出島のケンディ

 「ケンディ」と呼ばれる変わった形の水差しに出合った。復元事業が進む長崎市出島で開催中の企画展会場に80点もあった。江戸時代に商人の出資で港に築造され、海外交易の窓口となった出島の役割を再認識させる▲ケンディは東南アジアで人々が水を飲むのに使ってきた器で、歴史はインドで紀元前2世紀ごろまでさかのぼる。最初は神聖な容器だったがインドネシアで実用的なものに変わったという▲形状が似ているしょうゆ差しよりもやや大きく、側面の注ぎ口が乳房のように膨らんでいる。本体上の細長い筒状部から中に水を入れる▲17~18世紀にアジアで活動したオランダ東インド会社は調度品としても注目した。有田や三川内で焼かれた染め付けや色絵の磁器製ケンディを、出島から欧州へ運んだ。中国景徳鎮でも生産された▲企画展会場には13世紀ごろに朝鮮で生産された青銅製や15世紀のタイの陶器製、17世紀ごろのペルシャの陶器製、19~20世紀にチベットで作られた真ちゅう製なども並び、出島が異文化交流に関わったことを伝えている▲これらは神戸市在住の古陶磁器研究家アリスティア・シートン氏が長年かけて収集し、「ふさわしい場所で保管を」と194点を長崎市に寄贈した。氏は長崎ゆかりのスコットランド出身。篤志がうれしい。(謙)

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