なり手不足の民生委員

 「以前は福祉に全く関心はなかったんだよね」。そう語る五島市の谷合正則さんは民生委員となって7期21年。今秋には86歳になる、県内最高齢の民生委員だ▲担当地区は過疎が進み、高齢化率は5割を超す。現役の頃は漁協職員、役員として地域産業を支えたが、今の役を引き受けて初めて、身近な人たちが健康問題や家族関係など、いろんな事情を抱えて暮らしていることを知った▲民生委員は独居高齢者や障害者、ひとり親世帯などの困り事の相談に乗り、関係機関につなぐ役割を担う。身分上は厚生労働相が委嘱する特別職の地方公務員だが、実態は給与のないボランティア活動だ▲人間関係の希薄化がいわれる中、地道に地域を歩き、手を差し伸べる活動は重要さを増す。けれど民生委員もなり手不足で、高齢化が進む。県内では4月時点で3552人が委嘱されているが、105地区は空席のまま。100人前後が選任要件の「75歳未満」を超えて活動している▲谷合さんは言う。長く務めても、住民とどれだけ信頼関係ができているのかとの思いは拭えない。でも支援がうまくいき、住民の喜ぶ顔が見られたときの充実感と言ったらない。やりがいのある仕事だ、と▲12月には3年ごとの全国一斉の改選期を迎える。谷合さんは次の8期目も続投予定だ。(久)

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