作り手の楽しさが連鎖 「ZINE」イベントに28組出品 ネコのイラスト集や酒の冊子など 18日まで長崎

さまざまなZINEが並ぶ会場=長崎市、みらい長崎ココウォーク5階TSUTAYA

 カルチャーやデザインの要素が強い個人出版物のことを「ZINE」と呼ぶ。米西海岸発祥で、雑誌を意味するmagazineが語源。このZINEを長崎の個人やグループが作製し少部数販売するイベント「チョージン」が、長崎県長崎市茂里町のみらい長崎ココウォーク5階TSUTAYAで開かれている。昨年以来2回目。計28組が個性豊かな冊子などを出品し、来場者の目を楽しませている。8月18日まで。
 ZINEは1990年代に海外で広がり、国内でも浸透。昨年4月、本県のデザイナーやライター、カメラマンなど長崎でものづくりに関わる人らを中心にグループが結成され、「チョージン」を開いた。
 今回もそれぞれ自由な発想で制作。愛猫・メチャ先生(通称メチャ)をモチーフにイラスト集のZINEを作ったのは、初参加で諫早市のデザイナー、ナカヤマトモミさん(41)=新上五島町出身=。東京で電子端末デバイスなどをデザインするUIデザイナーとして活動し、2016年に長崎県へ帰郷。現在はチラシやパンフレットなどをデザインする会社に勤めている。
 メチャを飼い始めてから「好きすぎてグッズを欲しくなった」という。プライベートの時間にイラストを描いたり、スマホケースやTシャツ、シールなどを作ったりしてきた。今回、これまでに描きためたイラストをまとめた。タイトルは「メチャだらけ」。メチャがケーキだったら。ゲームだったら-。想像を膨らませたポップなイラストがかわいい。「楽しみながら作った。見る人にもその楽しいが連鎖したらうれしい」とナカヤマさん。
 グループで作る人もいる。酒についてまとめたZINE「醸と情」を出品したメメント・モリは、長崎市在住の20~30代の会社員、カメラマン、学生の男女3人で昨年結成。チョージンへの参加は2回目だ。
 「できたー」「いいじゃんいいじゃん」。14日午後、長崎市南山手町の「つくる邸」に3人の弾んだ声が響いた。チョージン開幕まで1週間となり、完成した冊子と初対面。袋に詰めて「ようやく形になった」と顔をほころばせた。
 昨年は3人で一つの冊子を作ったが、今回は酒という共通テーマを基に、日本酒、ビール、ワインについて3人それぞれで冊子にまとめた。メンバーのカネキナナミさんは「ZINEはどんなテーマでも、どんな作りでも、誰に向けてでもいい。気軽な表現方法として楽しい」と語る。
 身の回りの大切な物への“手紙”や、いろんな職業の人の足元ばかりを描いたイラスト集、旅行記、長崎市の老舗文具店へのインタビューなど、作り手の関心の向くままに作られた色とりどりのZINEが会場に並んでいる。初日に会場を訪れた長崎市末石町の男性会社員(23)は「好きなカメラマンが出品していて、買いたいと思って来た。ローカル感があって面白い活動」と話した。

ZINEの制作に取り組むメメント・モリの3人=長崎市南山手町
愛猫のイラスト集のZINEを出品しているナカヤマさん
イラストのモチーフになったメチャ先生(ナカヤマさん提供)

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