ばちかぶりのアルバムにみる 100万円の価値と僕らの金銭感覚 1985年 1月 ばちかぶりのアルバム「ばちかぶり」がリリースされた月

もう何がなんだかわからない。僕らの金銭感覚は麻痺している。

ちょっと前に2000万といえば、将来年金だけでは暮らせないから貯蓄と投資をどうぞ… なんて金融庁の報告があった。実感わきますか?

八村塁さんが米国 NBA のドラフトで指名を受けて年棒が4億円超と聞いても、なんだかよくわからない。

一、十、百、千… もう計算するのもめんどうだ。どちらかというと、僕の日常感覚は80年代のサブカル系の人たちにずっとちかい。

1985年、田口トモロヲ率いる ばちかぶり はファーストアルバム『ばちかぶり』をリリースした。いわゆる「日本語パンク」時代の名盤だ(と思う)。二曲目の「産業」は「う*こ食べたら40万円」の歌詞でしばしば話題にのぼる。「く*くらえっ!」のおたけびではじまるこの曲では、バックコーラスもひたすら「う*こっ、う*こっ…」とレ*コしているだけに、どうにもオゲレツだ。

どうやら80年代、円安や日米貿易摩擦などを乗り越えた景気なのか、とにかく余っているからつかえ!という無駄遣いに文句をたれているようなのだが、「銭くれ銭 銭くれ銭 銭くれ銭 銭くれ銭」と貧乏丸出しなこの曲の途中で、町田町蔵の MC が入る。現小説家の町田康さんだ。「月100万や100万。どないする? 月100万もろうたら…」と、これもやっぱりお金ネタ。

そういえば僕の子供のころには、宝くじで100万円当たったら? とか、今100万円あったら? とか、とにかく「つかいきれないほどたくさん」といえば、いつも100万円だった。そんなにあったら、どないしょう…。

1990年、山本政志監督による『てなもんやコネクション』は、あの手この手で土地の立ち退きを迫られた貧乏一家が、巨大企業の手先のクレジットカードを偽造し破産させて家を守るというお話だったけど、よく覚えているのは、とにかくつかいこめ!という場面で、家族が最初に買ってくるのが醤油瓶や日用品の数々。貧乏人が大金を手にしても、急には贅沢なんてできないわけで。

ところで小耳に挟んだところによると、昨年度の税収は過去最高の60兆円だそうです。今年度の国の予算が101兆円だから41兆円の不足。不足が溜まって総額約1045兆円の国債を発行。日本の人口が1億2千万人くらいとして、国民一人当たりの借金が約870万円。う~ん、やはりついてゆけない。

というわけで、80年代庶民は、「つかいきれないほどたくさん」である100万円に換算してみた。60兆円を100万円のお小遣いとすると、食費や光熱費やなんやかやで1年168万円くらいつかうから、68万円足らない。マイナスがつもりにつもって、総額1833万円となっちゃったんで、町内(1万2千人)の頭数で割ると、借金は一人当たり1527円。いや~、ほっとしました。それにしても毎年マイナスだったら “けいざいかんねん”、疑われますな。

カタリベ: ジャン・タリメー

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