日本株vs米国株、長期的な投資魅力があるのはどっち?

米国株が上昇しています。ニューヨークダウ平均、S&P500、ナスダック総合指数などの主要な株価指数は、そろって7月に史上最高値を更新しました。

一方で、日本株は大きく下落しているわけではありませんが、上昇に勢いはありません。たとえば日経平均株価は昨年10月2日に2万4,270円の高値をつけましたが、現在はその高値から10%以上も下落した水準にあります。

このように現在、短期的に米国株が日本株のパフォーマンスを上回っています。それでは長期的に見てみると、どうでしょうか。


過去30年の比較では米国株に軍配

まず、下のグラフを見てください。これは約30年前の1990年末を基準(100)として、米国のS&P500とTOPIX(東証株価指数)の推移を比較したものです。

グラフを見れば一目瞭然、30年間でS&P500が9倍以上に上昇しているのに対し、TOPIXは30年前の株価にさえ達していません。もちろん日本株も個別銘柄を見ていけば値上がりしているものがたくさんありますが、株価指数という全体の平均でかなり厳しい結果になっていることが理解できると思います。

その他のデータも見ていきましょう。下表は、S&P500とTOPIXの1990年から2019年までの30年の上昇回数や年間平均上昇率を比較したものです。

S&P500が30年間で21回上昇と上昇割合が7割に達したのに対し、TOPIXは上昇・下落とも15回と半々の割合でした。また、年間の平均上昇率はS&P500が9%近くに達するのに対し、TOPIXは1%にさえ達していません。

米国株は「バブル」ではないのか

このように米国株がいかに上昇してきたかを説明すると、「米国株は上がりすぎていて怖い、バブルなのでは?」と不安に思われる方も多いと思います。もちろん、現在の米国株が短期的に上昇しすぎている可能性はありますし、いったん株価が調整する可能性も大いにあるでしょう。

ただ、いわゆる「バブル」状態にあるかというと、そうではないと筆者は考えています。その理由は、米国企業の稼ぐ利益が順調に伸びていることにあります。

米国企業(正確にはS&P500採用の米国上場企業ですが、米国企業全体の利益ととらえても大きな間違いではありません)は毎年、着実に利益を増加させています。「バブル」とは経済や企業の利益の実態以上に資産価格が上昇している状態を示しますが、米国企業の利益はしっかりと増えているため「バブル」ではないのでは、と考えているというわけです。

米国株がこんなにも“強い”ワケ

米国が常にイノベーションの中心にあることは想像にかたくないと思います。ネット通販のアマゾン・ドット・コム、SNSのフェイスブック、オンライン動画のネットフリックス、iPhoneのアップル、PCやソフトウェアのマイクロソフト、検索サービス「グーグル」やYouTubeのアルファベットなど、これらはすべて米国企業です。

さらに米国企業がすごいのは、こういったハイテクIT企業だけでなく、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ビザ、マスターカード、マクドナルド、ウォルト・ディズニーといった老舗企業の業績も着実に成長していることです。

米国企業は常に厳しい競争にさらされ、積極的に企業買収も行います。企業の業績や株価には厳しい目が向けられ、業績が芳しくない企業の経営者は容赦なく追放される場合があります。米国企業の経営者には、常に業績の成長や株価上昇へのプレッシャーが強烈に働いています。

このように、米国株や米国企業のすごさに思いを馳せると、運用資産のすべてを日本株だけに振り向けるのはとてももったいないことではないか、と筆者は感じています。米国株も運用対象の一部に入れることにより、長期的なパフォーマンスの向上が期待できるのではないでしょうか。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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