ミニボートの怖さ

 沖へ向かうと、海の青が次第に濃くなり、大物が食ってきそうな気がしてくる。地磯や堤防で「貧果」を重ねてきた身には、小船で深場を目指す釣り人の気持ちがよく分かる▲ところが沖合では急に風が強まり、すぐに白波がたつ。船はみるみる流され、木の葉のように揺れる。怖くなって慌ててさおをしまうこともたびたび。天候の確認、燃料・船外機の点検…。海では一つの判断ミスが命取りになる▲長崎海保管内で、衝突や転覆といったミニボートの事故が増えている。今年は5件。既に昨1年間の3件を上回り、死者も出た。長さ3メートル未満、出力1.5キロワット未満。免許や検査が不要という手軽さから近年、全国で普及しているそうだ▲船の特性や海上ルールを知らない利用者も少なからずいるはず。船体も動力も小さいため、風や波、潮の流れに弱く、大きな船からは見えにくい▲安全に航行できる範囲はおおむね岸から1キロ以内とされているが、法的制限はない。最近は長崎半島の沖合5キロ以上の海域でも目撃情報が相次いでいるという▲大漁が忘れられなくて、また釣りに行く。“坊主”が悔しくて、また釣りに行く。いずれにしても海に出掛けるのだろうが、家族にとっては、あなたの無事が何よりの釣果。どうか万全の準備と慎重な判断で、楽しい釣行を。(真)

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