もし若者の投票率が上がっていたら参院選はどう変わっていたのか(徐東輝(とんふぃ))

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参院選が終わり、色々とデータ分析をしていて、一つ気になったことがありました。「もし若者の投票率が上がっていたらどうなったのか」をシミュレーションしてみると面白いのではないかと。

そして興味本位で始めて見ると意外に地獄のようなExcel計算が多く(自治体ごとに集計されているものを集めたり…)、しかしやり始めた以上気になって仕方がないということでおそらく合計10時間近くは使って結論をはじき出しました。
とんでもない結果になったので、ぜひご笑覧ください。

定義・前提

データ分析をする以上、語義を明確にしなくてはなりません。
本記事は次の用語は以下のとおりとしています。

・若者:18歳~29歳の有権者
・出口調査:共同通信が2019年7月21日に行った第25回参議院議員選挙に関する世論調査

まずは比例区

1、そもそも今回、若者の有権者は何人いたのか

10年に1度行われる国勢調査結果に従い(今年度分はまだなので前回の平成27年度分)、今年18歳から29歳になる若者の有権者は14,357,780人であることがわかりました。

2、今回の参院選の10代、20代の投票率は…

次に若者の投票率ですが、まだ総務省による速報値であるものの、10代の投票率は31.33%でした。他方で、20代の投票率はまだ出ておりません。そこで、前回の参院選(平成28年度)での20代の投票率が35.6%であったこと、今回の全体の投票率が前回より下がったことを踏まえて、20代の投票率は33%と仮定して進めます。

3、今回投票に行かなかった若者有権者の数は…

以上の計算の結果、今回の参院選で投票に行かなかった若者は9,659,193人であることが判明しました。

4、10代、20代の投票先政党は…?

共同通信が行った出口調査によると、10代の比例代表投票先は以下のとおりになりました。

共同通信の出口調査は、報道の限りでは20代に関して公表されておらず、しかし他の世論調査等に鑑みても10代と20代では大幅に異なることはないと判断し、今回はこれを若者の比例代表投票先の比率とみなして計算を進めます(20代の統計データが公表された時点で計算し直します。)。

5、もし仮に若者の投票率が5~40%上昇したとき、各政党の得票数はどのような数値になったか

では、有権者数11,993,655人の若者の投票率が5%~40%上昇したとき、実際に各政党の得票率がどれほど上昇していたかを確認します。以下の表のとおりです。

あとは、5%上昇したとき、10%上昇したとき、…40%上昇したときとそれぞれの場合で、比例代表での各政党の獲得議席数を算出することになります。日本は、比例代表の獲得議席数の算出方法につきドント式を採用しているため、これにしたがってそれぞれ算出してみました。ドント式に関する簡単な説明はこちら
さて、どのように議席数が変化するのでしょうか。

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閑話休題ではございますが、今回の参院選に向けて、このようにデータやファクトに基づいて分析を行い、有権者の皆様に信頼のおける情報を届ける情報プラットフォーム「JAPAN CHOICE」を開発いたしました。
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さて、では若者の投票率が上がった場合の議席数の変化を見ていきましょう。

【5%上昇したとき】

若者の投票率が5%上昇した場合であっても、上位50議席の配分は変わらず、実際の獲得議席数と同じ数字になりました(黄色セルが当確)。つまり、若者の投票率が5%上がっても、比例代表については結果は変わらなかったということになります。

【10%上昇したとき】

若者の投票率が10%上昇しても、やはり獲得議席数は変わりませんでした。

【15%上昇したとき】(今回の参院選の全世代平均と同程度)

15%上昇しても、やはり獲得議席数は変わりません。
若者の投票率が全世代平均まで上がっても、比例区の結果にはほとんど影響を及ぼさないということがわかります。

【20%上昇したとき】

20%上昇してもやっぱり変わりません。

【40%上昇したとき】(60代、70代と同水準)

若者の投票率が高齢者と同水準の70%台に達しても、なお比例区には全く影響が及んでいません。このあたりでわかってくるのですが、N国が今回出現したことで、N国の各得票数を、次点となる自民党や共産党がどの時点で上回るかが議席変動のポイントになることになります(おそらく50%程度の投票率上昇が必要かと思われます)。

次に選挙区はどうか

比例区は、上述のとおり、若者の投票率の上昇がほとんど影響を及ぼさないことがわかりました。
では、選挙区はどうでしょうか。
すでに述べたとおり、おおよその若者の支持率は自民:野党=3:1程度ですので、若者の投票率が高まれば高まるほど、自民党の票が野党票の3倍の割合で増えていくことになります。

今回、野党候補が自民候補に勝利した選挙区とその差は以下のとおりでした。

基本的には1人区で野党が共闘していたため、1人区が中心の接戦選挙区となるのですが、自民分裂が生じた広島2人区のみ例外的に自民2番手が落選するということになっています。(上記の表の見方としては、上記選挙区で野党候補が勝利し、「自民」候補がどれだけの差で負けていたのかを計算していることになります。)

そして、各選挙区の若者の有権者数(概算)と、その有権者たちがあと何%投票に行っていれば結果が変わっていたのかを算定しました。以下のとおりです。

選挙区の若者の有権者数は、それぞれの自治体の統計データから概算で算出しました。上記の表を見ていただければ分かる通り、宮城県を除いて、基本的には25%以上投票率が上がらない限り、結果に変化はなかったといえるでしょう。
大接戦となった宮城県だけは、若者の投票率が6.8%上がっていれば、自民党候補が勝利していた可能性があります。

え、若者の影響力ってないってこと…?1票の価値って…?

さて、ここからが本題です。
個人的にはこのデータが示すメッセージこそが最も重要であり、本質であると考えています。以上の分析からわかったことを列挙いたします。

比例代表を動かすのは、ドント式というシステム上、非常に難しい(若者の投票率云々という以前に)
・よく見る言説として、「若者は自民党支持だから、若者が投票に行けば自民党が更に大勝していた(有利だった)」という言説は安易であり、データに基づけば眉唾ものである
・選挙区レベルでは、若者の投票率の上昇によって変動していた可能性のあるところがある。
(個人的にはここからが重要)
・若者の投票の重要性は、「ある議員を当選させられるかどうか」という点のみならず、「若者が票田になることで若者向けの政策にアプローチする政治家・政党を増やす」点にもある。
・上記の算定は、投票に行った若者たちの投票先政党の出口調査に基づいた「推定」に過ぎず、実際に選挙に行っていない若者の動き方いかんでは大きく異なる可能性がある
・そもそも、世代という区切りには意味はないのかもしれない。世代間対立を煽るより、それぞれ一人ひとりが思考し、投票することで、この推定は大きく変わりうるし、二度とこんな分析は不要になるだろう。もはや「若者が~」とくくる必要などない。
・一票に価値がないはずなどない。今回数字をたくさん触ってわかったことは、この数字に現れている「投票にいった人」は確実に国に、政党に、政治家に認識されており、そして彼らの声を聞こうと(得票するために)また政治家たちは動き始める。この分析は、一票に価値がないということを示しているのではなく、同じ思いをもった一票が集まって民主主義が動いていくのだということを伝えられれば、これほど幸せなことはありません。

JAPAN CHOICEは、これからもどんどんとこのようなデータ分析を積み重ね、もっともっと有権者の皆様に立法府、行政府のありのままの姿を可視化できるようにします。少しでも価値を感じていただけましたら応援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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※眠気で半目になりながら算出していたりした部分もありますので、もし数字等に間違いがあった場合にはぜひご指摘ください。


この記事は、徐東輝(とんふぃ)さんがnoteで書かれた記事になります。多くの方に読まれてほしいと思い選挙ドットコム編集部が転載のお願いをしたところご承諾いただきました。