参院選後に見えてきた、自民党幹部への評価(佐藤修)

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第25回参議院議員通常選挙は、改選数124議席中、自民党が57議席を獲得した。各候補者の当落が決定した投開票日は、悲喜こもごもの表情が報道されたが、その後、参院選を終えた自民党各幹部の思惑や評価はどうなのか。複数の選挙区をピックアップしながら、永田町関係者の声をお伝えしたい。

【兵庫選挙区・大阪選挙区】維新対策はできていた?

兵庫選挙区

まずは兵庫選挙区(改選数3)と大阪選挙区(改選数4)。兵庫選挙区は、改選数3に対し立候補者が6人の「激戦」と報じられた。自民党の新人・加田裕之氏(49)、日本維新の会の現職・清水貴之氏(45)、公明党の新人・高橋光男氏(42)の計3人が当選したが、自民・加田氏は維新・清水氏に10万票以上の大差をつけられた。昨年、死去した鴻池祥肇氏の知名度、集金力、JC票を背景に「トップ当選が当たり前」という見方もあったが、まさかの最下位当選となった。

大阪選挙区

大阪選挙区は、府知事を8年、参院議員を6年務めた現職・太田房枝氏(68)が、実績と知名度を武器に戦ったが、日本維新の会の新人・梅村みずほ氏(40)と現職・東徹氏(52)にワンツーフィニッシュされ、公明党・現職の杉久武氏(43)にも水をあけられた。
「維新対策はできていたのか?」との批判もちらほら聞こえるが、自民党関係者にこれといった動揺は見られない。「もともと、兵庫と大阪は維新が強い。大阪での2人当選も想定の範囲内。自公は組織力を発揮して期日前投票で票を稼ぐが、関西に支持基盤を持っている維新が、投開票日に伸ばしてくるのは当たり前だ」「自民党としては全く問題ない」とサバサバした様子だ。

【東北】結果は自民の2勝4敗でも分析は楽観的

2勝4敗となり、惨敗のように伝えられる東北の6選挙区は1人区ばかり。宮城、山形、岩手、秋田を落とした。宮城選挙区は、4選を期した現職・愛知治郎氏(50)が、立憲民主党新人・石垣のり子氏(44)に負けた。山形選挙区は、現職・大沼瑞穂氏(40)が、野党統一候補で無所属新人・芳賀道也氏(61)に敗れた。安倍首相への批判票を取り込まれたのが響いた形だ。岩手選挙区は、4選を目指した現職・平野達男氏(65)が、野党統一候補で無所属新人・横沢高徳氏(47)に歯が立たなかった。小沢一郎衆院議員(岩手3区)や達増拓也知事の組織力が勝った。そして秋田選挙区は、再選を期した自民現職・中泉松司氏(40)も、野党統一候補で無所属新人・寺田静氏(44)に阻まれた。防衛省の資料不備や、説明会における職員の居眠り問題で紛糾した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画に対する反発をカバーしきれなかった。

秋田選挙区

しかし、東北に関しても関係者による分析は楽観的で、「前回、唯一勝った秋田も失ったが、選挙以前の問題。防衛省のお粗末な対応が敗因」とし、「東北は、前回選挙の1勝5敗から2勝4敗へと“躍進”したと見ることもできる。今後の対応は、環太平洋経済連携協定(TPP)問題で、当時の民主党に流出した農業票をどれだけ取り戻せるかがポイント。コツコツやるしかない」と説明する。

大きなダメージを受けたのは…

今回の参院選で、大きなダメージを受けた幹部は、なんといっても岸田文雄政調会長(61)だろう。岸田氏率いる岸田派の選挙結果は惨憺たるもので、地元の広島選挙区(改選数2)では、6選を目指していた現職・溝手顕正氏(76)が落選し、元県議で新人・河井案里氏(45)が初当選した。溝手氏は、岸田派の最高顧問でもあるが、岸田氏は、“重鎮”を勝たせることができなかった。さらに秋田の現職・中泉松司候補(40)、山形の現職・大沼瑞穂氏(40)、滋賀の現職・二之湯武史氏(42)の3候補も野党の統一候補者相手に涙をのんだ。

広島選挙区

岸田氏はこれで、「選挙に弱い」というレッテルを貼られる可能性が大だ。幹事長はもとより、「ポスト安倍レースでミソをつけた」「求心力の低下は間違いない」(自民党関係者)などと厳しい声が渦巻いている。一方で、菅義偉官房長官(70)、二階俊博幹事長(80)、甘利明選対委員長(69)らはどうか。
自民党は9議席減らす結果に終わったが、公明党と合わせた与党議席は、71議席と改選過半数を上回った。これによって、3氏とも一定の評価を得ているようで、菅官房長官に関しては、「ポスト安倍で、一歩も二歩もリードする形になった」と受け止められ、二階幹事長については、「今後も自民党のど真ん中で影響力を行使するだろう」との見方が強い。甘利選対委員長についても、「金銭スキャンダルで負った傷は深かったが、この参院選で息を吹き返したのではないか。もともと、選挙が上手な人」と好意的に見られている。

当落が決定した候補者自身だけでなく、党幹部の明暗も分かれた今夏の参院選。ある自民党関係者は、「選挙結果に関わらず、改憲へ向けての再構築は必要。国民民主も取り込み、公明党の理解も得ないと」と話し、さらに「議員にもいろいろな人がいるし、選挙結果は運不運もある。しかし長い目で見れば、結局は人柄や活動で評価される。任期中の活動を振り返った時、その議員が何をしたか。周囲の仲間とどう接してきたか浮かんでこない人はダメ。上から目線でものを言う人や、選挙で批判ばかり言う人は、だいたいずっこけている」と締めくくった。