明日ラストラン、熊本電鉄“名バイプレーヤー”の魅力とは?

熊本電気鉄道で走っている3代目200形(元・南海電気鉄道22000系)が、7月30日をもって引退することになりました。これにより、ライトブルーとブルーをベースに、ホワイトとオレンジの帯を配した「くまでんカラー」も見納めとなります。

明日ラストランを迎えることになった3代目200形。これまでの21年にわたる熊本電鉄での歴史を振り返ってみます。


導入のきっかけは“誤算”だった?

3代目200形が熊本電鉄に導入されたのは、ある“誤算”がきっかけでした。

同社では、500形、600形(いずれも元・静岡鉄道100形)、5000形青ガエル(元・東京急行電鉄初代5000系青ガエル)の老朽化に伴い、東京都交通局6000形を1995年から年1編成ペースで導入。「熊本電鉄6000形」として順次置き換えることになっていました。

ところが、東京都交通局6000形は1995年5月以降、廃車がなく、1997年は導入できない事態に陥りました。こうして車両の更新が急務となった熊本電鉄が目を付けたのが、南海22000系でした。

ラストランは菊池線上熊本―北熊本間で締める予定

1998年3月25日の廃車後、南海22000系は九州の西鉄産業へ渡り、大掛かりな改造工事を受けます。ヘッドライトとテールライトの位置をフロントガラスの下に変更したほか、ヘッドライトが装備されていた箇所に方向幕を設置。南海時代に方向幕として使われたところは、ワンマン表示器に転用されました。

また、架線の電圧も、南海時代が直流1500ボルトだったものを、直流600ボルトの熊本電鉄に合わせて降圧化。車両の中間に乗降用ドアを増設し、3ドア車化されました。こうして22000系は「熊本電鉄3代目200形」として1998年12月25日に営業運転を開始し、500形を置き換えました。

全線で運用できるフットワークの良さ

6000形は20メートル4ドア車という大型車で、他の車両に比べて収容力がある半面、菊池線・上熊本―北熊本間はホーム有効長が20メートル車2両分に対応しておらず、入線できない難点がありました。その点、3代目200形は17メートル車なので、全線で運用できるのです。

また、上熊本―北熊本間は5000形青ガエルによる単行運転だったため、車両強度の関係で冷房装置が搭載できませんでした。3代目200形は2両なので座席数が多いうえ、冷房装置が搭載されているので、暑い時期は快適性が大幅に向上されたのです。

3代目200形の車内

上記の事情により、南海22000系を選択したのは「正解」といえるでしょう。また、1編成のみの導入にとどまったことで、5000形青ガエルの活躍が「2016年2月14日まで長く続いた」ともいえます。

1999年に入ると、東京都交通局6000形の廃車・引退により、熊本電鉄6000形の導入が再開され、2001年まで計5編成10両が九州入りしました。これにより、500形、600形は全廃、5000形青ガエルは2両が残存しました。

熊本電鉄にはどんな車両が残っている?

ここで、現存している熊本電鉄の車両について説明しておきましょう。

◆ 01形

第3軌条から架空線の車両に変身

5000形青ガエルの置き換え用として、2015・2016年に元・東京メトロ銀座線01系を2編成導入しました。

銀座線と熊本電鉄は共に直流600ボルトながら集電方式が異なるため、各編成1両にパンタグラフを搭載しました。また、3代目200形よりも小さい車両のため、乗降用ドアの下にステップを設けています。このほか、走行機器も更新されました。

現在は2編成とも「くまモンのラッピング電車」2・3号車として運行中。特に3号車は東京メトロの協力を得て、銀座線1000系と同じカラーリングにフルラッピングされました。

◆ 03形

日比谷線の雰囲気をそのままに新天地へ(提供:熊本電気鉄道)

熊本電鉄のニューフェイス。元・東京メトロ日比谷線03系を導入し、2019年4月4日にデビューしました。現在は1編成在籍しており、今後2編成が移籍する予定です(車両番号は未定とのこと)。

◆ 6000形

熊本電鉄の主力車両6000形

前述した熊本電鉄の主力車両。同社の鉄道車両では初の冷房車となり、夏季の快適性が大幅に向上しました。

5編成のうち、1968年製は2編成、1972年製は3編成が在籍。後者のうち1編成は「くまモンのラッピング電車」1号車として運行中。残る2編成は、フロントガラスの周囲を黄色に塗装しています。

◆ モハ71形

裏方に徹するモハ71形

1928年に新製された元広浜鉄道の車両で、車齢は91年を数えます。現在は入換車として、のんびり過ごしています。

◆ 5000形

5000形青ガエル

現役最後の青ガエルは引退後、動態保存兼入換車として、新たな役目を与えられました。イベント開催時には、北熊本駅構内の車庫で乗車会が開催されています。

定期運用から予備車へ

3代目200形はいつしか予備車に回り、他の車両の検査時や故障発生時などで営業運転に就くようになりました。熊本電鉄によると、定期運用から予備車に転じた日などのくわしいデータは残っていないそうです。

50年間お疲れ様でした

そして、2019年5月20日、熊本電鉄は3代目200形の引退を発表しました。南海22000系として1969年に営業運転についてから、50年の長きにわたる歴史にピリオドを打たれるのです。

引退記念として、ヘッドマークの掲出、記念グッズの販売、おもいでメッセージの掲出が行なわれています。ラストランの7月30日は終日にわたり、菊池線・上熊本―北熊本間を運行する予定です。

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