「堂々と明るく生きる」 脳性まひの波佐見高3年・佐伯悠悟さん(18) さが総文 弁論部門で優良賞 “妨げ”乗り越えて宣言

弁論部門で「人生を堂々と明るく生きていく」と述べる佐伯さん=佐賀県、多久市中央公民館

 第43回全国高校総合文化祭(さが総文)3日目の29日、弁論部門があった佐賀県多久市の会場。長崎県立波佐見高3年、佐伯悠悟さん(18)は車いす姿で登壇した。相模原市で起きた障害者施設殺傷事件の犯人の差別発言、障害に絡み過去に自身が受けた暴言、仲間の励ましやスポーツの楽しさ-。さまざまな出来事を振り返り、力を込めた。「人生を堂々と明るく生きていくことを宣言します」
 脳性まひで、足が不自由。手にも若干まひがある。幼い頃は積極的な性格だったが、あることをきっかけに内向的になった。小学3年の秋、地域の祭りで列に並んでいると後ろから押され、車いすの車輪が前の女性にぶつかった。「痛い。だから障害者は嫌いなんだよ。帰れ」。女性は怒鳴り続けた。
 「町の人の視線が気になりました。何も言わないだけで僕のことを嫌っているのかな」。人が集まる場所が恐くなり、休日は家に閉じこもるようになった。
 救ってくれたのは友達だった。「そのおばさんは間違っている。障害がある人を助けるのは当たり前なんだよ」。他の級友も応援してくれた。もう一つ、支えになったのが小学6年から始めた車いすバスケットボール。選手たちのパワフルな動き、自信に満ちた表情に引きつけられた。練習して、シュートを決めると生きる喜びを実感できた。
 一方、2016年に相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害される事件が発生。「障害者は不幸しかつくれないので、いない方がいい」といった犯人や一部の人々の差別と偏見にショックを受けた。高校1年のある日、教師に「佐伯にしか伝えられないことがあるんじゃないのか」と県高校弁論大会への出場を勧められた。
 原稿を練る中、自分自身の障害と向き合うことになった。体の不自由さは日常生活の妨げになっていて、手助けが必要なときもある。その意味で自分は“妨げ”を持つ人。でも、何らかの“害”に苦しむ人ではない。そして、その妨げは知恵や努力、周囲の応援で克服できると実感してきた。だからこそ、自分は「障害者」ではなく、「妨げるもの」という意味がある「碍(がい)」を当てはめた「障碍者」だと考えるようになった。
 さが総文の本番では7分間、精いっぱい語り続けた。「(僕たちは)ハンディを乗り越え、そして堂々と人生を楽しむ障碍者なんです」。弁論の最後は、妨げを抱えて生きていく自分なりの宣言で締めくくった。結果は優良賞。「一番強い気持ちで聴衆に伝えられたと思う」。佐伯さんは少し恥ずかしげに胸を張った。
 同部門のもう1人の長崎県代表、山口文野さん(県立長崎南高3年)は、優秀賞に輝いた。

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