第12回「新たな病気どこじゃない! "がん転移&再発"ッスーー(号泣)」

リアルDT時代はNGナッシングボーイ

同じ人に2度も3度もフラれる人生を送っている人がいる。それってどうなんだろうな。純愛と呼ぶべきか否か。

フラれる側はもう慣れたもんで、プレイとして興奮しているんだろう。それはわかる。でも、フラなくてはいけない方も大変だ。

「また?」と思いつつも、言いたくないことを言わないといけない。「友達としては好きだけど、恋人としては……ごめんなさい」

この答、ヤレるヤレない問題がデカいと思う。女性と男性のセックス感の違いによる。男なんてヤレるのであれば相手の女性が“生後3ヵ月から死後3日まではOK”だ。

男の性欲を舐めてはいけない。初体験は好きな人(女性)に捧げる、なんて美しい(?)ことを思ってる童貞なんてほっとんどいない。

大概の“したいしたい病”にかかっている、クソ童貞なんてお弁当屋さんのBBAだってじぇんじぇんOK! ウェルカムなわけだ。

いや、マブで。19歳のオイラは真剣に文房具屋のおばさんに恋をしていた。携帯電話もない時代の話。オイラの部屋には電話すらなかった。自分の部屋に電話やシャワーがある学生なんて金持ちの息子や娘。家賃1万7千円のアパートに住んでいたオイラには、それはもう夢のような話だった。

昭和の四畳半アパート生活を体験したことのある人ならわかると思うけど、引っ越し前後のカラッポになった部屋には畳と襖、障子、怨念しか残っていない。夢破れた性春の蹉跌がそこにへばりついて取れないままでいる。

オイラも紛れもなくそこに含まれていた。それは目黒区の四畳半アパート。祐天寺駅と学芸大学駅の中間、目黒区中町にあった“おんぼろアパートさつき莊”。

人生の折り返し地点を過ぎて警報が鳴り続いている2019年のオイラ。ふとしたときに、今でもオイラはまだあの部屋の家賃を払い続けているような気がしてならない。

「オイラは何て顔をしているんだ?(笑) 魂吸い取られてる。

7月19日、渋谷ラママ楽屋にて……顔、顔があああああ(号泣)。

可哀そう、オイラ。ライブ前の表情じゃない」

初独白! 文通をやっていたDT時代

19歳から26歳までをオイラは目黒区中町で過ごした。パッと思い出すのは祐天寺の風絵、カレーショップ『ナイアガラ』、定食屋『きこり』、エロ本の品揃えの良い本屋、名無しのインディーズ弁当屋、文房具屋さん。

文房具屋さんでオイラはレターセットを買い、月に数回、切手を買った。ガチの童貞だったオイラ。文房具屋のおばさんが好きだったというのもあるけれど、当時、オイラは誰にも言わず、内緒である女性と文通をしていた。

これ、マブでここで初めて話す(笑)。

オイラがどうしてその女性と文通をすることになったかは定かではない。いや、本当に。その辺の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっている。雑誌のペンパル募集みたいなコーナーで文通がスタートしたような薄っすらとした記憶もあるが、それも正確には違うような……。ミイラ取りがミイラに。

文通相手の八神真矢<仮名>はオイラよりも年齢が1歳下で看護師を目指していたメイビーな記憶がある。文通を始めた当初、彼女はまだ女子高生だった。完全なるスケベ心じゃねーか! と思われて当然。でも……

彼女が数人と一緒に写っている写真が送られてきた。正直、可愛くはない。手紙には書かなかったが、“小さなカバ”みたいだな、とオイラは思っていた。

それでも、月に1回? 彼女から来る手紙をオイラは楽しみにしていたのは正直なところ。退屈な童貞生活の潤い(笑)。手紙がどんな内容だったかは今ではパーフェクトに覚えていない。車の免許を取ったとか、飼っている犬が病気になったとか、他愛のないことばかり。それでも、オイラは手紙を待った。

返事にオイラはどんなことを書いていたんだろう。まるで思い出せない。大学であったことや、バンドのメンバー探しの話など他人が聞いても面白くない話を書いていたはず。

カバの赤ちゃんみたいな女のコから送られてくる手紙は気のせいかもしれないけれどいい匂いがした。オイラはその匂いをかぎながら1通で1ヵ月20回は射精した。素人女性からの手紙でオナニーをしていたハードコア童貞のオイラ。ヌキどころがどこだったか今となってはわからない。

大事にしていたカバの赤ちゃんのような女のコからの手紙は最初につきあった女性(後にオイラの奥さんとなる人)に見つかり、ケンカとなってすべて捨てさせられた切ないメモリーがある。男も女も童貞はややこしい。

オイラに彼女が出来て、文通は終焉を迎える。今となって思う。あの文通こそがオイラの性春そのものだったんだ、と……。

捨てられてよかった。

がんの転移&再発が発見されたーー!

って、今回は何でこんな話をしてんだよ?

違うだろうよ、オイラ。危ない、危ない。しかも、長いし。

ええと、逃げてました。避けてました。触れたくない話題から。でも、しょうがないッス。本当のことを言わなくっちゃ。

癌<ガン>の再発。

口腔底がん再発DEATHーーーーーー!

そう、オイラ、病院で担当医にハッキリと癌<ガン>の転移&再発と診断されました。イェイ! よろしく〜〜〜〜〜〜〜〜。

2019年6月27日、木曜日のこと。顔面蒼白の担当医。言葉にも力がない。「もう手術も出来ないんですよ」

「手術が出来ないって死ぬのを待つだけ、ということですか?」とオイラ。「う〜〜ん、まずは放射線をかけられるかどうか。それは放射線科の判断となります」と担当医。

がんが転移、再発したのは手術の際、首に呼吸をするための穴を開けた人工弁の跡地。これ、か〜〜なり珍しいケースらしい。何千人にひとり? そもそも、口腔底がん自体が珍しいがん。どこまでもインディーズなオイラ。マニアックだな〜〜(笑)。

計算式上だとオイラ、どれくらいの確率でヒットしちゃったんだろう? 大量の0が行進する分母。こんなヒットは要らない。

でも、いやらしいけど人生でヒット曲が欲しかったな。作れる自信バリバリあるのに。「恋する童貞」とか「チンチンモミモミ」みたいな曲を作ればいいんでしょ? 簡単。

つぼイノリオ「金太の大冒険」チックなみんなの歌ね(笑)。「帰ってきたヨッパライ」が好きで子供の頃から全裸で「オラは死んじまっただ〜〜♪」って歌ってたらしい。会うたびに弘子<実母>がそう言う。

そういう曲を作っておけばよかった……。

天変地異。またしても病人となってしまったオイラ(涙)。担当医が言うには、"完治を目指すのではなく延命”。それがオイラの命題。新しい目標となるそうだ。

忘れてはいけない前回の話。オイラは顎骨壊死でもある。そう、顎の骨が腐って割れているという状態。顎骨壊死で口腔底がんというWの悲劇。キャーーーーーーーッ。私、おばあさまを殺してしまったーーーーー!

「わっかるかなあ? 首の喉元あたりに3コある丸い悪性腫瘍。

拡大するとハッキリわかる。はあ、死にたい気分。

死ぬけど(笑)。ビエーーーーーン」

まさに、生きのばしなオイラ

ぶっちゃけ“癌<ガン>宣告”はオイラの場合、最初よりも2度目の方がきつかった。そう、今回の方がダントツでショック。

「何で?」、「どうして?」、「今までの苦労は何のためだったの?」と普通の「?」が消えない日々。ダサい。うん、それはわかってる。でも、思っちゃう。医者の言う通りにしてこの結果。誰を信じていいのか?

ま、医者を担当医Mを信じるしかない。完全治癒ではなく命を延ばすための苦行。

まさに生きのばし(笑)。笑えない。

現在、放射線治療の第二弾に突入。今日もあるんだよな。雨降ってるし行きたくない。しんどい。目まいがする。お面は痛いし、頑張れない。不平不満しか出てこないや。

吉本興業も大変ね。

オイラも吉本も自業自得。

♪Theピーズ

「生きのばし」

死にたい朝まだ目覚ましかけて

明日まで生きている

痛み 小銭 眼あけたまま

ヤケ起こす熱も出ない

ロックンロール 絵日記 ジンロ 粘る部屋

死にたくなる朝といる 乾け センタクもん

でまた明日 どこまでもぬるい景色 今に見ろで過ぎてゆく

あの日あの空拝めるのは

あの日のボクらだけ

精々生きのびてくれ

Theピーズのハルさんまで癌<ガン>になっちゃった。

食道がん。オイラが癌<ガン>再発のことをメールしたら、ハルさん、それに自分の食道がんをトッピングして返してきた。トホホ。

あまりのショックで久しぶりにパニック障害を起こしちゃった(笑)。下北沢、スーパーの帰り道。裏通り。アスファルトに座り込んで痙攣が続き立ち上がれなかった。

子供がオイラを指さした。お母さんがダメよと子供の手をひいて急いで立ち去った。

人のせいでパニックになるなんて……まだまだ甘いな、オイラ。こんな心と身体じゃハルさんを担ぐことさえ出来ないじゃんかさ。心配してる場合じゃない。トホホ。

「しっかりしろ、イノマー!」

10年くらい前、吉祥寺のライブハウスの階段でハルさんに言われた言葉がよみがえる。

癌がん介護(ガンガンカイゴ)。がん患者ががん患者の介護をする時代。癌<ガン>は2人に1人というカジュアルな病気だからね。

レッツ癌<ガン>!

好きに生きて暴れるぞーーーーー。

工藤里香さんとヤリたかった……

♪オナニーマシーン

「ソーシキ」

オイラはどうせ死んじまうんだろ

好きなあのコと手すらつなげずに

生きるのも死ぬのも 関係なかったのね

他人のまんまでバイバイだ

オイラのソーシキに あのコは彼氏連れて

「寂しいね」なんて言ったりするのかな?

泣いた後にはセックスするくせに

これじゃあどうにも死ねないよ

死んでも死にきれねー

季節外れの雪を降らそう

あの世であのコでオナニーだ

この曲は36歳のオイラが19歳の頃を思い出して作った曲である。何度も何度もフラれ続けた女のコ、工藤里香ちゃんへのメッセージ・ソング。ま、執念の失恋ソングなんだけどね。

あの世でオナニーして、飛び散ったザーメンが真っ白な雪となって彼女の顔にかかればいいな、っていう卑屈で情けないラブソング。配信でもゲットすること可能みたいッス。

あ、宣伝しちゃっタマキン。てへ。

工藤里香ちゃん、今頃、どうしてるのかな? ひっどいめにあった。童貞のオイラが振り回されて、最後は木端微塵にブッ壊された。

BOMB

1987年のクリスマスイブ。オイラはビニール袋を担いで足場の悪い屋根の上で息を殺し、時計とにらめっこしていた。

《そのとき工藤里香ちゃんはオイラの知らない男とホテルにいたことを後で知ることとなる》

何度も何度もフラれ続けたオイラ。いっそのこと「嫌いだからつきまとわないで!」って言ってもらった方がラクだった。でも、女のコはずるいから言わないんだよな〜〜。なんなら「ちょっと好き」くらいのことを言う。

この世にたったひとつだけある絶対が死

「あ、オイラ、死ぬんだな」って、思った。「遂にこの日が来たのねん」って。

もういなくなることはないオイラの中の癌<ガン>。時限自爆装置を仕掛けられた。オイラにはいつ爆発するかわからない。「生きのばし」じゃないけれど、朝に起きて、生きてる奇跡に感謝。まだ生きてた(涙)。

入れ替わり。

そう、これからのオイラのテーマは入れ替わりなんだろう。どう上手く入れ替わることが出来るか。あ、すみません。オイラ、別に頭がおかしくなったわけじゃないんで。

去年、口腔底がんが見つかって、大手術をしてハードな治療。上手くいくかも? なんて思ってた今年。再びがんが別の場所に見つかった。がんの転移&再発ってやつ。やれやれ。

これからオイラの身体を使って、癌<ガン>の体育祭、パレードが始まるのだろう。もう誰にも止められない。ま、しょうがない。

オリコンの会長である小池恒さんは実はオイラと同期入社。

あまりというかほっとんどメディアには出ないのであまり書けない、話せないのではあるがちょこっとだけ。

昨年9月に口腔底癌が見つかったときも恒さんには発表する前にお知らせしたし、今回の再発もインターネットのニュースに流れる前に急いで手紙を書いた。

電話では伝わらないし、メールというのも失礼かな? と。手紙はオリコンの当時、自分の部下を通じて渡してもらった。

すると、会長からのお返事が。立派なお手紙。今、手元にある。頂いてから、オイラはそれを机に立てかけ、何度も何度も読み返している。そこにはこう書かれている。

「猪股くんは他の人より治す力が強いことも知っているので“絶対に大丈夫”という言葉を何度でも繰り返します」

《猪股くん=イノマー》

嬉しい。

何の確証もない言葉かもしれない。裏付けのない「大丈夫」という言葉。あまりがん患者に簡単に使ってはいけないのかもしれない。でも、オイラはOK! バンバン言って。

もうここまで来たら弱っちいこと言ってらんない、聞いてらんない。だって、死んじゃうんだから(笑)。オイラには時間がない。

担当医Mは手術は出来ないと言い切った。それはもう今の医学ではどうにもならないということだ。死ぬまでの時間を薬でのばす作戦。『イノマー“生きのばし大作戦”PART1』。

ちなみにオイラの再発は首まわりのリンパに近いところに巣作った。多発性悪性腫瘍ともいうみたいね。ここから全身にまわる。担当医Mは「もうまわってるかもしれないです」と言った。あー、これ書いてて怖くなってきたよ。頼む、助けて。しんどいッスーー。

何がしんどいって呼吸が出来ない。あまりにも苦しいのでセンセーに言うと、鼻から小型カメラを入れて見せてくれた。気道が浮腫み、細く狭くなっている。食べ物の道もかなり細い。空気の道はもう閉じてるのに近い。

喉が痛いのは現在の放射線治療によるもの。いろいろ理由があって前回よりもはるかに強いビームをあてているとのこと。

放射戦9回裏。そろそろヤバい兆候が出はじめている。後半戦スタート! ということでしょうがないのだろう。

何も考えない。とにかくお医者さんの言うことを信じて。でも、信じてきたらここまで来ちゃったんだよなあ(涙)。トホホ。

酒飲んで、暴れたい。

まー、いい。どうにかなる。どうにもならないかもしれないけど、そんときはそんとき。ふふふ。この連載、あと何回書けるかな?

TO BE CONDIROME?

「6月8日、上野恩賜公園に1人ピーズのワンマンを観に行った。

サプライズでアンコールにアビさん登場!

大興奮のまま楽屋になだれ込んで

一緒にパチリのツーショットはまさかの"身障者便所”前(笑)」

© 有限会社ルーフトップ