第13回「速報!障害者手帳交付当日の動物園で、いろいろ大問題!」

ドーン!

障害者手帳初日の夜はーー じつは宮台先生と鈴木涼美さんと阿佐ヶ谷ロフトだった

速報―。

新しいIDが来た。脳卒中による高次脳機能障害で、「障害者3級」の手帳!YYYYYYYYeeeeeeeeeeSSSSSSSS!!!!!! つ、ついにこれで自分も、晴れて認定公式障害者だ。来月8月で54歳、ここを目指して生きてきたわけではないが、ふり返れば長い道のりだった。というか…ううう、正直言って、まさか自分の未来に、こんなことが待っていようとは! 受け取ったばかりの緑色の手帳をしみじみと眺めながら、なんとも言えない気持ちになっている。ドラッグに明け暮れて『SPEED』を書いてた頃の20歳代の自分に言ってやりたいね。

「おい、おまえさあ。将来、脳卒中で障害者手帳持つようになるんだぜ。せいぜい30年後をお楽しみにな。」

と、いうわけで脳卒中発症から6か月。症状が確定して→診断書が出て→申請して→審査手続きでさらに2か月を要してーー今の自分はもう、そのへんの自称障害者のメンヘラとはワケが違う。正真正銘本物の、精神障害者手帳の人に上り詰めた。

第11回世界テレホンセックス選手権。

わたくしはコミッショナーの重責を担ってます!

一つ引っかかってるのは、高次脳機能障害というのは身体障害者じゃなくて精神障害者に分類されるんですよね。だから手帳の分類も「精神障害者手帳」精神か…微妙。いやいやいやいや、わたくしに微塵の精神障害者差別もございません。と思いつつ手帳の証明写真を眺めながら、「身体障害の方が本物ぽくて良かったな~」などと、微妙な気持ちを味わっている。どっちが本物とか偽物とかないんだけど。

断っておくがよおおお、俺はねえ、メンヘラじゃないんだよ。高次脳なんだよ。しかも、公式なんだよ。脳が死んだ様子がMRIに映っているんだよ。く、バカにしやがって。

…て、誰もパカにしてないんだけど、その嘆きがどこから出てくるのか。それ自体が高次脳機能障害の症状なのか。なんなんだろうこの気持ちは。この名状しがたい曖昧な気分に、私は「悲しみ」という名前をつけたい。悲しみよこんにちは! なんというか、なんにしろ人生てのはままならないです。

楽しそうだなー

で、いま都営大江戸線に乗っているーーせっかくだから、優先席の前に立ってみた。で、チラッチラと手帳をチラつかせたら席を譲ってもらえるかな〜と、ホームでドキドキしてたのだが、なんと!空いていてあっさり座れてしまって、ふ、自分が気恥ずかしい。でも見た目は障害書に見えないだろうなあ。でもわたくしは、軽度とはいえ本物なんですよおおおおお!ちょっと嬉しい。何食わぬ顔で座ってる。そういう気分の、新しいID到着記念乗車なのです。

ちなみに今、まさに今、乗り込む直前に、新宿西口駅の窓口で、障害者パスの手続きを済ませてきたばっかりで。

プラスワンの「下–ワン」選手権。

コワモテ地下芸人の原田豪紀さんと白玉あもちゃん

手続きは、もう本当にあっという間。新窓口で駅員さんへ「障害者手帳が来たので、パスの手続きをしたいのです」と話しかけると、その人は女性で、「わかりました(ハート)」と、べつに目にハートは浮かんでないけれど、その時の自分の目にその人はすごく優しそうに見えた。で、説明をしてくれて、申請書をくれて、ごく簡単な書き込みをして提出すると、すぐ目の前で、期限(手帳の有効期限と同じ2年)のあいだ都営交通にフリーで乗れるPASMOを作ってくれた。要した時間は10分とちょい。思ったよりずっとスムースだった。

さっそく改札を通って見ると、定期券と同じ扱いで、ピッ!と通れた。乗車区間無限、次の申請時期まで有効。なんか銀河鉄道999みたいだ。

漢さんとイベントで

でーー999に乗ってどこへ向かっているかというと…これからauに行って、障害者割引きの手続きをするんですよ。そういう制度知ってました? au、ドコモ、ソフトバンクの各社は、名称はそれぞれだけど内容はまったく同じで「障害者手帳割引」をやっていて、手帳をもって手続きに行くと、月々1600円安くなるとーーネットに書いてある。

安くなって得じゃん、と言う人もいるけれど、浮いた1600円をどう使うかというと―― たとえば自分は注意力が欠損して手帳保持者になったわけだけど、紛失保険に入ったり、iクラウドを増量して状況に備えたりとか、そういうことに使うんですよね。単に安くなってバンザ〜イ!飲めるぞ!とか、そういう話でもないんだよね、実際なってみると。もっとリアルだよ。

セガレと映画『ダイナー』を観に行って、そっちも割引

で、いまね、上野動物園にいるんですよ。もうすぐ閉園時間なんだけど、ギリギリ入った。普通は、ぎりぎりの時間の動物園なんて入らないじゃん。でも自分、今日からは障害者パスで無料でここへ入れるようになったから、遠慮なく使ってみた。こちらは手続きなし。並ばずに手帳を提示すれば、初日から入れる。

5〜6年前まで、セガレが小さかった頃の自分は上野動物園の年間パスポートを買っていて(年間2400円だから安い!)、一人でもしょっちゅう動物園に入って、ベンチに座ってビールを飲んだり、たてがみ狼を眺めながら原稿を書いたりしていたけれど、セガレがそれなりに大きくなってきて「動物園はもう飽きた」とか言い出したから、ここ数年は年間パスを持っていなかったわけ。

やっぱりとてもいいよ、上野動物園は。平日はそんなに混んでないし、ビールでもワインでも持ち込みOKだし、今の時期は不忍池のハスの葉がきれいだよ。ナッツなんか齧っちゃってさ。

ロマン優光と密談中

でーー障害者手帳初日の今日、いろんなことを考えている。

オリンピックの聖火ランナーへ応募してみようかな。

脳卒中のリハビリを期に走り始めて、最初は歩くのもままならなかったけど、理学療法士や作業療法士や介護士やお医者さん…みんなの力で、聖火リレーへ応募します!同じようにリハビリを頑張っている、病院の仲間たちへ勇気を届けたいーーとかなんとか。パラリン枠もあるし、もしかして通るんじゃなかろうか。早速ネットで制度を調べている。

なるほど、なるほど、なるほど〜…応募の概要はつかんだ。なんとかなるかもわからない。病院の推薦状をもらうようにしよう。

阿佐ヶ谷ロフトで

と、このように、手帳初日の今日、上野動物園のベンチに座り、「それが新鮮に感じられる間は、障害者という境遇を存分に味わって表現していこう」などと考えている。たぶん、発見があるはずなんだよね。24時間テレビとはちがう、いや同じでもいいんだけど、ジャンキーならではの感覚で伝えられることが。…みたいな。

PS:早速一つ言わせてもらうと、手帳の大きさが免許証よりカード類より一回り大きくて、紙幣の縦横比ともちがってて、微妙〜にパスケースにも財布にも入らない。不便だ。聞くと、手帳持ちの多くが不便をしてる。だいたい、じっさい的に"手帳"にする必然があるのか? という。カード+必要に応じて手帳機能で良いのではないか。さっそく調べて、必要があれば働きかけてみるつもりだ。わっしょい!!

渋谷ロフト9で、佐川一斉さんの映画『カニバ』の公開イベントに出た。

自分の腕をナイフで切りつけ、ろうそくを垂らす佐川一成さんの弟君の純さん。

追悼

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