F1、2020年に向けて『磨耗の少ないタイヤ』を要求。大幅な方向転換に、ピレリは新たな開発を覚悟

 F1にタイヤを供給しているピレリは、2020年用タイヤの開発の大半を終えた段階で、“2020年用タイヤは、デグラデーションの少ないものにしてほしい”という要求をF1から受けたことについて、期限内にこの要求に応じるために“大きな挑戦”に直面していると認めている。

 2020年シーズンのレース内容を改善するために、F1は長年のタイヤと計画に関しての立場を逆にすることになった。ドライバーが激しくプッシュできるようにするために、デグラデーションの高いタイヤから、摩耗の少ないタイヤに変えるというのだ。

 しかしながらこのアプローチの変更は、ピレリにとってはぎりぎりの段階で行われたことになる。ピレリは2020年のタイヤ開発の大半を行ってきているところへ、F1とFIAから全体的にこれまでとは異なる指示を受けたのだ。

 2019年シーズン、2日間計4回のテストを4カ所の異なるコースで9チームと共に行ったピレリ。9月にはポール・リカールでメルセデスとテストを行う予定だが、このテストは12月初旬にアブダビで行われるF1のオフシーズンテストにおいて、全チームが同時にテストを行う最終的なタイヤを確定させるためのものだ。

 2020年に向けたピレリからの要求事項の概要が示される技術報告書もしくはターゲットレターは、F1第12戦ハンガリーGPの前に各チームに提出されると見られている。

 ピレリのレーシングマネージャーを務めるマリオ・イゾラは、いかなる遅れも、要求されている2020年用タイヤを準備するピレリの能力を阻むことになるため、全チームがターゲットレターに同意することを期待している。

「全体的な合意は、どうやらデグラデーションの少ないタイヤのようだ」とイゾラは語った。

「デグラデーションが少ないというだけでは、我々にとっては不十分だ。だから我々は、低デグラデーションの数値について理解する必要がある」

「また、異なるコンパウンドではラップタイムに差が出ることが予想される」

「来年に向けた競技ルールにこれ以上の改定がなければ、我々は各レースに3種のコンパウンドを持ち込むことになる。そして3種のコンパウンド間で予想されるラップタイム、デグラデーションのレベル、ドライバーによるオーバーヒートの削減、作動範囲の拡張といったことを我々は理解しなければならない。こうしたことが来年の主な目標だ」

「我々は作業を進めているが、あまり時間はないので、作業をスピードアップさせなければならない」

「だから予想される目標について、確実にサマーブレイクの前に、100パーセント確かにする必要がある」

「うまくいけばハンガリーGPの前に、全チームにターゲットレターの草案を配布できると考えている。ハンガリーでフィードバックを得て、確定させるためにだ」

■ピレリ、要求に合わせた新しいタイヤを開発する可能性も

 ピレリは、デグラデーション要素を高い方から低い方へ変更することは、同社にとっては変化球を投げられたようなものであり、2020年シーズンに向けて全体的に新しいタイヤとコンパウンドのラインアップを開発しなければならなくなる可能性があると語っている。

「話が違っている。なぜなら我々は長いことオーバーヒートの削減や作動領域の拡大について話していたのだが、デグラデーションレベルを下げるというのは新しい話だからだ」

「我々が予定しているコンパウンドのラインアップが、彼らの期待しているものかどうか100パーセント確信がない。もしそうでなければ、新しいタイヤを開発しなければならない」

「2020年タイヤのためのテストセッションは、9月中旬のポール・リカールでの1回しかない」

「大きな挑戦だ。これまでに開発したものがすでに正しい方向に進んでいることを願っているが、100パーセントであることを確かめる必要がある」

「1回のセッションは多いとは言えない。段階的に進めていくだろう。今、最も急がれていることは、ターゲットレターを確定させ、9月の開発を有効なものにすることだ。そして結論を出すことになるだろう」

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