【やまゆり園事件3年】重度知的障害者の暮らし理解深める 地域生活で日常豊かに

重度知的障害者が親元を離れて地域で暮らすことの意義について語った(左から)平野さん、福井さん、西村さん =相模原市緑区の「ソレイユさがみ」

 障害者19人が殺害された津久井やまゆり園事件から3年がたち、重度知的障害者の暮らしについて理解を深める集会が28日、相模原市緑区で開かれた。親元でも入所施設でもなく地域で支援を受けながら生活を送ることで障害者の日常が豊かになる様子が報告された。

 障害当事者や家族、支援者の有志でつくる「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」の主催で、約150人が参加した。

 登壇したのは、園を昨年5月に出て横浜市内のグループホーム(GH)での生活を始めた平野和己さん(29)の母・由香美さん、東京都大田区で5年ほど前から支援付き1人暮らしを続けている福井元揮さん(26)の母・恵さん、横浜市内のGHで暮らす西村奈緒さん(46)の母・信子さん。

 和己さんはGHでの新生活に対するストレスなどから体調を崩し、昨秋からはGHを運営する社会福祉法人の入所施設で体調を整えながら再びGH生活を目指している。平日は軽作業に励み、休日は介助者と一緒にパフェを食べに出かけたり、水族館を訪れたりするなど充実した日々を送っているという。由香美さんは「息子が長年にわたってさまざまな面で我慢を強いられるような施設ではなく、地域で普通の暮らしを送ること。それが親の願い」と強調した。

 福井恵さんは「親亡き後」に誰が息子の世話をするのだろうか、と考えることがあった。だが、元揮さんが支援付き1人暮らしを始めると「息子は介助者と一緒に居酒屋に行ったり、ボート遊びを楽しんだりして、親といるよりものびのびしている。家族以外の人と過ごすことで息子の可能性が広がった」と語った。

 この日は、西村さん家族の歩みをまとめた記録映画「やさしくなあに」の一部も上映され、信子さんがやまゆり園事件について「彼のような人は社会にたくさん潜んでいる。彼をつくり出した社会がよくない」と語る姿が映し出された。監督の伊勢真一さんは「事件に対する回答をすぐに求めるのではなく、考え続けることが大事」と話した。

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