世帯年収1500万でも不安、「子供3人の教育費」と「老後資金」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、3人の子供を抱える39歳の共働き主婦。高収入世帯ですが、教育費や老後資金のことを考えると不安になるといいます。FPの菅原直子氏がお答えします。

夫婦と子供3人の5人暮らしです。夫は単身赴任で週末帰ってきます。夫の年収は1200万円、私の年収は320万円ほどです。毎月の手取りは夫婦合わせて55万円程度。主人は3月にインセンティブボーナスがあり、手取りで200万円ほど支給されます。また、私の親から子供の習い事代として毎月5万ほど支援してもらっています。

中学受験は考えていませんが、現在子供の教育費が結構かかっており、これから高校・大学とますます費用がかかるのを、どうやって準備したらいいのか悩んでいます。老後資金も必要な時代ですし、今後が不安です。私は体力的に、そろそろフルタイムではなくパート勤務に切り替えたいのですが、そうなると、ますます貯められなくなります。娘二人は看護師を目指しており、どこまで教育費がかかるのか未知数です。アドバイスをいただければ、目標を立ててそれに向けてがんばれますので、どうぞよろしくお願いいたします。

〈相談者プロフィール〉
・女性、39歳、既婚(夫:39歳、会社員)
・子供3人:12歳、8歳、6歳
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:55万円+5万円(親からの援助)
・年間の手取りボーナス額:270万円
(夫200万円、妻70万円)
・毎月の世帯の支出目安:50万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10万円
・現在の貯蓄総額:2700万円
・現在の投資総額:1000万円
・現在の負債総額:1700万円(住宅ローン)

【支出の内訳】
・住居費:13万円
・食費:6万円
・水道光熱費:3万円
・教育費:10万円
・保険料:2万円
・通信費:1万円
・車両費:2万円
・お小遣い:9万円
・その他:4万円


菅原:お子さんが3人いて教育費がどれくらいかかるかわからない中、老後の生活資金の準備も心配だけれど、目標を決めてがんばるという前向きさは素晴らしいですね。お子さん3人のうち2人は将来の職業を決めているようですので、その進路に向けた教育費のデータで費用を見積もり、資金計画を立てていくようにしましょう。

年収から考えれば妥当?「子供3人で教育費月10万」

何にいくら使うのかは、各家庭の自由です。正解も間違いもありませんが、参考までに教育費の支出について、平均額と比較してみましょう。

子供12歳、8歳、6歳をそれぞれ小6、小2、年長児とすると、小学生の教育費の平均額は次のとおりです。

小6と小2、2人の教育費は1ヵ月あたり約5万4千円(≒53,856.25=[375,358+270,917]÷12)。年長児の保育料を考慮しても、教育費10万円は平均よりもやや多いと言えるのですが、年収1200万円以上の家庭では、公立小学校の子供1人あたりの年間教育費の平均額は58万4千円で、1ヵ月の2人分は9万7千円です。年収別のデータと比較すると、子供3人で10万円は少な目とも言えます。

教育費支出の10万円は、将来必要とする教育費をきちんと貯めていけるようであれば、問題ない支出額と考えていいでしょう。

その将来への貯蓄ですが、今は毎月10万円、年間120万円できています。気をつけたいのは、この貯蓄ペースがずっと続けられるとは限らないこと。親御さんからの援助は継続保証がありませんし、子供の成長とともに食費や被服費、通信費などの支出は右肩上がりとなり、貯蓄はしづらくなるでしょう。

教育費も、学年とともに増えていきます。高校で私立に行くとなおさらです。

大学費用の平均額を当面の目標に準備する

次に、将来の教育費を確認します。娘さん2人が目指している看護師になる道はいくつかありますが、医療の高度化に伴って看護師に期待される役割を考慮し、4年制の大学に進学するものとします。なお、お子さん3人のうち、上の2人を該当の娘さんとします。

国公立大学と私立大学の学校納付金には大きな差がありますが、準備は支出の多い方に合わせて行うと安心ですから、私立大学の金額で試算します。

私立大学看護系の学費平均額は4年間で約600万円(「平成29年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額の調査結果について」より算出)。希望校を絞る前の段階での目標額は、この平均額です。

その上で、少しでも多く準備するよう心がけてくださいね。4年間の学校納付金が800万円を超える看護系もありますし、一人暮らしをすると、自宅通学よりも生活費がかさむ可能性もありますから。

3人目の分として私立大学にかかる学費平均額の約510万円を加えると、3人分の大学納付金額は約1710万円です。

私立大学の一人暮らしの費用として1320万円(=年間平均約110万円×4年間×3人)を学校納付金分に上乗せした3030万円があれば、全員がひとり暮らしを希望しても大丈夫です。

現時点の貯蓄総額は2700万円。毎月10万円の貯蓄ペースを続けると2年9ヵ月(=33ヵ月)でゴールの3030万円に到達します。3人の教育費は用意できそうですね。

老後の生活次第で変わる必要額

現在の資産のうち、教育費に2700万円を使うとすると、残りは投資にまわしている1000万円です。

今後も毎月10万円の貯蓄を維持できるとは限らないと前述しましたが、次の3つの条件を満たせると、老後資金は表のように推移します。

1.親からの援助を末子が高校1年生まで継続し月額10万円の貯蓄をキープ
2.子供の大学卒業で1人あたりの生活費の負担を月額5万円減らすことにより、同額を貯蓄に上乗せ
3.老後の生活費分としての貯蓄は2年9ヵ月後から

表では、ご相談者夫妻が60歳時点で4690万円を確保できます。シミュレーションは積み立てたお金をまったく運用しないもの(0%)としていますが、物価が上昇すると価値が減ってしまうので、物価上昇分以上の運用を目指しましょう。

退職金や公的年金に、この4690万円を加えた金額が老後の生活資金となるわけですが、必要額を満たしているかどうかは、実際にどれくらいの金額で生活するかで答えが変わってきます。

住宅ローンの終期は不明ですが、遅くとも退職するまでには終わらせるようにします。ローンが終われば、1ヵ月あたりの生活費は、その分減り(マンションなので管理費や修繕積立金の支払いは継続)、子供の生活費も10年後の「大4・高3・高1」をピークに減っていきます。

退職金や公的年金の受取予想額を確認して、想定される生活費の合計額に不足するようなら、退職までの収入を増やすか、支出を引き締めるかのいずれかになります。

老後の生活費と教育費は「トレードオフの関係」?

ご相談者はフルタイムからパート勤務への切り替えを希望されています。切り替えで収入が減っても、老後の生活資金が足りていれば実行してかまいません。

反対に、フルタイムを継続し、得られるだけの収入をすべて得ても老後の生活資金が不足するようであれば、用意できたはずの教育資金から不足分を取り分けます。初年度納付金については保護者が現金で用意しなければなりませんが、2年生以降の費用は、奨学金で子供自身にお金を用意してもらうこともできるからです。

ご相談者夫妻が用意できるお金には限りがあり、支出の節約にも限界があります。電化製品の買い替えやリフォームなどの特別支出もあるでしょう。毎年の貯蓄残高が計画どおりに推移しなければ、小まめに資金計画を見直すようにして、安心を引きよせるようにしましょう。

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