【高校野球神奈川大会】東海大相模・井上主将、けが乗り越え悲願「仲間に支えられた」

優勝を決め跳び上がる捕手の井上主将、右は遠藤副主将=横浜

 28日に横浜スタジアムで行われた高校野球の神奈川大会決勝で、東海大相模高が4年ぶりの頂点に立った。名門をまとめた井上恵輔主将(3年)は大けがを乗り越えての悲願達成に涙した。

 名門の重責を背負ってきた熱き思いが、東海大相模高の井上主将のほおを伝った。

 「先輩たちの思いも胸にやってきたから込み上げてきたし、チームメートのおかげでここまでやってこられた」

 昨夏からレギュラー捕手としてプレーしていたが、最初は主将就任の打診を断った。歴代の先輩を見てきて、「プレッシャーもすごいし、負けを背負いたくない。逃げてました」。秋季県大会の地区大会が終わる頃には腹をくくったが、その県大会で宿敵の横浜高に敗れた。小さなミスの綻びに練習から鬼となった。

 「おまえ、いらない」「グラウンドから出ろよ」。怠慢プレーには容赦なく叱咤(しった)した。「誰かが嫌われ役にならないと勝てない。嫌われているとも思う」。日本一を目指す主将としての振る舞いを愚直に貫いた。

 そんな熱血漢にアクシデントが襲った。ことし4月下旬、春季県大会で顎に死球を受けた。早期復帰のために即手術を受ける決断を下したが、入院生活は2週間ほど。顎にもプレートを埋め込んだ。父弘明さん(49)は「語り掛けても『うんともすんとも』言わない。笑顔はなかった」と振り返る。同じ夢を追い掛け、見舞に来てくれる仲間たちの存在が救いだった。

 「早く戻ってこいよ。いないと寮が静かなんだよ」

 みんなと顔を合わせると、自然と笑顔が戻っていた。退院後は東京都内の自宅には戻ることなく、寮に直接向かった。門馬敬治監督(49)や仲間が待っていた。すぐに実戦復帰を果たし、今大会は尻上がりに調子を上げてきた。

 決勝では2安打2打点。今大会は巧みなリードでも6人の投手陣をけん引した。「辛抱強く使ってもらえたからここにいられる。仲間に支えられた」

 「相模の主将は気合い、気迫、根性」。帽子のつばには前主将の小松勇輝さん(東海大)に書いてもらった文字。「通過点の一つは達成できた。ここからは日本一しかない」。頼もしい仲間とともに、令和最初の甲子園を熱くしてみせる。

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