社説:萩生田氏の発言 議長は官邸の下請けか

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 憲法改正の議論が進まないなら議長交代も-。そんな考え方が安倍晋三首相の周辺にまん延しているとしたら大きな問題だ。

 首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行がインターネット番組で改憲を巡って大島理森衆院議長の交代論に言及し、与野党から疑問や批判の声が上がっている。

 萩生田氏は質問に答える形で、「(野党に)気を使いながら審査はやってもらうように促すのも議長の仕事だった」「有力な方を議長に置き、改憲シフトを国会が行うのは極めて大事だ」と述べた。

 政権党幹部とはいえ、国権の最高機関トップの進退に言及して国会運営にまで注文を付ける言動はあまりに行き過ぎている。

 議長の役割の一つは、国会の多様な意見を調整することにある。野党に気配りしながら議論をまとめていくのは、当然の姿勢だ。

 そうした議長の立場を無視したかのような萩生田氏の発言は、国会を官邸の下請けのように考えているとも受け取れる。甚だしい立法府軽視と言わざるを得ない。

 萩生田氏は、これまでも改憲について「越権」ともとれる発言を繰り返し、物議を醸してきた。

 昨年10月には、安倍首相の積極的な改憲姿勢に関し「首相が黙ることで憲法審査会が動くのであれば、そういうことも考えたい」と述べ、「不穏当」と批判された。

 今年4月には憲法審査会を「ワイルドに進めたい」と語り、野党の反発を招いている。

 今回の発言が首相の意向をふまえてのものかどうかは不明だが、今後なりふり構わず改憲に突き進むという政権の意向をほのめかしているようにもみえる。野党の警戒感はいっそう強まるだろう。

 先月の参院選で、自民党、公明党、日本維新の会など改憲に積極的な勢力は国会発議に必要な3分の2を割り込んだ。急がず、冷静に、丁寧に議論せよというのが有権者の意思ではなかったか。

 きょう臨時国会が開会するが、気になる動きもある。参院選で初議席を得て、他の議員と会派を結成した「NHKから国民を守る党」の代表は、唯一の公約としたスクランブル放送が実現するなら改憲に賛成すると述べた。

 改憲への賛否を政党間の駆け引きに使うのなら、憲法の重要性をあまりに軽んじている。

 こうした発想が生まれる背景には、改憲内容や必要性などの説明を二転三転させてきた政権の態度があるのではないか。改憲自体が目的化したことの影響は大きい。