絶滅危惧種のウナギ、「消費者の選択肢不十分」専門家が指摘

「『持続可能なウナギを選ぶ』という選択肢が消費者に提示されていないことが課題だ」――。絶滅危惧種のウナギの問題に詳しい中央大学の海部健三准教授はそう話す。今期の国内のウナギ漁獲量は2003年以来過去最低となり、食文化の継承そのものが危ぶまれる。土用の丑の日を前に、不透明な流通経路を経た輸入品が販売の大半を占めており、消費者に十分な選択肢が提示されているとは言えない状況だ。主要な小売り各社の、ウナギの流通への対応を聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本 啓一)

国内のウナギ漁獲量は減少傾向にあり、今期のシラスウナギ(ウナギの稚魚)の国内漁獲量は、水産庁が統計を開始した2003年以来最低の3.7トンにとどまった。一方、輸入量は過去2番目に多く、11.5トン。その全量が、密輸が指摘される香港産であることを、25日に共同通信が伝えている。

7月に「結局,ウナギは食べていいのか問題」(岩波書店)を上梓した専門家、中央大学の海部健三准教授は「市場に流通するウナギのうち、5割程度は密漁や無報告などの違法な流通過程を経ていると考えられる」と説明し、「持続可能性の担保されたウナギはほとんど存在しないと言える」(海部准教授)と話す。一方でスーパーや飲食店では土用の丑の日に合わせ、ウナギ商品がずらりと並んでいる。

主要な小売りのウナギ製品への対応

取り組みの進むイオンは「ウナギ関連製品全体の中で、代替製品の売り上げは現在、1割程度を占める」と説明。今年の夏の土用の丑の日は「代替製品は昨年比で(売り上げ)2割増を目指し、来年以降もラインナップを拡充する」と課題の認識を前提とした販売に積極的な姿勢を話した。

前述のように流通しているウナギのうち5割程度が違法な流通過程を経ていると目されるが、違法性がないことを消費者側で判断できる製品はシラスウナギの段階からトレーサビリティの確保されたイオンの「浜名湖うなぎ」のみ。同製品に関して海部准教授は「大きな前進と言える取り組み」と評価する一方、「『持続可能なウナギを選ぶ』という選択肢が消費者に提示されていないことが課題だ」と現状を分析する。

さらに「(稚魚の採捕量に対する)規制というシステムが機能していない現状で、消費者に『ウナギを食べないべきだ』と求めることは適切とは言えないと考えている」と海部准教授は行政と政治の対応の必要性を話した。

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