。「京都アニメーション」の放火殺人事件で改めて突き付けられた。

 容疑者は第1スタジオ1階のらせん階段付近でガソリンをまいて火を付けたとされる。階段の吹き抜けを通じ、炎や煙が一気に3階まで広がった可能性がある。

 揮発性が高く、引火しやすいガソリンが大惨事をもたらした。爆発的な燃焼は、2013年の福知山市の露店爆発事故でも大きな被害を出した。

 建物に消防法や建築基準法上の問題点は確認されていなかったという。京都市消防局は「ガソリンをまいて発生した蒸気が広範囲に及んだ状態で火を付けると、一瞬にして炎が広がる」と危険性を説明する。

 5人が死亡した09年7月の大阪市此花区のパチンコ店放火など、これまでもガソリンを悪用した犯罪は相次いできた。

 だが、現状では厳しい規制に至っていない。農業用機械や自家用発電機のために日常的に購入する人がおり、手続きが煩雑になるのを避けるためだ。

 消防法はガソリンが安全に持ち運べる量を考慮し、プラスチック製容器は10リットル以下、携行缶など金属製は60リットル以下と販売量を定めている。一方で客に対し、身分証明書の提示や購入目的の説明は義務付けていない。

 容疑者は事件の直前、現場近くのガソリンスタンドで買ったとされる。40リットルを20リットル用の携行缶二つに分けて購入し、法令上の問題はなかったという。

 二度と悲劇を繰り返さないために、対策は急務だ。

 市消防局は市内のスタンドに、専用容器でのガソリン購入者の本人確認や記録化を求めた。

 総務省消防庁も、ガソリンを容器に入れて詰め替え販売する際は身元や目的を確認した上で記録を保存するよう、業界団体を通じて全国の事業者に要請した。

 だが、スタンドからは「目的を偽られればどうしようもない」との声も聞かれる。

 さらに一歩踏み込んだ確認が必要ではないか。日常的に使う人に登録証を交付する、発電機用の購入なら所持を証明する書類を持参させる―専門家からはさまざまな提案がある。

 一方で過度の規制は、社会生活への影響が大きくなる。どんな対策を取り得るか、国は検討を進めてほしい。

 再発防止のため、手段を尽くすことが求められる。